正直に生きるということ

本屋さん_『安吾のことば「正直に生き抜く」ためのヒント』
『安吾のことば「正直に生き抜く」ためのヒント』 藤沢 周 編
集英社新書 720円+税 装釘 原 研哉

 みなさんは、本屋さんに出かけて、どんな順番で書棚を回りますか。私は、ここ数年、新書がおもしろくて、真っ先にその棚に向かいます。
 
 新書のなにがおもしろいのか。

 時事問題、話題になった社会制度、人物伝などなど、タイムリーなテーマを、雑誌の特集のようにストーリー仕立てで読めるところでしょうか。新書は1冊200頁ほどですから、雑誌として考えたら、なんともぜい沢な特集になります。

 今回は、『安吾のことば』を紹介します。
 安吾とは、もちろん無頼派・新戯作派作家の坂口安吾。みなさんもよくご存じの「生きよ墜ちよ」の名フレーズで有名な『堕落論』の著者です。著書をひもとくと、過激で痛烈な、でも本質をついた愛のある言葉が数多く見られます。それらの言葉を、同郷の芥川賞作家・藤沢周さんが、選りすぐり、編んだのが本書。

 たとえば、戦争、政治、日本人の章には、こんな言葉が並びます。
「戦争はいたしません、というのは全く世界一の憲法さ」「時の民意の多数を制するものが真理ではない」「禁止弾圧の精神は、すでに戦争の精神である」「日本精神を意識することは危険である」。

 今の世相を表すような言葉の数々に、人間の本質は何年経っても変わらないのだ、という安吾の声が聞こえてきます。(矢野太章)


暮しの手帖社 今日の編集部