花森安治選集 全3巻 第1巻『美しく着ることは、美しく暮すこと』を発売しました!

2020年06月01日

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とうとう、長く制作を進めてきた一冊が完成しました。
現在でも天才、奇才、昭和の名編集長と評され、
多くの人に愛されて続けている花森安治の選集を、この1巻からお届けします!

『暮しの手帖』初代編集長の花森は、敗戦後の復興から、
経済大国へと急成長を遂げた昭和の変遷を鋭く見つめ、
家庭のささやかな幸せに向けたまなざしから、国や大企業に臆することなく抗う叫びにいたるまで、ジャナーリストとして伝えた著作を膨大に遺しました。
この選集は、花森のジャーナリズムと思想をつまびらかにする作品群です。

ところで、4年前に放送されていた連続テレビ小説『とと姉ちゃん』をご覧になったことはありますか? 暮しの手帖社の創業期からのエピソードに想を得て作られたドラマです。
ヒロイン・小橋常子(演・高畑充希さん)の雑誌作りを助ける、
天才編集者・花山伊佐次(演・唐沢寿明さん)は、花森安治がモチーフでした。
ふたりは戦後すぐに出会い、少しでもみんなの暮らしを明るくしたいと、
試行錯誤しながらファッション誌を出版します。
この第1巻はちょうどその頃、花森が新進気鋭の服飾評論家として世に登場した、
『暮しの手帖』創刊前後の作品に焦点を当てています。

1946年に出版社「衣裳研究所」を設立し、
まだ物が極端にない中で提案したことは、まず「着るもの」についてでした。
「食」や「住」の材料は庶民には思うように手に入らないけれど、
「衣」だけは、昔からの着物をタンスの中に持っている人も多い、と考えたためでした。

洋裁の知識やミシンがなくても、和服地で簡単に作れる「直線裁ちの服」を考案し、
知恵と工夫次第で、あなたはもっと美しくなれると読者に呼びかけました。
また、「着るもの」を通して「ほんとうのおしゃれ」とは何かを説き、
それまでもんぺ姿を強いられていた女性たちのおしゃれ心に、灯をともしたのです。

洋装の入門書、手引きとして愛された貴重な原稿にはじまり、
次第に洋装が庶民に広がってくる頃になると、
「必要なのは感覚であって、お金ではない。美しく着ることと、お金とは、何のかかわりもないのである。しいて関係をみつけるとすれば、美しく着るということは、なるたけお金を見せびらかさないこと、そういう意味になるだろう。……」
「いまの日本で着ものの世界を見ていると、ことに女の服では、ファッションとかアラ・モードとかニュールックとか、そうした流行だけが問題になっている。まるで「流行」だけしかないように見えるのである。
 流行がいけないというのではない、流行は、いわば着ものという木に咲いた花である。根もあれば幹もあり、枝も葉もあって、はじめて、立派に花が咲くのである。……」
と、ユーモアたっぷりのエッセイでおしゃれの本質を論じました。

昭和から平成、令和と時代を経ても決して色褪せない、今だからこそ見つめ直したい、
花森の「美学」がたっぷりと詰まった一冊となっています。
函入り、上製とした美しい本の仕様は、ぜひ書店でお手に取ってご覧ください。
もちろん本の装画は、花森安治によるものです。(担当:村上)

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暮しの手帖社 今日の編集部