みんなを助けてくれる「良い魔女」のようです

2017年11月30日

動画は取材時の様子を5分弱にまとめたものです

みんなを助けてくれる「良い魔女」のようです
(91号「松岡享子さんと雪のブローチ」)

この企画は、児童文学者の松岡さんの「雪のブローチを作っているのを、ぜひ紹介してほしい」というお話から始まりました。東日本大震災後に陸前高田を訪問した松岡さんは、市内の小友(おとも)小学校に毎学期訪問して本を贈っています。ブローチの売り上げが、その活動の費用に充てられているのです。

撮影に伺ったご自宅は、かつては、子どもたちがやって来て、本を借りたり、お話を聴いたりする「松の実文庫」でした。黄色の外観は親しみやすく、ピアノと暖炉のある部屋と本棚にいっぱい書籍が詰まっている部屋があり、どちらも窓からは光が入って、とても居心地がいいのです。トップのブローチや人形、裁縫道具など、それに松岡さんご自身を撮影しました。

手芸好きの松岡さんは、「こんなに楽しいこと、みんなも作ればいいのに」とおっしゃいます。材料は古着のセーターやフェルト、刺しゅう糸、牛乳パック、ブローチピンなど手に入りやすいものばかり。ブローチの直径は4~5センチほど。撮影の合間にも、松岡さんはどんどん手を動かして作っていきます。習いながら、雪の結晶を刺している私たちは、その手の速さにまったくついていけません。見る間に、雪の結晶が出来上がり、魔法のようです。

5頁で松岡さんが手にしているネコの人形は、出てきた時はひげが少しとれていて、しょんぼりしているふうでした。ところが、松岡さんが箒から1本抜いて、さっとひげをつけてあげると、ネコの表情が生き生きとしてきました。即興でネコと女の子になって話す松岡さんの声は、会話とは違う張りと表情があります。すっかり引き込まれてしまいました。

子どもの頃から、本を読むのも、友人にお話をするのも、手を動かして手芸をするのも大好な松岡さん。古着のセーターと余り布から作った人形で、子どもたちにしていたお話が本になった『なぞなぞのすきな女の子』など、大好きなことすべてが現在につながっていることを実感しました。まるで、みんなを楽しくするものを出してくれる、童話の「良い魔女」のようです。

ただし、お金は魔法のようには出てきません。松岡さんが創設者のひとりとなっている、東京子ども図書館は公的助成金がなく、出版や人材育成などの事業収入と、寄付やバザーの売り上げなどで活動しています。「良い魔女」の活躍を私たちも助けることができます。

「松岡享子さんと雪のブローチ」をご覧いただき、魔法の一端に触れてください。(担当:高野)

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暮しの手帖社 今日の編集部