花は生きものだから

2018年10月16日

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花は生きものだから
(96号「切り花のたのしみ」)

「ただいま」と玄関のドアを開け、そこに花があると、ほっとするなあ。そう思うようになったのは、30代も半ばを過ぎた頃だったでしょうか。
お恥ずかしい話ですが、私は「緑の親指を持っている人」とは真逆の、植物を枯らすのが得意な人。だからつい鉢植えは敬遠し、いつも切り花を選ぶのですが、「この花たちを少しでも長持ちさせるには、どうしたらいいのかしら?」と悩ましく思うようになりました。
そこで、今回の特集です。いきなりですが、みなさんは、花を生けた花瓶を毎日洗っていますか? 「当然でしょう」と思った方、では、中性洗剤でしっかり洗っていらっしゃるでしょうか?
……いやはや、私はできていませんでした。水でザザッと洗っていただけ。これでは、水中のバクテリアを繁殖させ、花を弱らせる原因となるそうです。

この特集の書き手は、小誌の連載「すてきなあなたに」でおなじみの、渡辺尚子さん。渡辺さんが、親しい花店の店主、並木容子さんから教わった「花とのつきあい方」は、無味乾燥なノウハウではありません。
きちんと水あげをし、花瓶を清潔に保ってやると、実にいきいきと応えてくれる、花のけなげさ。咲ききった花が最後に見せる、散り際の個性……。
そこには、花を「モノ」としてではなく、対話する「生きもの」として見るまなざし、親愛の情があります。読んでいると、気持ちがふっとなごみ、花をやさしく扱いたくなるような。そう、そんな心持ちこそが、花と長くつきあうための、何よりの秘けつなのかもしれません。(担当:北川)

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暮しの手帖社 今日の編集部