いまなお鮮烈なおもしろさ

2019年05月31日

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いまなお鮮烈なおもしろさ
(100号「発掘、昭和のおもしろ小説」)

 数ある昭和の小説に今あらためて目を向け、魅力の再発見を、という企画が挙がったのは昨秋のこと。そして平成が幕を下ろし、くしくも4世紀の終わりを迎える小誌今号にて、本企画掲載の運びとなりました。
 本選びをお願いしたのは、文芸評論家の北上次郎さん、ミステリー評論家の新保博久さん、文筆家の平松洋子さん。職業柄それはそうなのですが、みなさんこよなく本を愛する本読みたちです。そんなお三方に10冊ずつ、戦後昭和の作品のなかから、とびきりの小説を選んでいただきました。
 ところで職業柄本当に恥ずべきことですが……、実を言うと私にとっては、作家名は知っている、けれど中身は……というものが多かった。それなのに、まずはこれでもと獅子文六の『大番』を手に取ってみたら(これも「検証」なのです)、まぁ止まりません!
 主人公・丑之助(うしのすけ)は愛媛の貧農の出身ながら、偶然、日本橋は兜町の「株屋」で働くことになり、愛嬌と天性の勘の良さを武器に一人前の株屋を目指します。街を駆け、時には大損を出しながら、女性たちとの付き合いにも熱心な〝ギューちゃん〟。その波乱万丈の生き様に魅せられ、気がつけば仕事そっちのけ、ただただ読みふけった1冊です。
 選ばれた〝ベスト30〟は、いずれも読まなきゃ損! な粒ぞろい。画家の牧野伊三夫さんによる昭和の情感たっぷりの絵とともに、ぜひ誌面にてご覧になってみてください。(担当:佐々木)

※これまでの記事紹介は下記のリンクよりお読みいただけます。
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暮しの手帖社 今日の編集部