いい尽くせない思い

2020年10月02日

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いい尽くせない思い
(8号「詩と俳句と人生と」)

7月のある日、小児科医の細谷亮太先生と詩人の工藤直子さんが編集部にお越しくださいました。
細谷先生は、昨年終了した連載エッセイ「いつもいいことさがし」の筆者として、おなじみかもしれませんが、今回はもう一つの顔、俳人・細谷喨々(りょうりょう)としての登場です。
お二人は、細谷先生が宗匠を務める句会のお仲間。「お互いの好きな俳句や詩を挙げてください」というこちらの依頼に、ご著書やお二人が参加する会の句集(なんと限定9部!)もお持ちくださいました。

対談が始まると、どんどんお話は弾みます。好きと感じる句や詩には、自分に通じるものがあるということ。コピーライターとして仕事で言葉を扱っていた工藤さんが、すっぱりやめて、書きたいときに書くようになったことや、腑に落ちないことを忘れずにいること。細谷先生は、診ている子どもたちが亡くなった時のつらい経験を、俳句に託して乗り越えてきたことなど。まさに、お二人の生きてきた道筋に言葉が寄りそってきたのを感じました。

どんどん広がるお二人のお話を分かりやすくまとめてくださったライターの成合明子さん、俳句の季節感や心の中の思いを絵にしてくださったshunshunさん、素敵な笑顔を撮影してくださった中村彰宏さん。対談のお二人とスタッフの力が合わさった記事となりました。引用させていただいた作品とあわせて味わっていただけたらと思います。

細谷先生の新しい単行本『いつもいいことさがし3』も発売中です。年齢を重ねて、役割が変わっても、生きていることが素晴らしいと綴られています。こちらもぜひご覧いただけたらうれしいです。(担当:高野)

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4点の写真:中村彰宏 撮影

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お二人の来し方を伺いながら、歴史を感じる写真も見せていただいた。細谷先生の右の写真は、母方の祖母の家の2階から通っていた仙台での医学生時代。左の写真は初めて『NHK俳句』の収録に出演した50代のころ。

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引っ越しも旅も多かった工藤直子さん。左の写真は、終戦後の引き揚げまでを過ごしていた台湾での小学校低学年のお正月。右の写真は、「のはらうた」を書いて、各地を講演して回っていた50代のころ。指先にトンボが止まる。

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右は、医学生のころの句も入っている、細谷先生の初めての句集『桜桃』。左は工藤さんが会社を辞めてから自費出版していた詩集をまとめた1冊。用紙も活字も自ら選りすぐって作った。


暮しの手帖社 今日の編集部