病気になったら、仕事をやめる?

2021年01月28日

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病気になったら、仕事をやめる?
(10号「病とともに生きる」)

もしも今、自分に大きな病気が見つかったらどうするだろうと考えることがあります。

きっと第一に、治療について心配し、そしてそれとほとんど同時に、仕事についても考えるとも思います。
「ああ、なんとかして、治療しながら働き続けられないか」と。
生きるためにはお金がいりますし、それに私は仕事が好きで、働いている自分も好きですから。

この企画は、自分が大きな病気にかかった時、いかに治療と仕事を両立するか、また、同僚などが病気にかかった時に、どのように関わり、サポートできるかについて考えるものです。
がんを治療しながら転職活動をし、現在フルタイムで働いている方。脳梗塞の後遺症を抱えながら自営業を続けている方。
お二方にお話を伺うとともに、治療と仕事の両立支援の専門家に、当事者が使える制度や、病気の従業員に対する企業のあり方などについて教えていただきました。
お話をお伺いした専門家の先生によれば、ひと昔前までは「病気になったら仕事をやめ、治るまで治療に専念する」というのが一般的な考え方だったのだそうです。

「治るまで治療に専念」。

この言葉を思う時、私の頭の中に、「病気(治るまで)」と「健康(治ったら)」の間に、線がビシッと引かれているような、そんなイメージが浮かびます。太くて立派な線が、両者をきっぱり分けているのです。
けれど、少し考えれば分かるように、現実にはそんな線は存在しません。
「今日元気だったから明日も健康」という保証はどこにもありませんし、「今日まで病気だったけど、治療したから明日から健康」なんてそんなふうに簡単にもいきません。「病気」と「健康」の境界はもっと不確かで、曖昧なものではないかと思います。

今回、記事の制作にあたり、病気を抱えながら働いている方のお話をたくさん伺いました。
けれど、多くの方が「病気を公表するのはちょっと」と躊躇われ、掲載は叶いませんでした。「病気があると周囲に分かると、仕事の取引に差し支えるので」とおっしゃった方もいました。
そこに、治療しながら働くことの難しさを垣間見たように思いますし、「私は、その難しさを我がこととして真に想像できていなかったのではないか」と反省もしました。

病気を抱えながら働く意味。そのために必要なこと、できること。
私たちみんなの問題として、お読みいただけたらと願っています。(担当:島崎)

※今号の目次は下記のリンクよりご覧いただけます。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/honshi/c5_010.html


暮しの手帖社 今日の編集部