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大人気企画の第二弾です

2024年01月29日

大人気企画の第二弾です
(28号「新・塩豚のおかず」)

困ったときの救世主となる「塩豚」。今も冷蔵庫に仕込んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

4世紀93号(2018年)にて、「塩豚のおそうざい」としてさまざまなレシピを紹介しました。わたしもそんな塩豚に助けられている一人ですが、編集部内から「もっといろんな塩豚レシピを知りたい」という声があがり、第二弾が立ち上がりました。

今回ご紹介するのは、料理研究家の荻野恭子さんによる、〝荻野流〟塩豚レシピ。塩だけではなく砂糖も合わせてすり込むことで、塩の浸透力を高め、しっとりと発色よく仕上がります。また、荻野さんご自身がだんだんとかたまり肉を買わなくなってきていることから、今回は手に入りやすい「厚切り肉」と庶民の味方「切り落とし肉」を塩豚に。中華、洋食、エスニック料理に展開していきます。

最初にどーんと登場するのは、塩豚のシュウマイです。うま味たっぷりの塩豚ですから、タネに調味料は不要。切り落とし肉をたたいて、玉ねぎのみじん切りと合わせて包むだけ。たたくなんて手間じゃない? などと言わず、一度お試しください。歯ごたえのある豚肉の食感がくせになり、もうひき肉のシュウマイにはもどれなくなるかも……。

同じタネと残りのシュウマイの皮で作る、揚げワンタンもご紹介します。同じ材料と思えない仕上がりで、こちらはおつまみにもおやつにもぴったりのひと品です。

そのほかにも、塩豚と大根の炒めもの、塩麻婆豆腐、ポトフにリエット、カレーまで、塩豚のうま味を最大限に活用した8品をご紹介します。(担当:小林)

手の上の、小さな白鳥

2024年01月26日

手の上の、小さな白鳥
(28号「夢のスワンシュー」)

白鳥の姿をした、スワンのシュークリームをご存じでしょうか。思わず笑みがこぼれる、なんとも愛らしいお菓子です。繊細で、パティシエのなせる技だと思っていましたが、なんと、家庭でも手作りすることができるのです。
今回、菓子研究家のいがらしろみさんに、作り方を教えていただきました。

「コンビニでもシュークリームが買える時代だけれど、手作りのおいしさってありますよね」と、いがらしさん。撮影では、丸い尾がアクセントのスワンたちが次々に誕生し、その可愛いさとおいしさに歓声が上がりました。輪を描くように並べると、なんだか北国の湖が目に浮かんでくるようです。
意外にもむずかしいことはなく、手軽に作れますし、小ぶりなので2つくらいは食べてしまいます。
家庭で作るお菓子には、市販品にはない大らかさ、温もりがあるように感じます。きっとお子さんにも喜ばれることでしょう。
ぜひ、たくさんの方に、楽しんで作っていただけたらうれしいです。(担当:佐藤)

普通の暮らしのありがたさ

2024年01月25日

普通の暮らしのありがたさ
――編集長より、最新号発売のご挨拶

こんにちは、北川です。
早いもので、すでに1月も終盤です。みなさまも、お正月の温もりを胸に、日々の家事や仕事にいそしんでいらっしゃるのかな、と想像します。
私は大晦日の午前より、石川県珠洲市に出かけていました。22号の特集記事「湯宿さか本 坂本菜の花さん 普通をしっかりやっていく」を、ご記憶の方もいらっしゃるでしょうか。珠洲の里山に佇むこのお宿では、年末年始をお客さんたちと賑やかに過ごすのが恒例とのことで、そこに私も混ぜていただいたのです。
各地から集まった人びとと坂本さん一家、総勢20人あまりで、大掃除、餅つき、グループに分かれて蕎麦打ち大会。元旦は、お節を盛りつけていただき、海辺の「須須神社」へ初詣に出かけました。
あの地震が起こったのは、夕食前にみなでくつろいでいたときのことです。立っていられず、ただうずくまって頭をかばうだけ。近くにいた女性は、9歳の少年をしっかり抱き抱えてうずくまっていました。幸い、建物は窓ガラス一枚割れず、けが人も出ず。しかし、翌日に周辺を歩いてみると、半壊した家も多く、アスファルトには大きな地割れが走っていました。
地震当日の夜は、念のために高台にある消防署の駐車場に避難し、初めての車中泊。ここには電気が通っていて、こうこうと光る街灯のそばに車を停めたので、私はその灯りのもとで本を読むことができました。清潔なトイレが使えないストレスや、「いつ帰京できるだろうか」という不安はありましたが、ページにぼんやり浮かぶ言葉を追っている間は、心が静まったものです。

それから数日間の出来事は、最新号巻末の「編集者の手帖」に書きましたので、お読みいただけたら幸いです。人の手で作られた温かな食事をとること、お風呂にゆっくり浸かり、寝床で体を伸ばして眠ること。そんな「普通の暮らし」のありがたさが身に染みましたし、同時に、いまも不自由を強いられている方々のご苦労を思います。
今号では「漆器を使ってみませんか?」という特集記事を組んでおり、ここに掲載した漆器の多くは、輪島に根ざした作り手によるものです。私も幾度か訪れたことのある輪島は、鈍色の民家が建ち並ぶ、慎ましい風景が魅力の街ですが、ご存じのように、今回大きな被害を受けました。
しかしながら、作り手がいて、求める人がいる限り、輪島の漆芸産業は必ずや復興するはずです。被災した方々が一刻も早く、穏やかな暮らしを取り戻せることをお祈りいたします。報道がしだいに下火になっていったとしても、ささやかでも自分ができる支援は何か、考え続けていきたい。そう思います。

ロシアとウクライナの戦いは2年近く続き、昨秋からは、パレスチナのガザ地区で戦争が勃発、子どもをはじめとする民間人の虐殺に対し、日本でも抗議の声が上がっています。一方で、「日本も自国の安全のために、防衛力(抑止力)を高めるべきでは」という意見も聞かれます。他国に攻め込まれないために、威嚇として武器を持っていたほうがいいのでは、といった考えですね。
そんな「いま」の状況を考えたとき、思い浮かんだのは、初代編集長の花森安治が冷戦の時代に書いた「武器をすてよう」でした。この文章は、ちょっと意外なほど呑気な調子で始まり(地球上で暮らすいろんな国の人々のユーモラスな描写)、読者の心を惹きつけておいて、しだいに本題へと切り込んでいくようなつくりとなっています。
訴えていることはごくシンプルで、まさに「武器をすてよう」。いまの時代なら、「お花畑的な思想じゃない?」と笑う人もいるかもしれません。
でも、はたして本当にそうでしょうか。花森は、そんなふうに笑う人も想定して、これを書いたように私には思えるのです。

この文章を今号に載せるにあたり、私たちの大先輩である元編集部員で、花森と20年ほど仕事をした、河津一哉さんに話を伺いました。
花森が「武器をすてよう」を発表したのは、『暮しの手帖』第1世紀97号(1968年)。一冊丸ごと、読者の投稿による「戦争中の暮しの記録」を特集した96号の、翌号でした。96号が大きな反響を呼んだことから、花森はある達成感を抱いて「武器をすてよう」を書いたのではないか、そう河津さんは話します。
しかし、それから数年後、1970年代に入って学生運動が盛んになった頃には、花森は、変わりゆく日本の状況に「苛立ち」を覚えていたように見えたといいます。若い編集部員が戦争にまつわる軽々しい発言をすると、花森はひどく怒り、デモに行きたいというある編集部員には、こんなふうに話したといいます。
「気持ちはわかるが、きみがジャーナリストを志すなら、それよりもまず、ペンの力を磨け。人の心を動かすような文章が書けなければ、ぼくらは押されていってしまうんだぞ」
大きな力に押されていかないために、何を書き残すか。「武器をすてよう」は、やがて改稿のうえ、自撰集『一銭五厘の旗』に収録されました。花森の遺言の一つとも言えるこの文章を、いまこそお読みいただけたら嬉しく思います。

表紙画は、画家の今井麗さんによる「FLOWERS」。ひと足早く、春をお届けいたします。12本の特集記事は、明日より一つずつ、担当者がご紹介しますね。
寒さはこれからが本番です。どうぞご無理のないように、身体を休めながらゆったりとお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

新刊『有元葉子 春夏秋冬うちの味』刊行のお知らせ

2024年01月24日

今週から発売の有元葉子さんの単行本をご紹介いたします。この本は、季節ごとの旬の食材を生かした、毎日のおかずのレシピ集です。そして、料理の作り方だけでなく、「食べることは暮らしの根幹」ということを真ん中に据えて編んだ一冊です。

「母から料理を教わったことはないけれど、今のわたしの料理の基礎は母の味です」
著者の有元葉子さんはそう話します。
「子どものころは、台所に立つ母のそばで『小さなお味見係』をしていたんですよ」と。
たとえばちょうど今のような冬の夕方、湯気の立ちのぼる鍋から、小さな里いもを菜箸に刺して渡してくれた思い出などは深く心に残っているそうです。「そんなふうにして、煮具合や味つけの加減など、母の料理が自然に身についていったのでしょう。味の記憶があれば、不思議と自然に作れるものです。そして、そんな『うちの味』があるって幸せなことだなあって思います」と有元さん。

みなさんには「うちの味」はありますか?
合わせ調味料やレトルト食品、出来合いのおかず。便利で助かりますが、そればかりでは、「うちの味」にはなりません。とは言っても、気持ちも時間も、料理に向けられない日があるのも現実です。
そんなときは、と有元さんは話します。
「全部の料理を手作りする必要はありません。ひと品でも作ったものを食卓に上げればいいのです。ときには外食や、買ってきたもので済ませる日があってもいい。でも、たいていの日は『自分で食べるものは自分で作る』という心持ちでいることが大事です」と。
だから、できる範囲で作ればいいのです。そして、旬の素材はそれだけでおいしいもの。料理はシンプルでいいのです。
「料理上手になるには、失敗することも必要です。私だって今も失敗ばっかり。でも、だからこそ『じゃあ、どうすればいい? 次はこうしよう』と考えるでしょう。それが大事なんです」

冒頭のお母様の料理の思い出や、こうした有元さんの「食」への想いなど、エッセイもたっぷり載った読み応えもある一冊です。また、大きなプロセス写真で、見るだけでも料理の手順がわかりやすいのもこの本の特長。ぜひ、この本のレシピをくり返し作って、いろいろとアレンジして、あなたの「うちの味」にしてください。(担当:宇津木)

本の概要はこちらからご覧いただけます。

『有元葉子 春夏秋冬うちの味』
暮しの手帖社オンラインストア限定企画

【特典1】
新刊の発売を記念して、有元葉子さんのサイン本をご用意しました。
先着50名様限定で販売いたします。
この機会に、ぜひお申し込みください。

【特典2】
オンラインストアからお申し込みの方には、送料無料でお送りいたします。
決済時に下記のクーポンコードを入力してください。
※1冊のみ有効。2冊以上もしくは他の商品と同時に購入される場合、クーポンは無効とさせていただきます。

コード:arimotokt75
(有効期限2月末まで)

ご購入は<暮しの手帖社オンラインストア>から。
特典は予告なく終了する場合がございます。あらかじめご了承ください。

良いマッサージのヒントとは

2023年12月14日

良いマッサージのヒントとは
(27号 10分でスッキリほぐします)

いよいよ冬本番ですね。寒さで肩や背中が縮こまり、ガチガチになっていませんか。そんなときに試していただきたいのが、ペアで行うマッサージです。

頭、肩、背中のマッサージや、肩こりなどに有効なツボを教えてくださったのは、目白鍼灸院の柳本真弓院長。「良いマッサージにはコミュニケーションが欠かせない」と柳本さんはおっしゃいます。マッサージをする側は、相手に聞きながら痛いところの有無や気持ちがいい力加減などを確認すること、また、受ける側も率直に希望を伝えると良いのだそうです。そうやってマッサージを進めていくと、不思議なことに、受ける側の感じる心地良さが伝わり、マッサージをする側もリラックスできるのだそう。わたしも家族を相手に試しましたが、お互いになんとも充実した気持ちになりました。

ツボの名前や効能などを覚えなくても、イラストを見ながら一連の流れをやってみるとスッキリほぐれます。約10分とコンパクトな時間設定なので、お風呂上りなどのちょっとした時間にぴったりですよ。年末年始の帰省時に、ふだんは離れて暮らすご家族との親睦を深めるきっかけにしていただけたらうれしいです。(担当:中村)

年末年始におすすめの、和食のご提案です

2023年12月13日

年末年始におすすめの、和食のご提案です
(27号「気負わずに、ハレの日の和食」)

家族や友人など気の置けない人たちと、おいしいものを囲んでゆっくりおしゃべりをするのは、年末年始ならではの楽しみですよね。そのお料理が、シンプルな手順で作れて、気持ちが華やぐようなものなら、なおうれしい……。
そんな思いから、料理家で唎酒師でもある吉田愛さんに、手軽にできる3種の酒肴をはじめ、事前に作っておける牛スジ大根の塩煮込みや、すだちをしぼっていただく和風フライドチキン、〆におすすめのブリしゃぶや炊き込みご飯などを教えていただきました。
どのお料理もとてもおいしいのですが、コトコト煮るだけでできる牛スジ大根の塩煮込みは、澄んだスープが滋味深い味わいで、くり返し作りたくなること間違いなし。
お好みの品を選び、一品くらいずつ出して、のんびり味わう趣向です。年末年始には、誌面でご紹介した順番の通りに作ってみたいなと、今からわくわくしています。肩肘張らずにできるお料理ばかりですので、お試しください。(担当:井田)

地元・浅草の楽しみ

2023年12月12日

地元・浅草の楽しみ
(27号「行事でめぐる浅草暮らし」)

「浅草」と聞いて、何を思い浮かべますか? 浅草寺、雷門、そば屋や和菓子店、花やしきなどがあり、年中賑わう観光地というイメージを持つ方が多いでしょう。そんな浅草に住んでいる写真家のローラン麻奈さんに、日々の暮らしについて綴っていただきました。
「浅草暮らし」というと、いかにも和風な感じがしますが、誌面は本格的な樅の木のクリスマスツリーの写真から始まります。
麻奈さんは、嫁入り道具として、正月のお重と屠蘇器を幼い頃から準備されるような家庭で育ちます。一方、アメリカ好きの父や、フランス人の夫の影響で、様々な国の文化に親しむようになりました。
麻奈さんのご自宅は、戦後、下駄の鼻緒問屋を営んでいたという借家で、和洋折衷の一風変わった造り。洋室にはクリスマスツリーを、和室の床の間には正月の餅花と鏡餅や、雛祭りにはご実家から受け継いだ雛人形を飾ります。
めぐる季節を心待ちにし、行事にちなんだ「食」やしつらえを愉しむ麻奈さんの日常には、和洋の季節のお菓子がふんだんに登場します。食いしん坊の麻奈さんならではの描写も楽しく、読んでいるとお腹がすいてきます。そして、「地元・浅草」を感じられるのでした。(担当:平田)

芸術はすべての人のそばに

2023年12月11日

芸術はすべての人のそばに
(27号「彫刻家はしもとみお 彫るために生きる」)

この20年、動物ばかりを彫り続けてきた、彫刻家のはしもとみおさん。本企画では、そのアトリエ兼住まいにお邪魔し、創作するうえで大切にしていることや、芸術を志したきっかけなどについて伺いました。
「暮らし」を大切にしながらも、一日の中心に創作を据えて生きるはしもとさん。彼女は、「芸術は選ばれた人のためのものではない」「創作は芸術家だけに許されたものではない」とも語ります。
取材中、はしもとさんのそばを片時も離れず、ぴったりと寄り添う愛犬・月(つき)君の姿がありました。1人と1匹暮らし。月君に対する、はしもとさんの態度は愛情深くも、「猫(犬?)可愛がり」とはちょっと違って、むしろ「対等」といった方がぴったり。そこに、はしもとさんの動物全般へのまなざしを垣間見たような気がしました。
誌面では、創作風景やアトリエの写真もたっぷりとご紹介しています。部屋のあちこちにたたずむ動物たちの息づかいを感じていただけたらと思います。(担当:島崎)

お茶の時間を豊かにするケーキ

2023年12月08日

お茶の時間を豊かにするケーキ
(27号「サンデーベイクショップのビクトリアケーキ」)
試作するたび、「スポンジがしっとり、きめ細かい」「レモンカードの甘酸っぱさがよく合う」「バタークリームが入るとリッチな味わいになるね」……と感想が飛び交ったのが、今回ご紹介するビクトリアケーキです。
教わったのは、東京は幡ケ谷でイギリス菓子の店「サンデーベイクショップ」を営む、嶋崎かづこさん。嶋崎さんの作る焼き菓子は、小麦粉の豊かな風味をしっかりと感じられて、繰り返し食べたくなる。そんな味わいが、連日行列ができるほどの評判を呼んでいます。
ビクトリアケーキは、イギリスでは紅茶に合わせる定番のケーキ。手軽に作れて、スポンジに挟むジャムなどを変えながら、一年中楽しめるのもよいところです。粉砂糖をかけた姿は愛らしく、おもてなしのシーンにもおすすめですよ。

嶋崎さんに伺うと、しっとりきめ細かなスポンジケーキに仕上げるコツは、混ぜ方にあるとのこと。材料同士がボールの中でぶつかり合って、しっかりとつながるイメージで、大きくゆったり、よくすり混ぜてみてください。力いっぱいガシガシ混ぜると、焼き上がりがパサッと乾いた感じになってしまうそうです。
スポンジに挟むものは、定番の「イチゴジャムとバタークリーム」、甘酸っぱさがスポンジのおいしさを引き立てる「レモンカード」、生クリームとイチゴの「ショートケーキふう」の3種類をご紹介しています。
失敗知らずのこのレシピ、どなたでもおいしく作れますから、冬休みにお子さんと一緒につくるのも楽しい思い出になると思います。年末年始の集まりや、ふだんのお茶の時間にも、紅茶をたっぷり淹れてどうぞ。
(担当:佐々木)

台所は誰がつくるもの?

2023年12月07日

「台所をつくる」と聞くと、どんなことを想像しますか?
図面を描いて、コンロやシンクを選び、資材を組み立てて「造る」。
収納を工夫したり、棚やフックを追加したりして、使いやすく「作り込む」。
どちらも、台所をつくるための大切な仕事です。

たとえば、名建築家たちはいったいどんな台所を「造った」のか、3つの住宅建築を取り上げた企画が「図解 名作台所案内」(P90~95)。

誌面では、3人の名建築家、藤井厚二・前川國男・吉村順三がそれぞれ手がけた台所を紹介しています。
時代も建築家も異なる台所は、まさに三者三様。しかしどの台所にも、まだ見ぬ暮らしを想像しながら、どこにどんなものがあったら便利で、どう動ければ効率が良いのかを考え抜いた痕跡がありました。
図解を描いてくださった画家の塩谷歩波さんが、細かい工夫や意匠まで描き込んでくださっていますので、ぜひご覧ください。

一方で、たとえ同じシステムキッチンであったとしても、よく使い込まれた台所にはそれぞれに個性があります。毎日の生活に合わせて、自然と作り込まれていくからです。
大平一枝さんによるルポルタージュコラム「人生と台所」(P118~125)では、一般家庭の台所を訪ね、そこでどんな人が、どんな思いで暮らしを続けているのかを取材しました。

その他にも、つい買いためてしまいがちな「缶詰」をおいしく食べるレシピや、年末の大掃除に試したい台所掃除の方法など、台所で役立つ記事を掲載しています。

いよいよ師走に入り、街も年末ムードに包まれるこの頃。
このブログを読んでくださっている皆さんも、きっと一年の締めくくりでお忙しいはず。
せわしない日々の合間に、ほんの少しでも暮らしを良い方向に変えられる記事がありますようにと願っています。(担当:山崎)

※詳細はこちらからご覧いただけます。

理想の台所は、ささやかな工夫から

2023年12月06日

あなたにとって、「理想の台所」とはどんな空間ですか?

台所は料理を作る場で、要素と言えばコンロ・流し台・作業台・収納・冷蔵庫が基本でしょうか。役割も構成もシンプルですが、「理想の台所」がどんな空間か、具体的なイメージが浮かばないという方は案外多いかもしれません。

かくいう私も「小さな不満はあるものの、我が家はシステムキッチンだから仕方ない」と、恥ずかしながら、これまで台所と真剣に向き合ったことはありませんでした。

そんな考えを改めるきっかけになったのが、クリス智子さんのこんな言葉です。

「実際に使ってみて、たとえ、おや? と思うところがあったとしても、それはそれでOK。キッチンの特性に自分が合わせていけばいい」

クリスさんは、新刊『台所と暮らし』にて、「自分らしい台所」と「愛用の台所道具」を見せてくださった9名の内のお一人です。

先の言葉通り、クリスさんの「理想の台所」づくりは大らか。多少の不満があっても、便利な機能を加えるのではなく、基本的にはシンプルな方法で解決するスタイルです。例えば、ホームパーティーで、客人が自由にカトラリーを取れるように棚を配置したり、左利きのクリスさんでもストレスなく使える道具を選んだり、台所はささやかな工夫で溢れています。

「自分は台所でどう過ごしたいのか」「家族や客人にどう過ごしてほしいのか」。日々台所に立ちながら、考え、立ち止まり、微調整する。「理想の台所」のイメージは、そうした試行錯誤の中から見えてくるのかもしれません。

今、我が家では、台所をマイナーチェンジしています。近年の家族の変化に合わせ、食器を移動させたり、動線を見直したり。正直トライ&エラーの繰り返しですが、それ自体が「台所との対話」のようでなかなか楽しいものです。

まずはすぐにできそうなものを一つ、見直してみませんか? 案外小さな工夫が「理想の台所」への大きな一歩になるかもしれません。(担当:須藤)

※詳細はこちらからご覧いただけます。

自分らしい台所

2023年12月05日

自分らしい台所
――別冊編集長より、新刊発売のご挨拶

最近、肩に痛みがあるので布巾掛けの位置を10cmほど低くしました。もともと、猫が飛びついて悪戯しないように高い位置にあったのを、「お互いもういい年なのだから」と猫と自分に言い聞かせ、布巾を楽に干せる位置まで、低くしたのです。
たった10cmのことですが、痛みを伴った作業がなくなり快適になりました。

暮しの手帖社創業者の大橋鎭子は、取材などで得た知識をもとに創意工夫に満ちた台所を作り上げました。すぐに手に取れるように壁に吊るされた鍋、一升瓶の出し入れがしやすい斜めに仕切りがついた引き出し……。「しずこさんの台所」を訪れた編集者の一田憲子さんは「『ここにコレがあったらいいな』という主婦の知恵が、生き生きと見えてきます。」と評しています。そして最後は「台所に必要なものは愛情と合理性という一見真逆な、ふたつの視点なのかもしれません。」と締めています。

住まいの中でも台所は特殊な場所です。そこには多くの働きを求められます。
料理を「効率」よく、たくさんの食器や器具などを「収納」し、いつも「清潔」で……。さらに、居心地がよくなるような「こだわり」も大切。
今回の特集では暮らしを大切にしている9人の台所を「効率」、「清潔」、「収納」、「こだわり」という4つの視点で取材しています。それぞれの方の考え方や使い方に合わせた台所は、きっと、参考にしていただけると思います。
 
すべての人に満点な台所はありませんが、自分にとって満足できる台所を目指すことはできるはずです。小さな不便や不足を放置せず、ひとつひとつ解消してゆけば、自分にとって快適な台所に近づくのです。大規模なリフォームをするまでもなく、調理器具の収納場所を変えたり、引き出しの中を見直したり、必要な場所にフックを付けたり……。たとえば、布巾掛けの位置を10cm下げるだけでも台所は使いやすく、「自分らしい台所」になるのです。

別冊編集長 古庄 修

※詳細はこちらからご覧いただけます。


暮しの手帖社 今日の編集部