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暮らしのヒント集

「お腹がすいてねむれないよォー」
“収穫期を迎え、母と子供たち四人で畑に向かった。しかし畑についてみると、じゃが芋一畝はすっかり掘りおこされてしまっていた。母は途方に暮れ、しばらく声も出ず立ちつくしてしまった。やがて子供たちを促し、残りの芋を掘った。肥料を与えていないので芋はみな小さく、中には緑色のものもあったが、一つ残さず拾い集めた。帰り道で母が、「うちと同じ貧乏な家の人が掘ったんだろうね」と言った声に、うなずいたことを覚えている。”


暮しの手帖社 今日の編集部