今日の編集部

80回目の終戦の日を迎えて

2025年08月15日

今日は終戦の日です。
この国は、先の戦争から80年間、戦争をせずにきました。
戦争放棄を謳う憲法が、それを許さなかったからです。
そして昨今では、どのようにして今後、国を守っていくのかと、かしましく議論されています。

私たちを守るもの。それはいったい何でしょうか。
いずれの国にも劣らない戦力でしょうか。
戦力を競い合い続ければ、いつかは、この世界に平和が訪れるでしょうか。

本当の意味での「抑止力」とは、先の戦争を知り、その責任に向き合うことだと思います。
それなくしては、どれほどの戦力を保持しても、たとえ平和憲法があっても、戦禍はまぬがれないでしょう。
過去を忘れ、蔑ろにすれば、必ずいつか、次の戦争が起こります。

立ち返るべきは、戦時下を生きた庶民の言葉です。
歴史年表や数字には表れない、小さな声で語られた体験。
数えきれないほどのディテールを積み上げて見えてくるもの。
それが戦争の実態であるはずです。

戦争によって、庶民がどれほどの被害をこうむるか。
人々の暮らしがいかに蹂躙され、破壊されてしまうのか。
小社は、読者の方々からの投稿をまとめた『戦争中の暮しの記録』『戦中・戦後の暮しの記録』をはじめ、出版物を通じて、それを伝え続けてきました。

巷に偽りの情報が溢れても、歴史観が変容することがあっても、当時の記録を残す限り、戦争を体験した人々の声は潰えません。

私たちの暮らしとこの社会とは、否でも応でもつながっています。
「もう二度と戦争を起こさないために、一人ひとりが暮らしを大切にする世の中にしたい」
『暮しの手帖』は、創刊当時に掲げたこの理念を決して手放すことなく、今後も折にふれ、戦争について考え、平和に寄与する誌面を編んでまいります。

私たちの暮らしは、国のためにあるのではない。
この国について考え、決めるのは、為政者ではなく、私たち一人ひとりである。
そう深く胸に刻んで。

どうか、これをお読みになられる皆さまも思いを同じくしてくださいますようにと、切に願っています。

『暮しの手帖』編集長 島﨑奈央