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暮らしを大切にするって、どんなこと?

2021年07月21日

暮らしを大切にするって、どんなこと?
――編集長より、最新号発売のご挨拶

蟬がにぎやかに鳴いて梅雨明けとなり、いっきに、猛暑がやってきました。みなさま、お元気でお過ごしでしょうか。
前回、この「ご挨拶」を書いたのは、今号の表紙画を受け取りに京都へ向かう新幹線の車中でした。絵の作者は、佐々木マキさん。漫画家でイラストレーター、そしてたくさんの絵本を手がけてきた方です。イラストレーションのお仕事としては、『風の歌を聴け』ほか、村上春樹さんの小説のカバーが浮かぶ方も多いかもしれませんね。
はじめにお送りした手紙の写しを見返すと、
「ギスギスした空気の漂う昨今ですので、ユーモアがあって、心がほぐれるような絵を」
とあります。
佐々木マキさんはすぐに、「お受けします」とファクスをくださり(絵本や漫画でおなじみの可愛い字で)、とてもうれしかったのを思い出します。
今号を目にした方が、くすっと笑って、気持ちがふっとやわらぎますように。

さて、ときどき読者の方から、
「夏になると、『暮しの手帖』が戦争や平和の特集を組むのはなぜなのでしょうか」
というご質問をいただくことがあります。
ひと言でお答えすれば、それは1948年に『暮しの手帖』が創刊したときに掲げた、
「もう二度と戦争を起こさないために、一人ひとりが暮らしを大切にする世の中にしたい」
という理念を、くり返し胸に刻み、お伝えしたいと思ってのことです。
なぜ、暮らしを大切にしたら、戦争が起こらないの? と疑問に思われるかもしれませんが、初代編集長の花森安治はこんなふうに語ったと伝えられています。
「戦争は恐ろしい。(中略)国は軍国主義一色となり、誰もかれもが、なだれをうって戦争に突っ込んでいったのは、ひとりひとりが、自分の暮らしを大切にしなかったからだと思う。もしみんなに、あったかい家庭、守るに足る幸せな暮らしがあったなら、戦争にならなかった」
つまりは、自分たちの「大切な暮らし」をめちゃくちゃにするような大きな力に、一人ひとりが早くから全力で抗っていたなら、戦争は起こらなかった、ということでしょうか。
そんなに単純じゃない、と思われるかもしれません。けれども、「平和」を考えるとき、それはある日突然やぶられるものではなく、じわじわと、ゆっくりと何かに暮らしがからめとられ、気づけば身動きがとれなくなって奪われるものなのかもしれない。そう思うのです。
「一人ひとりが暮らしを大切に」とは、「自分の暮らしが守られれば、それでよい」という意味あいでは決してないと私は思います。自分に大切な暮らしがあるように、隣人にもそんな暮らしがあると想像し、尊ぶこと。一人ひとりの、それぞれに違った暮らしが守られるために、どんな世界にしたいかを考えて、小さな声をあげていくことをあきらめない。
……と、なんだかカタくなりましたが、たかだか「雑誌」でも、私たち自身が「小さな声」をあげる気持ちで、一冊一冊を編んでゆきたいなあと思います。せっかく、読んでくださる方がいらっしゃるのだから。

最後にひとつ、お知らせです。じつにアナログな私たちですが、このたび、公式Instagramを開設しました。
https://www.instagram.com/kurashinotecho

Facebookでは、おもに文章で誌面の内容をご紹介していますが、Instagramでは、スタッフの方たちの力作である、写真やイラストレーションを軸にご紹介します。ときどき、覗いていただけたらうれしいです。
それでは、暑さ厳しい日々が続きますが、みなさま、どうか健やかにお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

暑い夏をおいしく、健やかに乗り切りましょう。

2021年06月11日

さあ、もうすぐ今年も暑い夏がやってきますね。
最近しきりに言われる「酷暑」なんていう日々がまた続くのでしょうか。
こう暑いと食欲も減退し、まず第一に台所に立つ気力も不足気味。
水分や冷たいものばかりを口にしたり、食事もカンタンなもので
済ませちゃおう、なんて日が続くこともありますよね。
でも、それではなおさら元気を蓄えられません。

夏は暑いばかりじゃないのです。
みずみずしい野菜がいっそうおいしい季節です。
トマトになす、オクラ、きゅうり、ピーマン、ズッキーニ……。
旬の味わいを生かすシンプルなレシピで、おいしく健やかな食卓を調えましょう。

そこでお役立ていただきたいのが、
暮しの手帖別冊の最新刊、『暮しの手帖の傑作レシピ 2021夏保存版』です。
料理をするのがおっくうに感じるときでも作りやすい
シンプルなレシピや、暑さに疲れた身体をととのえるレシピ、
もりもり食欲がアップするおかずなど、
ここ10年の暮しの手帖に掲載してきた数ある料理のなかから、
「傑作」としておすすめするレシピを選りすぐってご紹介します。

巻頭は今回新しく取材した「ワタナベマキさん 健やかに暮らす夏の食卓」。
いつもいきいきと麗かで、エネルギッシュな料理家のワタナベさんの暮らし方と、
夏の身体を元気に保つための食卓の工夫、レシピをうかがいます。

そして、本編でご紹介する選りすぐりの料理は122品。
らくらく簡単なシンプルレシピから、家時間を楽しむ本格料理、
「もうひと品」がうれしい副菜レシピ、そしてひんやりおいしい
夏のデザートまで、充実のラインナップです。


中とじには、「絶品カレー特選レシピ」を収録。
表紙の写真にもなっている高山なおみさんの「ごちそうチキンカレー」や、
昆布とかつおダシを使った、川津幸子さんの「和風カレー」など
カレールーで作るカレーから、
鶏肉とししとう、万願寺唐辛子などの野菜とクミンとコリアンダーなどで作る
長尾智子さんの「鶏肉と緑野菜のカレー」など
いま人気の本格スパイスカレーまで、暑い夏にぴったりの
珠玉のカレーレシピを集めて掲載しています。

すべて編集部で試作、試食を重ねているからこそ厳選できて、
自信を持っておすすめすることができる、「傑作」レシピです。
毎日をすこやかに暮らす元気のもとは、「おいしい」という笑顔です。
そのためにこの一冊をお役立ていただけますように。(担当:宇津木)

「あたらしさ」と出会いたい

2021年05月25日

「あたらしさ」と出会いたい
——編集長より、最新号発売のご挨拶

各地で梅雨入りし、むしむしする日が続きますね。お元気でお過ごしでしょうか?
この「ご挨拶」を書くのは、いつも発売の数日前なのですが、今日は雨のなか、京都へ向かう新幹線で書いています。新幹線に乗るのは、ほんとうに久しぶり。京都で暮らす、ある作家の方のもとへ、次号の表紙の原画を受け取りに伺うのですが、どんな絵なのか、とっても楽しみです。
いま、私の目の前には、できたてほやほやの最新号があります。表紙画を手がけてくださったのは、画家の今井麗さん。大きく豪快にカットされたメロンに、うっすらと透けた生ハムがのった食卓の情景は、鮮やかで、初夏のよろこびが生き生きと伝わってくるよう。
モチーフの「生ハムメロン」は、今井さんの幼少期の、ある思い出と結びついています。ちょっと意外で愉快なエピソードは、169頁に今井さんが寄せてくださった文章でお楽しみください。

今号の始まりの記事「わたしの手帖」には、「毎日があたらしいから」というタイトルをつけました。
主人公は、ピアニストの舘野泉さん。ご存じでしょうか、 20代でフィンランドに渡り、世界中でコンサートを開いて活躍。60代半ばに脳出血で倒れ、右手が使いにくくなるものの、左手だけでピアノを奏で、84歳のいまも現役でいらっしゃいます。
きっかけは、昨年11月10日に東京オペラシティで開かれた、演奏生活60周年のコンサートにお伺いしたことでした。プログラムを開くと、「苦海浄土」といった言葉のつく難解そうな曲名が並び、ほとんどの曲に、「※世界初演」と添えられています。自粛生活のなか、生の音楽に久しぶりに触れたくて足を運んだのですが、正直なところ、「理解して楽しめるかなあ」と不安がよぎりました。
ところが、いざ演奏が始まると、これがもう、とにかく素晴らしいのです。耳なじみのないメロディの流れに身をひたしていると、どこか知らない土地に運ばれて、シュールかつ美しい風景を目にするよう。「左手だけで弾いている」なんて、すぐに忘れて没頭していました。
ああ、音楽の力って、すごいな。84歳になっても、こんな「あたらしい曲」に挑める舘野さんって、どんな方なんだろう。
単純ですが、いつもだいたいそんなふうにして、記事は生まれていきます。

東京のご自宅でお会いした舘野さんは、飾らず、偉ぶらず、なんともチャーミングな方でした。脳出血で倒れ、リハビリを経て復活を遂げた話は、言葉を探しながら誠実に答えようとしてくださる。妻で声楽家のマリアさんとの馴れ初めや、日々の炊事の分担、ときどき勃発する夫婦喧嘩の話は、ユーモラスに。
とりわけ印象的だったのは、「脳出血で倒れたときよりも、コロナの影響でコンサートができない時期のほうが辛かったかな」とおっしゃったことでしょうか。音楽は、聴く人たちと心を通い合わせるように、会場が一体となって完成されるもの。コンサートのステージに立つと、自分でも知らなかった音が鳴り、「あたらしい自分」が生まれるのだと。

いまは、誰もが息苦しさを覚えつつ、それぞれの暮らしの小さなよろこびを心のよりどころにして、日々を歩んでいるのではとないかと思います。
舘野さんのように、毎日「あたらしい自分」であり続けるのは、とてもむつかしい。それでも、考えること、深く感動すること、自分の思いを言葉にすること、他者を思いやることを忘れずにいたい。そんなことを考えながらこの記事をつくり、一冊を編みました。
今号より、料理家の枝元なほみさんによる新連載「食べる、生きる、考える」が始まります。「台所の窓を開けて社会とつながりたい」と語る枝元さんが、社会のどんな部分に疑問を抱き、少しずつでも変えたいと願っているか、その柔らかな語りに耳を傾けて、ご一緒に考えていただけたらと思います。
そのほかの記事も、担当者が明日から一つずつご紹介していきますので、ぜひお読みください。

あっという間に、京都に到着です。どうか、みなさまの毎日が、健やかで、あたらしいよろこびに満たされますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

おしゃれ心に、灯を点けよう

2021年03月25日

おしゃれ心に、灯を点けよう
——編集長より、最新号発売のご挨拶

東京は、いまが桜の見ごろですが、花を見上げて歩く人びとの顔は、皆ほころんで、うれしそうです。マスクをしていても目が笑っていて、うれしさがわかるものなのですね。
早いもので、私たちの在宅ワークでの制作も、もうすぐ1年になろうとしています。せわしい仕事と、炊事洗濯といった家のこと。両方が混じり合う日々を淡々と続けていく、倦まずに、健やかに。それはなんてむずかしいのだろうと、実感した1年でした。
さて、今号の冒頭には、こんな言葉を置きました。

「どんなに みじめな気持でいるときでも
つつましい おしゃれ心を失はないでいよう
かなしい明け暮れを過しているときこそ
きよらかな おしゃれ心に灯を点けよう」

これは、初代編集長の花森安治が、『暮しの手帖』の前身である『スタイルブック』に掲げた言葉です。この雑誌の刊行は1946年の夏。終戦から1年の物資に乏しい時分に、浴衣をほどいた生地でつくるワンピースなど、工夫を凝らした「おしゃれ」を提案しました。
いま、この薄い雑誌を手に取ると、苦しいなかでも生を謳歌しようという心、生きる喜びのようなものが、美しい色彩とともにどっと伝わってきて、圧倒されます。
苦しいときに、「生きる」を楽しむって、どういうことだろう。今号は、そんなことを考えながら編みました。
巻頭記事は、「生きることは、楽しいことばかり」。
86歳の編集者、田中和雄さんは、戦時中の少年時代に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に出合い、不惑を過ぎてから、絵本と詩集の編集に携わるようになります。「生きることは、楽しいことばかり」という言葉は、この状況下ではいささか呑気に響くかもしれません。しかし、そこにはどんな思いがあるのか、ぜひ感じ取ってみてください。
続く記事は、今号の表紙の作品を手がけた銅版画家、南桂子さんの生き方を追った、「夜中にとびたつ小鳥のように」。
南さんもまた、1953年、42歳でパリに渡って銅版画家となり、海外でいち早く認められた、遅咲きの人です。とりわけ女性であれば、人生に制約があっただろう時代に、南さんはなぜ、そうした生き方を選んだのか。淡々と地道に続けた制作には、どんな喜びがあったのか。知己の人びとを取材して、南さんの「おしゃれ」にも触れながら、ひとりの女性の像を浮き彫りにしました。
「手元の素材で、アクセサリーを」と「おとなのための帆布バッグ」は、自分の手を動かしておしゃれを楽しもうという手作り記事です。
随筆家の若松英輔さんによる「詩が悲しみに寄り添えるなら」は、大切な人や大切な場所を失ったとき、その経験と心静かに向き合うきっかけにしていただけたらと願って企画しました。

春は、顔を上げて、胸をひらいて大きく呼吸をして、軽やかに歩んでいきたい季節です。寒さで縮こまった心身をほどいて、暮らしにそれぞれの「楽しみ」を見いだせますように。明日から、担当者が一つひとつの記事についてご紹介しますので、ぜひお読みください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

佐藤雅彦 最新刊『考えの整頓 ベンチの足』 ベストセラー『考えの整頓』から10年、『暮しの手帖』大人気連載 待望の第2集刊行!!

2021年03月24日

長年お待たせしました! ついに、第2集が完成しました。
『ピタゴラスイッチ』を生み出し、東京藝術大学で教鞭をとる佐藤雅彦先生の新刊です。

日常には、
数え切れないくらいの「妙」があり
そのつど学ぶ理と、
それでもこぼれる不可解さがある。

佐藤先生は、どんなささいなことでも「?」と思ったことを素通りにしません。例えば、夜中の散歩中に、偶然見かけた妙に背の高いベンチと妙に大きい足……。
本書は、先生が日常で気付いた23の「?」を、まるで謎を解くように明かしていった考察集です。
・今まで気が付かなかった巻き尺の持つ叡智
・知らない間につながっていた、あの歌姫との不思議な縁!
・家の中で一番年をとるところどーこだ?
・落とした携帯電話が知っている真実
など、ともすると見過ごしがちな日常の「妙」に立ち止まる先生は、その「妙」に魅了され、真髄に迫ります。
ベスト・エッセイに選出された「向こう側に人がいる」「たしかに……」や、カンヌ国際映画祭に正式招待されるまでが綴られた「5名の監督」ほか、全23編です。

先生の身にたびたびに起きてしまう不可解な出来事。それに気が付き、立ち止まり、新たな発見と知見を得る先生の好奇心に脱帽します。
表紙の図形の秘密も、ぜひ書店にてお手にとってお確かめください。(担当:村上)

※目次は下記のリンクよりご覧いただけます。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1196.html

何気ない日々をいつくしむ ——編集長より、最新号発売のご挨拶

2021年01月25日

表紙右_DSC7859

こんにちは、北川です。
数日前、在宅ワーク中に、できたてほやほやの10号が届きました。
校正で何度も読んでいても、こうして「本」となった一冊を手に取り、重みを感じながらぱらぱらと読むのは、やっぱりとてもうれしいものです。
今号の表紙画は、おぎわら朋弥さんの「凧あがる」。
この絵をおぎわらさんにご依頼したのは昨秋のことでしたが、一冊に込める思いとして、
「何気ない日常こそ、かけがえのないもの」
「同じ地平で生きる、私たちへ」
という言葉をお伝えし、描く題材を考えていただきました。
「身近にある風景から考えてみますね」とおぎわらさんはおっしゃり、数週間後に受け取ったのが、この絵です。
公園の一角のような原っぱに、凧あげをするお父さんと少年、犬と散歩する人、ボールを蹴る人、寄り添って歩くカップルと、いろんな人が描かれています。
水を流したような早春の空に、夕焼けの色がすーっと混じる美しさ。
なんだか、自分も絵のなかの一人となり、高い空を見上げて、きりっと冷えた空気を胸いっぱいに吸い込むかのような、のびやかな気持ちになったものです。
なんてことない、けれども「かけがえのない」ある一日のひととき。
みなさんも、これに近い情景が胸に浮かぶでしょうか?

このところ思うのは、人は「頑張って」という言葉だけでは、なかなか頑張り続けられないなあ、ということでしょうか。
もちろん、日々の暮らしは、それなりに頑張らなければ回っていかないものですが、家庭で、職場で、淡々と頑張っている人たちが、心底疲れたときに「助けてほしい」と言えているかどうか。
「私はまだ恵まれているほうだ」といった言葉で自分をなだめて、心も身体も疲弊してはいないか。それが心配なのです。

 

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今号の巻頭には、いまだからこそ読んでいただきたい、五つの詩を置きました。
まど・みちおさん、谷川俊太郎さん、工藤直子さんによる「生きる」をテーマとした詩は、声に出して読むとゆっくり胸に落ち、いま、私たちが置かれたこの状況を、俯瞰した目で見つめることができる気がします。
続く記事、「迷惑かけたっていいじゃない」は、少し顰蹙を買いそうなタイトルかもしれませんが、けっして、「他人に迷惑をかけても好きに生きようよ」という内容ではありません。
この記事の主役は、横浜市で自主幼稚園「りんごの木」を40年近く続けてきた、柴田愛子さん。子どもから大人まで、すべての人と真正面から対等にかかわってきた柴田さんの言葉は、こんなふう。
「迷惑をかけ合える関係をどれだけつくっていけるかが、生きやすさにつながっていくと思うんです。みんな人にはいいところばかり見せているけれど、たいへんなときに支え合える相手がいることが、いちばん大事なのよ」
私は、「人にはいいところばかり見せている」に、どきっとしました。そうだな、自分はちょっと格好つけていて、そして迷惑をかけていないつもりになっているのかもしれないな、と。
この記事は、それこそ「助けてほしい」と言いにくい人に読んでいただきたいですし、少々めんどうでも人とかかわり合いながら、「助けて」が言える社会をつくっていけたら——そんな願いを込めて編みました。

年明け早々に緊急事態宣言が出されて、私たちは、なるべく出社を控えながら、次号、次々号を制作しています。
どんなことがあっても、日々の暮らしはたゆみなく続いていく。それをどう工夫して、楽しんで、満足して生きていけるか。
みなさんと同じ地平で生きる私たちが、悩んだり、笑ったり、ときに怒ったりしながら、今年も一号一号、等身大の雑誌づくりを続けていきたいと考えています。
どうぞ今年も、『暮しの手帖』をお支えください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

12月10日、暮しの手帖別冊『わが家の家事シェア』が発売になります。

2020年12月10日

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今年、私たちは「家で過ごすということ」について深く考えました。
そして「人と人との、心地よい距離」についても——。

私がこの本を作りたいと考えたのは、世の中がこんなふうになるなんて、想像もしていなかった2019年の夏のこと。前年に双子を出産し、1年間の育児休業から復職したばかりのころでした。
自分が納得する仕事をしたい。家をさっぱりと整えたい。子どもたちの成長に寄り添いたい。
そんな理想を持ちながら、現実には能力も時間も足りず、眠る時間を削ることでなんとか帳尻を合わせるような日々です。仕事、家事の効率を上げようと必死になりながら、一方で家人に対してはモヤモヤとしたものを抱えていました。
なぜ私だけが……。どうやったら一緒に家事を工夫していけるの? というか、世の人たちはどうしているんだろう?

2020年2月〜5月、小社WEBと誌上で「家事シェアに関する意識調査アンケート」を実施しました。回答してくださったのは784名の皆さんです。
緊急事態宣言下で家族が家で過ごす時間が長くなり、家事負担が増えたことを嘆く声、新たな家事バランスを模索する様子がうかがえる回答があるなかで、(詳しい結果は本日より、小社WEBサイトの特設ページで公開しますので、ぜひご覧いただきたいのですが)深く考えさせられたのは、「(現状の)家事バランスを変えたい」と考える人が75%いること、そして、それなのに、家事バランスを変えるために「話し合わない(話し合えない)」という人が50%、という結果でした。
家事の方法論より、むしろコミュニケーションの工夫に課題があるのかもしれない……。
私たちは家事の工夫だけでなく、互いの考えを伝え合い、すり合わせていく過程にまで踏み込んで、取材することにしました。

「1章 心地よい暮らしの形を模索中。」では、共に暮らして数年、今まさに人と共同して生活することの面白さと難しさを実感する3つの家庭を、
「2章 一緒に居る、それぞれが生きる。」では、共に暮らして十年以上、暮らしの呼吸は合ってきた一方、仕事の責任は増してきて……という3つの家庭を、
「3章 いつだって、関係は変えられる。」では、長年の勤めを終えて退職したり、病気を患ったり……。あることがきっかけで家事のバランスを見直した2つの家庭を取材しました。
共通していたのは、それぞれがよく話し、深い納得感を持って家事を担っていること。全ての家事が均等に分担されているわけではないし、日々、そのバランスは揺らぎますが、互いの暮らしを大切にしようと、何度も話し合い、試行錯誤しています。

対話が暮らしを変えていく。
そんな実感にあふれたエピソードの数々が、あなたの家庭の家事シェアを後押しし、家事を楽しくするヒントになればと思います。(担当 長谷川)

※この本の目次は下記のリンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/bessatsu/e_2102.html

※特設ページは下記リンクよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/

連載12年目を迎えた、料理家・高山なおみさんによる「気ぬけごはん」の第2集、 『気ぬけごはん2 東京のち神戸、ときどき旅』ができました。

2020年11月27日

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◎連載12年目を迎えた、料理家・高山なおみさんによる「気ぬけごはん」の第2集、
『気ぬけごはん2 東京のち神戸、ときどき旅』ができました。

高山なおみさんの毎日の暮らしから生まれたふだん着感覚の料理、
それが「気ぬけごはん」です。
肩の力をふっとぬいて自由に作る料理には、
新たな発見と、心底ほっとするおいしさがあります。

1話につき、2~3品のレシピが紹介されるスタイルで、
連載12年目を迎えた「気ぬけごはん」は、
『暮しの手帖』本誌で大人気の料理エッセイ。
第2集となる本書は、東京から神戸へ、そしてひとり暮らしへと
大きな変化を迎えつつ綴ったエッセイのなかに、手軽なのにさすが! とうなる120品あまりのレシピがぎっしり。
「気取りのない料理が、何よりもおいしい」と、しみじみと感じていただけるはずです。
ぜひ、毎日の献立にご活用ください。

【レシピ紹介】
たとえばこんな「気ぬけごはん」

●スパゲティのオムレツ
食べ切れずに残ったスパゲティは、冷蔵庫にとっておいてオムレツの具に。

●魚の煮汁の炊き込みご飯
魚の煮つけであまった煮汁と、たっぷりのしょうがのせん切りで作る炊き込みご飯。

●ハンペンとお麩のグラタン
グラタンが食べたくなったけれど、冷蔵庫にはハンペン、乾物 カゴにはお麩……。
夜の胃袋にやさしいふわふわとろりのグラタンレシピ。

●自家製アジの干物
干物作りは、まず、自分が泳ぐところから。海水を口の中に再現し、それより少ししょっぱめな
塩水を作ればよいのです。

●野菜たっぷりの薄焼き
小麦粉さえあれば、冷蔵庫に半端に残っているもやし、白菜、しいたけなどの野菜で何でもおいしくできます。

●神戸風おでん三変化
神戸のおでんは牛すじが決め手。残ったらみそを溶き入れ、刻みねぎと七味唐辛子。次はそこに牛乳を加えて刻み葱。最後はカレールウとトマトを加えておでんカレーに。

書店にてお手に取ってご覧ください。(担当:村上)

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※目次は下記のリンクよりご覧いただけます。

https://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1195.html

花森安治選集 全3巻完結!
第3巻『ぼくらは二度とだまされない』

2020年11月26日

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花森安治選集 全3巻完結!
第3巻『ぼくらは二度とだまされない』

ついに、完結巻となる第3巻を発売しました。
本巻では、日本が経済大国へと急成長を遂げた時代、
1960年から、花森の没年1978年の絶筆までの、
激動の昭和を鋭く見つめた作品群となっています。

「もはや戦後ではない」と、日本が復興の時代の終了宣言をしたのが1956年。
その数年後の1960年には「所得倍増計画」政策がはじまり、
高度経済成長とともに、豊かさの時代へと一気に駆け上がりました。
「夢の超特急」と呼ばれた東海道新幹線の開業、東京オリンピック(1964年)、
大阪万博(1970年)開催、といった華やかさに沸く一方、
それらが生んだ歪みも顕在化してきていた時代でした。

ロッキード事件などの政治腐敗、利益至上主義の考えから起こった大量生産、
東京のスモッグ深刻化、食品偽装問題、水俣病をはじめとする公害……。
「もうけ」のために、自然や暮らしを平気で破壊してしまう企業精神や、人々のありかたを、花森は痛烈に批判。国や大企業に対して、臆することなく抗い続けました。

60年近くも前の文章ですが、まるで今のような錯覚すら覚える日本の現状と展望。
召集令状で国民を戦場に駆り出し、暮しを奪った「国」に、今度はだまされない。
今度こそ、困ることをはっきり言おう。
自分たちの暮しは自分たちで守ろうと訴えます。

庶民のあたりまえの暮しを守るため、一本のペンを武器に挑んだ檄文の数々。
この叫びは、現代日本にも通じる魂のメッセージです。
ぜひ、書店にてお手に取ってご覧ください。

外函の装画は、1957年刊行の『暮しの手帖』1世紀42号の表紙画から。
もちろん、花森安治によるものです。(担当:村上)

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※目次は下記のリンクよりご覧いただけます。

https://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1193.html

苦しいときは、笑っちゃおう――編集長より、最新号発売のご挨拶

2020年11月25日

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苦しいときは、笑っちゃおう
――編集長より、最新号発売のご挨拶

こんにちは、北川です。
つい先日、混雑する上野駅の構内を歩いていたら、ふっと、10代の頃に習った歌が胸に浮かびました。

ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく 啄木

この年末年始は、ふるさとを遠くに思いながら過ごす人も多いのだろうなあ。この「人ごみ」の中の一人ひとり、マスクをして足早に歩く人たちも、きっと……。
そんなことを思うと、すこし切なくなったのですが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。
本当に、めまぐるしい変化があり、「暮らし」の中身を、その意味を、いくたびも見つめ直す一年でした。しんどいこともたくさんあったけれど、得たこと、気づきもあった、そう信じたいと思います。

最新号の表紙画は、舞い散る雪の中を元気いっぱいに駆け回る3頭の鹿たち。作者は、絵本作家のきくちちきさんです。
今号は、ちきさん作の絵本「しろいみつばち」を綴じ込みの付録につけました。絵本をつくろうと決めたのは早春の頃でしたが、しだいに世の中はざわめき始め、やがて家にひとり閉じこもって仕事をする日々、ちきさんから届く生命力あふれる絵には、ずいぶんと心がなぐさめられました。
「絵本は詩であり、哲学であり、アート。子どもだけのものじゃないのよ」
そう教えてくれたのは、巻頭記事「わたしの手帖」に登場してくださった、元編集者で作家の小川悦子さんでした。
小川さんは、絵本と児童書の出版社の社長を20年余り務め上げ、世に送り出した絵本は156冊、海外絵本の翻訳も手がけられています。
その性格は、好きになったらまっしぐら。自社の絵本をリュックに詰めて、書店に置いてほしいとお願いして回ったときは、10軒中9軒にすげなく断られても、まったく傷つかなかったと話します。「だって、必ず1軒は気に入ってくれるものよ」と。
私などは、『暮しの手帖』を置いてくださっている書店に入っても、書店員さんたちがお忙しそうにしていると、物陰からしばらく見守り、ご挨拶もできずに出てきてしまうこともあるのだ……そう話したら、思いきり叱られました。
「ご自分で一生懸命につくった本でしょう? 世の中に知らしめたいと思ったら、なんでもできるはずですよ」
ああ、本当にそうだなと、心底恥ずかしくなったのでした。
この記事のタイトルとした「自分を生きなきゃ、意味がない」もそうですが、小川さんの言葉には、85年の人生から紡ぎ出された「輝き」があります。そう、「苦しいときは、笑っちゃえばいいのよ」ともおっしゃっていたっけ。
今号は、ちきさんの絵本、小川さんの記事をはじめ、私たち編集部員一人ひとりが「贈り物」を持ち寄るような気持ちで編みました。
即効性はないけれども、いまを生きるみなさまの胸にじんわりとしみいって、心が平らかになるような一冊にできたら。せわしい日々のなかで、無心に手を動かす楽しさや、自分の身体をいたわることを思い出すきっかけになれたらと。
一つひとつの記事については、明日から担当者それぞれがこちらでご紹介していきますので、ぜひ、お読みください。

このところ、寝る前にまど・みちおさんの詩集を開いているのですが、昨晩、ああいいなと思った詩を最後にご紹介します。
タイトルは「ぼくが ここに」。

ぼくが ここに いるとき
ほかの どんなものも
ぼくに かさなって
ここに いることは できない

もしも ゾウが ここに いるならば
そのゾウだけ
マメが いるならば
その一つぶの マメだけ
しか ここに いることは できない

ああ このちきゅうの うえでは
こんなに だいじに
まもられているのだ
どんなものが どんなところに
いるときにも

その「いること」こそが
なににも まして
すばらしいこと として

「いること」こそが、すばらしい。わかっているのに、どうしてときどき忘れちゃうのかな、と思います。
誰と比べるわけでもない、素のままの暮らしが、一つひとつ、あたたかに守られますように。いつもお読みくださることに感謝を込めて。
どうぞみなさま、心穏やかな年末年始をお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

追伸/
絵本「しろいみつばち」にちなんだ、きくちちきさんのオンライントークイベントが、12月1日(火)20:30より開催されます。
ちきさんが「しろいみつばち」の朗読をしてくださり、『絵本ナビ』編集長の磯崎園子さんと、絵本の持つ力について語り合います。私は司会を務めます。
全国どこにいらしても(海外でも)ご参加できますので、ぜひご覧ください。

お申し込み方法は、下記のリンクにお進みください。
https://store.tsite.jp/ginza/event/magazine/17177-1551441116.html

新刊 別冊『おいしく食べきる料理術』発売中です。

2020年09月30日

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新刊 別冊『おいしく食べきる料理術』発売中です。
(別冊『おいしく食べきる料理術』)

今年、外出自粛の期間を経て、多くの人が、家にいる時間が増えました。
家で食事をとることが多くなり、普段は料理をする習慣がない人たちも、
台所に立つ機会が増えたそうです。そうすると、以前は外での仕事で忙しくしていて見えていなかった家の中のことが、いくつも見えてきますね。
思いの外、自分の家の台所のゴミが多いことに気づいた人もいるでしょう。もちろん兼ねてから、それが気になっていた人も多いでしょう。
「もったいないなぁ」と。
その捨てたものの中には、食べられたはずのものがあるからです。
それがいわゆる「食品ロス」とか「フードロス」と呼ばれるもの。
日本では、全体量のおよそ半分が家庭から出ているそうです。
本当にもったいないですね。農業や漁業の営みで生産された食料資源をムダにすることになりますし、自然環境にもよいわけがありません。食料自給率が低い日本だからなおさらです。また、お金を支払って購入した食べものですから、自らのお金をムダにしていることにもなります。
そして何より、食べものを捨ててしまうときの、「もったいないなぁ」という気持ちをなくしたいと思うのです。
よりおいしく、ムダなく料理する工夫がうまくできたら。
買った食材を献立に生かし、家にあるもので手早く料理する。
それこそが「料理上手」です。毎日の台所仕事はもっと楽しくなりますし、食卓は心豊かなものになるはず。
そんな工夫とアイデアをご紹介する本を作りたい。
そう考えて、私たちは小社のウエブサイトと『暮しの手帖』の誌面で、アンケートを実施し、その実際の事情を知ることから始めました。実に663名というたくさんの方々にお答えいただきました。
この本では、7人の料理家の方々に、おいしく食べきる台所術と129品のレシピを教えていただきました。有元葉子さん、飛田和緒さん、大原千鶴さん、荻野恭子さん、上田淳子さん、こてらみやさん、ワタナベマキさんです。
ちょっと手を動かすことで、食材のおいしさを長持ちさせる。いままで捨てていた部位をおいしく食べきる。冷蔵庫にあるものだけでおいしいひと品を作る。料理の工夫って楽しいものです。みなさんもぜひ、「もったいない」というモヤモヤなくして、「料理上手」を目指してみてください。
きっとこの本がお役に立てることと思います。(担当:宇津木)

この本の詳細とアンケート結果のまとめは下記の特設ページよりご覧いただけます。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/life-style_survey_report/

ゆるぎないもの ——編集長より、最新号発売のご挨拶

2020年09月25日

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ゆるぎないもの
——編集長より、最新号発売のご挨拶

窓を開ければさらりと乾いた風が吹き渡り、エアコンをつけずに一日を過ごせる、そんな心地よい季節になりました。
今年の夏は、酷暑はもちろんのこと、その「不自由さ」においてもなかなかにつらく、我慢くらべのようでしたね。誰もがそれぞれの「不自由さ」と向き合いながら、それでも何かしらの楽しみを見いだそうと工夫して、先の見えない日々を歩んできたような気がします。

私たち編集部は相変わらず在宅勤務を基本に制作を続けていて、この8号ではや3冊目、ビデオ通話の打ち合わせなどはさすがに慣れてきました。それでも、取材や撮影で顔を合わせると、なんだかうれしくて、つい一生懸命に話してしまいます。
同じ空間にいて、たがいの表情を見て、声で空気を震わせて言葉を伝えるのが、なぜこんなによいものなのか。その理由はわからないけれど、ビデオ通話の話し合いが「目的地に向かって脇目も振らずまっしぐら」といった印象なのに対して、じかに会って話すことには、「ゆとり」や「遊び」がある感じでしょうか。ちょっとの寄り道や脱線はゆるされて、会話がふわっと、空間のぶんだけ広がってゆくような。

8号の巻頭記事「どんなときも、絵本を開けば」は、東京・原宿で小さな喫茶店「シーモアグラス」を営む坂本織衣さんに、開店してから24年のあいだ、折々に心を照らしてきた4冊の絵本のことを綴っていただきました。
初めて取材に訪れたのは6月のはじめ。お店のある明治通りは自粛期間前の賑わいを取り戻し、マスク姿の人びとであふれていましたが、坂本さんは3月下旬からお店を休業としたままでした。
「どうしたらいいか、わからないんですよね」
久しぶりにシャッターを開けたという店内で、確か、坂本さんはそんなふうにおっしゃったと思います。嘆くわけでなく、つぶやくように淡々と。
そして、壁一面の本棚にみっちりと詰まった絵本から数冊を抜き出し、それぞれの物語について、ご自分のこれまでの歩みに重ねて語ってくださいました。幼いお子さん2人を育てながらお店を開こうとしていた頃、寝る前の2人に読み聞かせては、親子で心をひとつにした絵本。家事、育児、お店の仕事、ご両親の世話に追われる暮らしのなかで、働き者の主人公に自分を重ね合わせて、その日々を肯定できた絵本……。それらの話は、一つひとつがお店にともる灯りみたいに、ささやかで素朴であったかく、希望を感じさせるのでした。
私たちはたぶん、一人ひとりがこうした、「私はこれがとっても好きなんだ。なぜならば……」という物語を持っていて、たびたび胸の内から取り出しては眺め、ときに誰かに語ったりして、生きる支えとしている気がします。
喫茶店で、見知らぬ人たちに混じって過ごすひとときも。人と目を合わせて話すことも。ひとところに集い、演劇や生の音楽に胸を震わせることも。どんな「好き」も、あっさり簡単に手放していいものなど何一つないんですよね。

自粛期間中に「不要不急」という言葉がよく使われ、「自分の仕事ははたして不要不急か?」なんて自虐めいた話題があちこちで聞かれました。私たちの仕事は、自虐でも謙遜でもなんでもなく、「不要不急である」と言えます。雑誌がなくても、衣食住は成り立ちますから。
けれども、たとえば日々のごはんが栄養をとることだけではなく、心に刻まれ、人とのつながりを感じられるものであるために。自分の手を動かして何かをつくり出す、その楽しみとゆたかさを幾つになっても忘れないために。社会の潮流に対して自分はどう考えるのか、その礎とするために。私たち雑誌ができることはまだあるんじゃないかなと信じ、手探りしながら、この8号を編みました。
なお、連載「からだと病気のABC」は、いつもよりも頁を拡大し、新型コロナウイルスの予防対策を中心にわかりやすくまとめましたので、どうぞご参考になさってください。
心がどことなく張り詰める毎日のなか、この一冊を開いて、ご自分の暮らしでゆるぎないもの、大切にしたいものに思いを馳せていただけたら幸せです。
『暮しの手帖』編集長 北川史織

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暮しの手帖社 今日の編集部