森のアトリエ雑記
第11回 室内でキャンプ気分を味わう
2026年01月28日

森のアトリエでのまかない飯には、スペシャルバージョンがあります。料理が豪華、という意味ではありません。スペシャルなのは、場所です。台所じゃなくて、屋外でつくって、屋外で食べるんです。木々に覆われた庭は、ほぼキャンプ場。焚き火をしながら、食べたり呑んだりしています。ですが、今は真冬。うーん、外でご飯つくって食べたいけれど、寒いしなあ……。ということで、キャンプでやるような料理を、あえて室内でつくって食べてみようじゃありませんか。“部屋キャン”です。
部屋キャンは、気分が大事。器は、アウトドア用のものを使います。シェラカップという小さな器があります。取っ手がついていて、金属でできているので、火にかけることもできます。おつまみはこれに入れると、ぐっとキャンプ気分が出ます。さらに焚き火メシでは、よく“メスティン”という調理道具を使います。アルミでできた、四角いハンゴウです。ご飯を炊けます。焼く、煮る、蒸す、大体のことはできます。いわゆる黒い筒状のハンゴウより浅いので、アウトドア用のガスコンロの上においても安定しやすいし、そのまま食器にもなります。今日は部屋キャンですので、台所にあるお鍋やフライパンは使いません。僕がやったことがあるメスティン料理をご紹介していきます。
『メスティンおでん』
これはねえ、びっくりしますよ。おでんを、メスティンで温めて食べる。以上です。おいおい、そんなもの、暮しの手帖の公式サイトに書くなよ、って話ですよね。まあ、落ち着いてください。これがもし普通の雪平鍋だったら、さすがに鍋から直接は食べないでしょう? いわゆる筒形のハンゴウだって、ご飯を直接食べないでしょう? なんらかの器に移すでしょう? ところがメスティンは、メスティンを火にかけて温めて、そのままメスティンを器としていただけるのです。これがキャンプらしくていいんです。メスティンおでん。当たり前ですが、味は、普通におでんです。
『メスティン炊飯』
そもそもの話として、この工程もご紹介しておきましょう。メスティンでのご飯の炊き方って、いろんな人がいろんなやり方でやってるらしいんですが、僕のやり方は、こうです。まずは、寒いので、1時間くらい浸水。そしたら火にかけるんですが、よく「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」って言いますよね。でも僕は、ずーっと「ちょろちょろ」です。はじめちょろちょろ、中もちょろちょろ。とにかくずーっと、ちょろちょろちょろ。ちなみに、台所の火は使わず、アウトドア用のガスコンロを使います。気分気分。弱火のまま30分くらいかな。途中、蒸気で蓋が持ち上がってきちゃうことがあるので、上に石を乗せて、おもりにします。「蓋とるな」とかも言いますけど、僕は、蓋、とります。中の様子を確認して「もう少し水気を飛ばそうかな」とか、「このままあと5分蒸らそう」とかを、目で見て判断します。このやり方で、いつもおいしく炊けていますよ。
『メスティンで、焼き鳥の親子丼』
メスティンでご飯が炊き上がったら、買ってきた焼き鳥(塩じゃなくてタレ)を串から抜いて、ご飯の上に並べます。溶いた卵を全体にかけて、蓋をして1分、弱火にかけます。蓋をとったら……、おおー。卵がいい感じに半分固まっています。七味をかけて、メスティン親子丼の完成です。台所ではない環境下で、いかに手間をかけずにつくるかが、アウトドア料理の醍醐味です。が、これをあえて室内でやるという遊び食い。これこそが、部屋キャンなのです。
『メスティンで、チーズリゾット』
これは、まだ1回しか作ったことないんですけどね、おいしかったのでご紹介。メスティンにお米0.5合と牛乳とコンソメを入れて、1時間浸水。6Pチーズを4P入れて、一緒に炊く。仕上げにドライバジルをひとふり。メスティンで、チーズリゾットです。おいしかったけど、これだとチーズ入れすぎかも。次回は1P減らそう。
『メスティンで、サバめし』
メスティンでお米を炊きます。このとき、水に加えて、白だしと、お酒も少々。シソを糸状に刻んで、炊けたご飯の上に撒きます。お惣菜コーナーで買ってきた焼きサバをほぐして、のっけます。ゴマをふります。シェラカップによそったら、醤油をちょろっとたらし、いただきます。口の中で、出汁で炊いたご飯と、張りのあるシソと、香ばしい焼きサバの身と皮が、グシャァ~……。もうね、バカかよっていうくらいうまかったです。次回は生姜も入れてみよう。
……キャンプ料理の力って、なんなのでしょう。やってることのひとつひとつは簡単なんですけど、びっくりするほどおいしいんですよね。「おいしい」に、「おもしろい」とか「かっこいい」とか、そういうのも重なってるような気もします。

さて、キャンプで楽しいのは、お料理だけではありません。焚き火を見ながらお酒を呑むのも、おつなものです。でも、今回は部屋キャン。室内ですから、当然焚き火はできません。そこで僕が使っているのが、木芯のロウソクです。一般的にロウソクの芯といえば、ヒモ状のものですよね。木芯のロウソクは、字の如く、芯が木なんです。アイスの棒のような、管楽器のリードのような、短い木片。これが、溶けたロウを吸い上げ、燃えます。このとき、小さく音がするんです。
パチ……、パチ……、パチパチ……、パチ……。
まるで、小さな焚き火。この火を見ていると、とても穏やかな気分になります。いろんなメーカーから発売されていて、いくつか試してみたんですけど、Standard Productsで売っていた缶入りのやつが、僕のお気に入りです。
小さな炎の音を聞きながら、ハイボールを呑る。グラスでじゃないですよ。キャンプらしく、ホーローのマグカップでね。つまみのミックスナッツは、シェラカップに。
「今度は焚き火の前で何を作ろうかな」
暮しの手帖のバックナンバーの料理記事を読みながら、春を思うのでした。
つづく
絵と文 小林賢太郎
小林賢太郎(こばやしけんたろう)
1973年生まれ。横浜市出身。多摩美術大学卒。脚本家・演出家。コントや演劇の舞台作品、映像作品、出版など。2016年からアトリエを森の中に構えて創作活動をしている。
