恋しいキッチン
第16回 海外暮らしで育った、エビとハーブたっぷり春巻き
2026年07月01日

海外に住んでいると、現地で知り合った日本人ではない友人や知人に、日本料理を作る機会が時々訪れます。さて何を作ろうかと考えると、これが意外に難しいのです。
日本を訪れる外国人観光客にも人気のすき焼きは、フランスやアメリカではうす切りのおいしい牛肉がなかなか見つからず、あっても少しぼそぼそしがちです。お寿司は刺身を人数分そろえるとなると高くつきますし、お好み焼きは人気がありそうでいて、フランス人にはとんかつソースがなぜか不評だったこともありました。天ぷらは大人気ですが、揚げたてのいちばんおいしいタイミングで出そうとすると、作る人は台所にかかりきりになります。
そんなフランスとアメリカに合計20年以上暮らしてきた中で、いちばん評判がよかったのが、エビの春巻きです。家族や日本人の友人たちにも人気で、月に一度くらいは作ってきました。多い時には30本ほど巻くこともあり、ざっと、今まで3000本以上は巻いてきたのではないかと思うと、われながら驚きます。揚げたそばからお皿が空になっていくので、作っている私はほとんど立ち食いのように味見するだけ。それでも、そのにぎやかさがうれしくて、また作りたくなるのです。
春巻きの皮はアジア系食材店で見つけやすく、エビやハーブもたいていの国で手に入ります。私が初めて作った時のレシピは、エビと青じその春巻きでした。ところがパリに住み始めた頃、青じそが手に入りにくくなりました。そこで思い出したのが、フランスでも人気のあるベトナム風揚げ春巻き『チャーゾー』です。あの春巻きに添えられるミントや香菜、バジルを、青じその代わりに使ってみたらどうだろう。そう思って試してみたところ、これが大正解でした。青じそがないから仕方なく、と思っていたはずなのに、むしろ香りの組み合わせを自由に楽しめる料理になったのです。

エビの甘味に、ミントの清涼感や青じその香り、小ねぎの青い風味がよく合います。今回は青じそ、ミント、小ねぎを使いましたが、香菜、バジル、えごま、三つ葉などを合わせてもおいしくできます。庭や冷蔵庫にあるハーブを見ながら、今日はどんな香りにしようかと考えるのも楽しい時間です。コツは、ハーブを最低2種類、できれば3種類以上、思いきってたっぷり入れること。少し多いかなと思うくらい巻くと、揚げたてをかじった時、パリッとした皮の中から、爽やかな香りがふわっと広がります。台所にあるものに合わせて味が少しずつ変わるので、毎回同じようでいて、いつも少し新鮮な味わいになります。
春巻きの皮は大小ありますが、どちらでもかまいません。皮の大きさに合わせて、具の量も調整してください。きっちり同じ大きさにしなくてもよいところも、この春巻きの気楽な魅力です。からしじょう油はもちろん、レモンやライムなどの果汁、ナムプラー、塩もよく合います。手に入るハーブで自由に作れる、私の海外暮らしから生まれ育った春巻きです。
包むものは、エビとハーブだけ。けれどその単純さが、食べる人の国や好みを軽々と越えていくのかもしれません。パリッと割れた瞬間に立ち上る香りを、ぜひ楽しんでみてくださいね!
文・写真 カヒミ カリィ

エビとハーブたっぷり春巻き
材料(10本分)
・春巻きの皮(20cm角)…10枚
・エビ(カラつき)…正味250〜300g
・青じそ…20枚
・ミント…適量
・小ねぎ…5〜6本
・日本酒…少々
・片栗粉、塩、コショー…各適量
・小麦粉…大サジ1杯
・揚げ油…適量
・しょう油、酢、辛子、ナムプラー、塩、レモンなど…適宜

作り方
1 エビはカラと背ワタを取り、ボールに入れます。片栗粉大サジ1杯、塩小サジ1/2杯、水大サジ1杯を加えてよく揉み込みます。汚れが出て水がにごってきたら、流水で洗い流し、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。
◎エビの水気が残っていると、揚げている途中で皮が破れやすくなります。
2 エビをボールに入れ、日本酒、塩少々、コショーをやや多めに振り、軽くなじませます。
3 青じそは軸を切ります。小ねぎは長さ7〜8cmに切ります。ミントは茎が細くないものは葉を摘んでおきます。
◎ハーブは少ないと香りが弱くなるので、多めに入れるのがおすすめです。
4 春巻きの皮をとめるための「のり」を作ります。小さめの容器に小麦粉を入れ、水大サジ1〜1と1/2杯を少しずつ加え、よく混ぜます。
5 2に片栗粉少々をまぶします。
◎揚げる直前に、エビに片栗粉をうすくまとわせることで、エビの水分が逃げにくくなり、ぷりっと仕上がります。
6 春巻きの皮を角が手前にくるように置きます。中心から手前角の半分ほどのところに、青じそ、ミント、小ねぎ、エビを1/10量ずつ順にのせます。

7 手前からひと巻きし、左右を内側に折りたたみます。左右の折り目と巻き終わりにのりをしっかり塗り、空気を入れすぎないように、押しつぶさないように巻いてとめます。
◎春巻きはきつく巻きすぎず、でも中に大きな空気の隙間ができないように包みます。左右の折り返し部分にものりを塗ると、油が入りにくく、きれいに揚がります。

8 揚げ油を180℃に熱します。菜箸を入れた時に、勢いよく細かい泡が出るくらいがめやすです。春巻きを一度にたくさん入れず、鍋の中で泳がせるようにして、1分半〜2分揚げます。皮がきつね色になり、エビに火が通ったら取り出し、油をきります。
◎エビは火の通りが早いので、低温で長く揚げず、180℃の油で短時間で仕上げます。皮がカリッとし、ハーブの香りが爽やかです!
9 熱いうちにいただきます。しょう油に酢を少し加え、辛子を添えるのがおすすめです。ナムプラーや塩、レモンもよく合います。
カヒミ カリィ
ミュージシャン、文筆家、フォトグラファー。1968年生まれ。
フランスで約8年、アメリカで約13年暮らし、2025年春に日本へ帰国。
『暮しの手帖』の連載「すてきなあなたに」にも寄稿。
Instagram:https://www.instagram.com/kahimikarie_official/
