森のアトリエ雑記
第13回 立てこもって、ハウスキーピング三昧
2026年03月25日

あのう、あれですかね。この連載を読んでいる人には、小林は森に楽しい小屋を建てて、なんだか好きなことして遊んでる、というふうに思われてるんでしょうかね。まあ、ハズレてもいないんですが……。もちろん、やってることのメインは、お仕事である創作活動です。舞台や映像作品の構想を練り、脚本を書き、絵コンテを描き……。とて、いくら原稿用紙の上でドラマが繰り広げられていても、僕自身はただ机に向かってチクチクと働いているだけですので、ここに書くようなエピソードにはならないのですよ。というわけで今回も、アトリエで過ごす、お仕事以外の時間の話。
創作に集中したいとき、アトリエに自らカンヅメになることがあります。スーパーやドラッグストアであれこれ買い込み、
「これが書き上がるまで、立てこもるぞ!」
という気分で。社会から断絶された森での創作。誰にも邪魔されない、至福の時間です。
脚本家って、勤務時間が決まっていません。朝の目覚めとともに働き始めていいし、寝る直前まで働いていてもいい。なんなら、寝ないで働いたっていい。ですが、友人のミュージシャンから働きすぎを心配され、ときには頭を違うことに使うことを勧められました。確かに自覚があったので、ちょっとは創作のペースを考えるようになりました。締め切り前、森に立てこもったとしても、キリのいいところで筆を置き、仕事から意識を離す時間をつくるようになりました。
「よし、たくさん書けたから、今から僕は、何をしてもいいんだぞ」
こんな、うっすらとした興奮。ふっふっふ。プロジェクターで映画を観てもいい。大好きな手品の練習をしてもいい。まだ開けてないLEGOに手を出してもいい。お気に入りの岡本太郎のグラスに、シングルモルトウイスキーを注いでもいい。真夜中なのに、ダイナミックに部屋の模様替えをしてもいい。次の次の次の作品の構想を練ってもいい。なんだったら、仕事と関係ない作品をつくってもいい。
こんなとき、意外と楽しいのが、身の回りの環境を整える雑務。ハウスキーピングです。ずっと気になってたことを、ひとつひとつゆっくり解決していきます。
前からやりたかった、机の裏のケーブルの整理。スピーカー、モニター、DVDプレーヤー、照明など。コンセントからいったん全部抜いて、一本一本交通整理して……ビシッ! よし、すっきり! コードまわりってホコリも溜まりますから、ついでにささっと雑巾掛けも。よし、気持ちがいい。
次。
メダカまわり。水槽の中に濾過装置が設置してあったんですが、こいつがどうも美しくない。水槽の内側に吸盤で固定されるタイプのやつで、ガラスと装置の隙間にコケが生えて、掃除しにくい。そこで、外付けの濾過装置をちょっと前に買ってあったんです。いざ、交換。ガラス全体に程よくついているコケをお掃除。育ちすぎて増えすぎた水草を剪定。自動餌やり機の電池も替えました。よし、気持ちがいい。水槽は、いわば生きた箱庭。メダカたちはみんな元気で、無事に冬も越せそうです。
次。
最近買った、スコッチ・ブライトのフロアワイパー(伸縮タイプ)を組み立ててみる。雑巾を取り付けてモップのようにお掃除する道具を使ったこともあったんですけど、その雑巾を絞ると、ホコリや髪の毛でシンクが詰まるんですよね。なので、使い捨てシートのタイプに切り替えることにしたんです。フロアワイパーは各社から出てるんですけど、僕の体格には、他社のやつだと短かく感じていたんですよ。スコッチ・ブライトのはちょっと棒が長くて、腰を曲げずにさっさかできて、快適でした。信頼の3M社。デザインもかわいいし。アトリエの住み込みお掃除ロボット、ルンバの“ルンさん”が担当していないところを、さっさかさっさか。おお~。取れる取れる。よし、気持ちがいい。
次。
本棚の本を背の順に並べる。僕、そんなに読書家というわけではないんですが、アトリエの蔵書は結構多いんです。数えたら、ざっと千冊。まあ、ほとんどが資料だったり、いただいたものだったり。たまに引っ張り出してきて、何かを調べたりしているうちに、いつの間にかぐちゃぐちゃになってきます。本の整理って、ジャンル別が一番いいに決まってます。だって、探しやすいもの。でも僕、全ての蔵書を背の順に並べてみたりします。これがパズルをやってるみたいで、まあ楽しいこと。コツは、久々に目に入った面白そうな本を、うっかり開かないこと。読み始めちゃうと、なかなかパズルは完成しません。ちょっとビールでも呑みつつ、ダラダラやってると、いつのまにかビシーッと整頓される本たち。よし、気持ちがいい。
こういうことです。こういうことの積み重ねが、空間を快適にしていくのです。僕、「生活感がない」ってたまに言われるんですけど、何をおっしゃる。作品の裏側では、こんなに生活感のある時間を過ごしております。
ひとしきりハウスキーピングを楽しんだら。本日の営業終了! 徹夜はせず、一回ちゃんと寝て、早朝、また執筆を始めます。目覚めたらその瞬間に仕事場。このフットワークが、立てこもりの威力。さあ、今日も一日、がんばるぞ。
つづく
絵と文 小林賢太郎
小林賢太郎(こばやしけんたろう)
1973年生まれ。横浜市出身。多摩美術大学卒。脚本家・演出家。コントや演劇の舞台作品、映像作品、出版など。2016年からアトリエを森の中に構えて創作活動をしている。
