1. ホーム
  2. > Blog手帖通信

武田砂鉄 『今日拾った言葉たち』発売のお知らせ

2022年09月16日

kotobatop

ライターの武田砂鉄さんが、
世の中に溢れる言葉にふと立ち止まり、
その裏に隠れた本質に根気よく迫る人気連載、ついに待望の書籍化です。

2016年からはじまった「今日拾った言葉たち」は、
日々起こる出来事が、新聞、テレビ、ラジオ、書籍、雑誌、SNSなどで
さまざまに語られるなかで、
武田さんが出合った気になる「言葉」を取り上げ、考察をしているものです。
人々が発する言葉の意味や、
そこに映る「今」を見つめ続けてきました。

kotoba58

武田さんの心の網にかかった言葉はじつに幅広く、
モリカケ、コロナ、オリンピック、戦争といった誰もが知る問題をはじめ、
政治、教育、スポーツ、芸能、文化といったジャンルの報道から、
はたまた、書店員さんや主婦がこぼした一言も。
さらには、武田さんを支える背もたれとなるようなあたたかい言葉たちも登場します。

kotoba116

本書は、2016~2022年上半期分に、
大幅に加筆修正した、より分かりやすい解説と、
書き下ろしコラム、総論を収録。
近年、私たちを取り巻く状況下では、
どんなことが起きて、何が変わって、何が変わっていないのか。
今、私たちの生きるこの世の中をあらためて見渡し、
社会の構造がより見えてくる一冊となっています。
読み終える頃にはきっと、
自分とは無関係に思えるどんな社会問題も、
結局は自分とつながっているのだ、と実感していただけるはずです。

「あとがき」では、
安倍晋三元首相銃撃事件について触れられています。どうぞお見逃しなく。(担当:村上)

『今日拾った言葉たち』特設サイト

最新刊『新装保存版 これで よゆうの晩ごはん』発売のお知らせです

2022年09月02日

yoyuu_hyoushi

仕事に家事に子育てに……誰もがとかく毎日忙しいものです。
特に、子育てしながら仕事に就いていると、毎日食事づくりはひと苦労。
「ごはんをもっと手早く、おいしく、楽しい心持ちで作りたい。けれど、忙しい日々に追われていると、心のよゆうをなくしてしまう……」
この本の始まりは、子育て中の編集担当者のこうした気持ちからでした。
「そんな悩みを少しでも軽くしたいという思いから、料理家の上田淳子さんに、かんたんな“下ごしらえ”をしておくだけで、夕方にはあっという間に仕上がるお料理のレシピを教えていただいたのです」

yoyuu26

「今日は何を作ろうか」と考え、仕事帰りに買い物をして、家に着いたら材料を切るところから始める。毎日それではとっても大変! ほかにもやることはたくさん押し寄せてくるのに、心のよゆうなど持てるはずもありませんね。
そんなとき、味方になってくれるのが、この本でご紹介する「かんたん下ごしらえ」です。
朝10分ほど、ひと手間かけておけば、夕方家に帰ったらパパっと手早く仕上がります。
その方法と工夫がたっぷり詰まったこの一冊。5人の料理家の方々が、それぞれご自身の暮らしのなかで工夫されているレシピばかり。メインのおかずからもうひと皿の副菜、あると便利な常備菜まで、献立まるごと活用していただける秀逸なレシピが満載です!
この本は、2018年に刊行しご好評をいただいた別冊『これで よゆうの晩ごはん』を、書籍化したものです。詳しくは、暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。(担当:宇津木)

yoyuu36

平和が「あたりまえ」であるうちに

2022年07月25日

c5_019_01_top

平和が「あたりまえ」であるうちに
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、帰宅の道すがら「あれ食べたいなあ」と思い浮かべるのは、冷ややっこ、きゅうりとワカメの酢の物、キンと冷えた夏野菜の揚げびたし……。暑い日が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
今号の表紙画は、絵本作家の荒井良二さんによる「『あたりまえ』のような一日」。思えば、荒井さんに絵を依頼したのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2週間ほど経った頃で、私たちは「戦争と平和」を考える特集を組みたいと手探りしていました。
「『私たちは平和を選びたい、そして幸せに暮らしたい』という思いが伝わるような絵を描いていただけませんか?」
そんな依頼状をお送りし、お会いして2時間ばかりおしゃべりしたのですが、荒井さんは「うーん、平和を描くってむずかしいなあ」とおっしゃいました。そうですよね、むずかしいですよね……。
やがて届いた下絵は、画面中央にアコーディオンを弾く妖精のような木が立ち、梢のなかには、ランプやソファ、お茶のセットなど、「暮らし」を彷彿させる愛らしいモノがこまごまと描かれていました。木の外側の世界には、踊る人びとや活気のある市場、遠くには港の風景。ああ、なんだか明るくて楽しくて幸せそうだ。
この絵に荒井さんが寄せてくださった言葉をご紹介します。

あたりまえのように朝が来て、日が昇り鳥がさえずり、
あたりまえのように空を見て、あたりまえのように食卓にごはんが並ぶ。
あたりまえのように仕事や学校や遊びにでかけ、
あたりまえのように誰かと話し、あたりまえのように笑う。
あたりまえのように紛争や戦争のニュースを見て、
あたりまえのようにお茶を飲む。この「あたりまえさ」は
「どこ」から来るのだろう、誰が作ったのだろうと
ぼんやり考えながら家路につく。そして、あたりまえに夜が来る。

「平和」というのは、平和であり続ける限り、まさに空気のように「あたりまえ」に思えるのかもしれません。いま、私たちが「平和」や「戦争」を考えるとき、先の戦争を懐古的に振り返るのではなく、何か身に迫ったものとして捉えるようになったのは、ウクライナへの侵攻があって以来、「平和はあたりまえじゃないのだよ」と耳元でささやかれているからなのだろうと思います。
平和はあたりまえではないから、勝ち取らなければならない。弱い国はいじめられる。他国から攻められたら、いったいどうするんだ。
そんな声がしだいに大きくなって、熟考しないまま、まっとうな議論のないまま、なし崩し的に変えられていくのかもしれない。恐ろしいと思います。

今号では、いまの状況を見つめながら、私たちなりに「戦争と平和」を考えた特集を編みました。「小林まさるさんの七勝八敗人生」と「戦争を語り継ぐために」の2本です。なんらむずかしい記事ではありませんし、同時に、何か明快な答えが書かれているわけでもありません。
心を落ち着けて考えてみたい人へ。まわりの人たちに「どう考える?」と問いかけて、話をしてみたい人へ。これらの記事が、ある「よすが」となることを願っています。
私をはじめ、ほとんどの編集部員は親の代から戦争を知らない世代であり、迷ったときに「よすが」とするのは、創刊者で初代編集長の花森安治の言葉です。1969年の『暮しの手帖』より、花森の文章をご紹介します。

この日本という〈くに〉を守るためにはどうしたらいいかという議論ばかりさかんだが、そのまえに、それなら、なぜこの〈くに〉を守らねばならないのかという、そのことが、考えからとばされてしまっている。
そんなことはわかりきったことだというだろう。
そうだろうか。
ためしに、ここで誰かが「なぜ〈くに〉を守らねばならないのか」と質問したら、はたしてなん人が、これに明確に答えることができるだろうか。

私たちは国のために生きるのではなく、私たちの暮らしのために国があるんですよね。今号も、一人ひとりのかけがえのない暮らしに、小さな灯りをともせたらと願って編みました。どうか、お役に立てますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

※荒井良二さんが世田谷美術館の収蔵品から作品を選び、その魅力を紹介する展示が8月6日(土)より開かれます。花森安治の絵も展示されますので、ぜひお運びください。
「荒井良二のアールぶるっと! こんなに楽しい世田谷美術館の収蔵品」

別冊『おしゃれと暮らし』発売中です。

2022年06月14日

oshare_hyoushi

以前、木工作家さんを取材した時のことです。
木を膝で挟むようにして作業するため、ジーンズの膝の内側がすぐに擦り切れてしまうといいます。
彼女はそこに布を当て、様々な色の余り糸で縫い付けていました。
配色を楽しむかのように、自由奔放に布の上を走らせた糸は、とてもおしゃれに思えました。

『暮しの手帖』創刊編集長の花森安治は、1946年の『スタイルブック』の巻頭言で、こう述べています。

oshare4-5

oshare6-7

おしゃれ、といえば何か、さしせまった毎日の暮しとは係りのない、浮いた遊びごとか、ひまがあってお金があって、というひとたちでなければ出来ないことのように考えられてはいないでしょうか。
そんな風なおしゃれも、たしかにこの世の中にはあるかも知れない。
けれども、そんな、お金さえかければ美しくなれるとか、ひまがないから、おしゃれが出来ないとか、
毎日の暮しから浮き上がってしまった遊びごとなら、
私たちは、おしゃれのことなど考えることは要らないと思います。
ほんとのおしゃれとは、そんなものではなかった筈です。
まじめに自分の暮しを考えてみるひとなら、誰だって、
もう少し愉しく、もう少し美しく暮したいと思うに違いありません。
より良いもの、より美しいもの求めるための切ないほどの工夫、
それを私たちは、正しい意味の、おしゃれだと言いたいのです。
それこそ、私たちの明日の世界を作る力だと言いたいのです。
 
別冊『おしゃれと暮らし』を制作するにあたり、この言葉を大切にするように心掛けました。
作家の小川糸さん、刺しゅう作家の神津はづきさん、スタイリストの伊藤まさこさんなどから、
暮らしから生まれた「おしゃれ」の工夫を教わったり、
いま、クローゼットにある服で新鮮なコーディネートができる配色を考えたり、
誰もができるおしゃれのヒントを集めてみました。
ただ、ここにあるのはあくまでもヒントです。
暮らしの必要や生活を楽しくしたい、という気持ちに真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返す、
その過程を楽しむ姿勢こそが「おしゃれ」なのかもしれません。

別冊編集長 古庄 修

oshare8-9

目次はこちらをご覧ください。
ご購入はお近くの書店、もしくはオンラインストアで。

今日をほがらかに生きる

2022年05月25日

c5_018_01_top

今日をほがらかに生きる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

最近、instagramを見ていると、軒下の巣に寄り添うツバメのきょうだいたちの写真が次々に投稿されています。添えられたコメントからも、「季節の風物詩」を愛おしむ気持ちが伝わってきて、なんだか心がほのぼのします。こんなとき、私が決まって開くのは、学生時代から使っている『ハンディ版 入門歳時記』。燕、乙鳥、つばくろ、つばくらめ、初燕、飛燕……。例句として、こんな句が並んでいます。

夕燕われにはあすのあてはなき 一茶

町空のつばくらめのみ新しや 中村草田男

一句目に、いまのウクライナの人びとの状況を思わず重ねてしまったのは、私だけでしょうか。二句目は、若々しいツバメが颯爽と空をゆくさまが目に浮かぶようです。
さてさて、さわやかな季節の到来。最新号の表紙は、ツバメのまなざしでどこか異国の街を眺めるような、初夏の風のきらめきが感じられる絵です。広島在住の画家、nakabanさんに描き下ろしていただきました。

c5_018_01_2_top

巻頭記事「わたしの手帖」で取材にお伺いしたのは、浪曲師の玉川奈々福さん。みなさんは、演芸場やYouTubeなどで浪曲を聴いたことはありますか? 私は両親(戦後生まれ)が聴いていた記憶もなく、以前は「はて、浪曲とは? 講談とはどう違うのかな」という認識でした。あれはちょうど2年前、6号(2020年の初夏号)の取材のときのこと。「はじめてのお楽しみ」という連載で浪曲がテーマとなり、浅草の「火曜亭」で玉川奈々福さんの浪曲を初めて聴いたところ、すぐさま虜になってしまったのです。
まず、登場人物たちはたいてい、熱血漢で情に厚く、おっちょこちょいだったり涙もろかったりと、やたら人間くさい。物語は基本的に、「人と人のつながりっていいものだな」と思えるような人情噺。そして、語りのあいまに挟まれる朗々とした歌声の素晴らしさといったら。胸にどすんと響き、涙が出て、くよくよしていた心もすーっと晴れていく……これはもう、くせになります。
一方で、浪曲はその「心を強く摑む技」ゆえに、第二次世界大戦中は戦意高揚に利用されたという歴史があります。戦後、日本人が経済的に豊かになり、人のつながりが薄れていくと、反比例して浪曲人気は落ち込んでいきました。いっときは、もはや懐古趣味、過去の遺物のようにも捉えられていた浪曲の世界に、なぜ、奈々福さんは飛び込んでいったのだろう? お話を聞いてみたいと思いました。
じつは奈々福さんはもともと、ある老舗出版社の編集者。鶴見俊輔さんや井上ひさしさんほか、錚々たる編者たちの力を得て日本文学全集を編んだ経歴もあり、「言葉」に対して豊かな感性をお持ちです。インタビューは、きらっと光る言葉がどんどん飛んできては、「なるほどなあ」と深くうなずくような、なんとも贅沢なひとときでした。
なかでも胸に残ったのが、「今日をほがらかに生きる」という言葉。いまは「不安の時代」とも言われ、私たちはつい、「○○すれば幸せになる」とか「○○しなければ将来は不安ばかり」といった惹句や宣伝文句に心をからめとられがちです。しかしながら、今日という一日にしっかりと向き合い、本音で誰かと語らって、おいしいごはんを味わい、満足をおぼえながら眠りにつく……たとえば、そんな自分なりの「幸せの指針」を持つことが、あんがい大事なのではないか。そう思うのです。
それは、社会の課題や、自分の暮らし以外のことには関心を持たなくていいとか、そういった意味合いではけっしてありません。自分の手を動かして築いた暮らしは、社会にしっかりと張った根っこ、ある揺るぎない価値観になる。そこから社会を見つめれば、この満ち足りた暮らしをどうしたら持続させていけるか、おのずと深く考えられるものではないでしょうか。
もうすぐ、選挙の季節がやってきます。何かを選ぶのは簡単ではないけれど、考え、語りあい、私たち一人ひとりの「こう生きていきたい」という願いを一票にたくす。いつだって、誰もが無関心ではいられないアクションです。
今号も、旬の素材を生かした料理、あの人におすそ分けしたいカステラ、夏服にぴったりの刺繍のブローチ、動物の福祉を考える記事など、暮らしのなかの「幸せ」や「大切なこと」のいろいろを編み、ぎゅっと詰め込んだ一冊をお届けします。どうか、お役に立てますように。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

いまもいつかは思い出になる

2022年03月25日

c5_017_01_top

いまもいつかは思い出になる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

ここ東京では、あちこちで桜が花開く様子が見られるようになりました。ああ、いよいよ春がやってきたのだなあとうれしくなり、木々を見上げながら散歩するのが小さな楽しみになっています。いかがお過ごしでしょうか。
今号の表紙画は、フランスの画家、ポール・コックスさんによる「ずっと」。世界がコロナ禍に見舞われて2年が過ぎ、鬱々とした気持ちになりがちなときだからこそ、「ぶらっと散歩に出て、心を解放させよう」というテーマで絵を描いていただけないかとお願いしました。
やがて届いた絵には、手をつなぐ二人と、続いていく道。ポールさんが寄せてくださった言葉より、一部をご紹介します。
「愛する人との散歩を想い、ぼくはこれを描きました。絵の中の二人は、道の向こうに広がる世界を探検にいくのか、それとも家に戻るところなのか。そのどちらとも言えるでしょう。この穏やかな循環がずっとつづくことを祈って、この絵を贈ります」
二人の手が描く「M」の文字にも、さまざまな意味が込められていますが、それは「今号の表紙画」の頁をじっくりお読みいただけたらうれしいです。

c5_017_01_2_watashi

表紙の右端には、毎号たいていは巻頭記事のタイトルをキャッチコピーとして立てています。今号は「いまもいつかは思い出になる」。ふるさとの家族と長らく会えずにいたり、家庭や職場で以前とは異なる苦労があったりと、誰もが少なからず苦しみを抱きながら暮らしているいま、小さくとも、胸に灯りをともすような言葉を掲げられたらと思いました。
この記事で取材したのは、エッセイストの吉本由美さん。ふるさとの熊本市から高校卒業後に上京し、セツ・モードセミナーで学んだり、映画雑誌『スクリーン』の編集者となったり、インテリアスタイリストの草分けとして活躍したり。東京で40年余り、つねに心の赴くまま、「行き当たりばったり」に暮らしてきたという吉本さんは、11年前、両親の介護をきっかけに熊本に戻ることを決めます。
2日間にわたる取材では、ふるさとと言えども様変わりしている熊本で、どんなふうに友人をつくり、楽しみを見つけて暮らしていらっしゃるのか……といったお話をお伺いしました。そんな話題のなかで、吉本さんがふと漏らした「人生は懐古趣味がいいのよ。思い出すって、楽しいことだから」という言葉に、はっとしたのです。
「懐古趣味」というと、なんだか後ろ向きにも思えますが、私たちはおそらく、過去の小さな出来事を胸に反芻させて温かな気持ちになったり、誰かがかけてくれた言葉を励みにしたりして、「いま」を懸命に生きているのではないでしょうか。そして、そんな「いま」も、いつかは思い出になる。思い出すことが、人生の楽しみであり、喜びであるというのは、年齢を重ねるごとに実感することなのかもしれません。

今号は「ふるさと」をキーワードにした記事が、そのほか2本あります。ひとつは、「わたしの好きな ふるさとのお菓子」。8名の方たちに、味わうとほっとして素の自分に戻れる、郷里のお菓子について教えていただきました。
あとひとつは、「小林夫妻のピノ・ノワール この土地と生きる」。故郷である長野県原村に戻り、土地を耕し、ワインをつくることで、自然を守りながら暮らす。そんな小林夫妻の生き方について、編集部員が綴りました。
ご存じのように、遠い空の下、ふるさとを追われ、日常を奪われて、死におびえながら生きる人たちがいます。なんてことのない暮らしが、いかにかけがえのないものなのか、「平和」とはなんて脆いものなのか……みながそう実感し、不安を覚えるなかで、「平和を守るとはいったいどんなことか」、さまざまな議論が持ち上がっています。
議論ができるうちは、つまり、みなが自分の考えを口に出し、たとえ決着がつかなかったとしても、話ができるうちはいいでしょう。しかし、はやばやとある一つの意見にまとめあげられ、「違う」と考える人が声を上げられなくなる、それはとてもこわいことです。
「わたし」がどんな暮らしを送っていきたいか、どうしたら幸せに生きられるのか。たとえ自分に子どもがいなかったとしても、いまを生きる子どもたちにどんな未来を手渡していきたいか。自分の足もとから、社会を、この世界を見つめてじっくりと考えて議論していくことは、けっして「平和ボケ」ではないと私は思います。
「大義」よりも「暮らし」を礎にして、本当の民主主義とは何なのか、ぶれずに考える。それは77年前の過ちをもとに、私たち『暮しの手帖』が創刊してから伝え続けてきたことで、これからも変わらずに伝えていきたいと考えています。
なんだかカタくなりましたが、みなさまの日々が、穏やかで、春の喜びに満ちたものとなりますように。どうか、心身健やかにお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

『昔話の扉をひらこう』の書評が掲載されました(朝日新聞・3/19)

2022年03月22日

20220322

3/19(土)朝日新聞朝刊に、
小澤俊夫 著 『昔話の扉をひらこう』の書評『ことばは「音」 語ってあげて』
(吉川一樹さん評)が掲載されました。  

***
子どもの頃の温かい記憶を呼び覚ますとともに、未来へのメッセージに満ちている。
……2人の息子との「ことば」をめぐる鼎談も収録。音楽家の次男・小沢健二さんと意気投合したのは、ことばはまず「音」であること。視覚・文字情報に偏る現代にあらがう一冊だ。(一部引用)
***

昔話研究の第一人者である著者は、「子どもは社会の末っ子。今、不安の多い時だからこそ、暮らしのなかで、生の声でお話をしあう時間を大切にしてほしい」と願います。
人と人をつなげる昔話の力、声の力、語りの秘密等、お話を例に交えながらその豊かな世界をご案内します。

◎詳しくは、こちらをご覧ください。

野菜が主役のベストレシピ集ができました。

2022年03月16日

haruyasai_top

暮しの手帖別冊『春野菜 夏野菜 決定版レシピ』が3月16日に発売となりました。
この本は、季節の野菜のおいしさを生かしたレシピを集めた一冊です。

これまで『暮しの手帖』は、たくさんの料理を掲載してきました。
そのなかに眠っている、格別おいしいレシピを丁寧に掘り起こして厳選したベストレシピ集です。

haruyasai_08-09

haruyasai_48-49

ふきのとうや竹の子、柔らかな新玉ねぎや春キャベツなど、
まさに今だからこそ味わえる春野菜を使った料理、
トマトやきゅうり、なす、ゴーヤーやピーマンなど、パリッとみずみずしい夏野菜の料理。
そして、手早くぱぱっと作れるシンプルな野菜料理や
肉や魚介と野菜の取り合わせが絶妙な料理など、いろいろなテーマに沿ってレシピを選びました。

穏やかとは言えない日常が続いても、家庭でおいしい料理を食べたら、
少しだけ、ほっとできますよね。
ご馳走でなくてよいのですから、季節の野菜の味わいを、
シンプルでおいしい料理を楽しみましょう。
旬の食材って、そのままの味を生かすのが一番ですから。
くわしくはこちらのページをご覧ください。(担当:宇津木)

haruyasai_68-69

haruyasai_82-83

『昔話の扉をひらこう』増刷のお知らせです!

2022年02月16日

20220216-1

昔話研究の第一人者、小澤俊夫さんの著書『昔話の扉をひらこう』が、たくさんの方に好評いただき、この度、増刷の運びとなりました。

この本は、「不安なことの多い時代だからこそ、暮らしのなかで、生の声で語り合う時間を大切にしてほしい」と願いを込めて、小澤俊夫さんが昔話に見つけた大切なメッセージや、今伝えたい想いを、力強くもやさしい語り口でまとめた一冊です。
70年以上昔話の研究をつづける小澤さんは、昔話のほんとうの姿は、「語られている時間のあいだにだけ存在し、語り終えれば消えてしまう」と話します。
そして、「これから世の中へ出かけて行く子どもたちに、どうぞあなたの声でお話を聴かせてやって下さい」と願うのです。声は、目に見えないからこそ深く心に残り、子どもが安心して生きて行くことを支える力がある、と。

本を手にとってくださった方々からは、こんな声が届いています。
「著者の、子どもへのまなざしがあたたかい。読んでいると、やさしい心が伝わってくる」
「さっそく子どもに昔話を語ってみたら、案外よく聴いてくれた」
「昔話は、人の心を癒したり、コミュニケーションを育む力があることを知った」などなど。

後半には、とっておきの昔話を17話収録。子どもとおとなが一緒にたのしめます。
また、巻末の鼎談「子どもとことば」(小澤俊夫×小澤淳×小沢健二)も、読みごたえたっぷりと大好評! バイリンガルの子どもたちがことばを獲得していくエピソードや、「ことば」について、親子で語り合った貴重な記録です。

どうぞ扉をひらいて、そのゆたかな世界を感じてみてください。

◎詳しくは、暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。
◎「暮しの手帖」16号では、昔話研究者の小澤俊夫さんと作家の中脇初枝さんとの対談「昔話が教えてくれること」を特集しています。ぜひ、あわせてご覧いただけたらうれしいです。(担当:佐藤)

20220216-2

裏表紙には、きつねが一匹、ひっそりと。秋山花さんが描いてくださいました。扉の絵の栞付き。
ブックデザインはL’espaceの若山嘉代子さん、印刷は長野県松本市に工場のある藤原印刷さんです。

暮らしもひとつのアートになる

2022年01月25日

c5_016_01_top

暮らしもひとつのアートになる
――編集長より、最新号発売のご挨拶

このところ、6時くらいに目覚めると東の空が明るく、気持ちまで晴れやかになります。寒さ厳しい日々ですが、確実に、季節は春に向かっているんですね。いかがお過ごしでしょうか。
今号の表紙を目にされたら、懐かしいような、切ないような気持ちで、胸がきゅっとなるかもしれません。絵本作家の酒井駒子さんによる、「いちご」。幼い子が、家族で食べようと洗って置いてあったいちごを、無心に食べています。自分も、わが子も、こんな時期があったのだなあ。いや、もしかしたら、いまちょうどこんな情景が身近な方もいらっしゃるかもしれませんね。
編集部員のなかにも働く親は多く、感染拡大によって、休園となる保育園も増えていると聞きます。先の見えない日々が続くと、心身がじわっと疲れてくるものですが、毎日のおだやかな暮らしが、私たちを支える「確かなもの」であってほしい。今号は、そんな思いを込めて編みました。

巻頭の記事は、写真家の茂木綾子さんの歩みを紹介する、「結んで、開いて、旅をする」。思えば、この記事の取材で淡路島を訪ねたのは、昨年の9月半ばのことでした。
神戸の舞子駅で電車を降りて高速バスに乗り換え、少し走ると、透明感のある海がひろがる景色が続きます。ああ、きれいだなあ。茂木さんは13年前、スイスから家族4人で淡路島に移住し、廃校を改装して「ノマド村」を開きました。ノマド、すなわち「遊牧民」に自身をなぞらえる茂木さんは、ここを地域の人びととアートを分かち合う場にしようと考えたのです。
ところで、コロナ禍となってから、「芸術は不要不急か」という議論があり、私たちはこれまでになく、アートが自分の人生にもたらす力について考えることとなりました。自分のことを振り返れば、自宅に一人こもって仕事をしていた時期、手もとにある絵や写真集を観ることで、心を遠くへ飛ばすことができました。気持ちがざわざわと落ち着かないときは、バッハの『無伴奏チェロ組曲』をずっとかけていたことも思い出します。11号の取材で、南桂子さんの銅版画をたっぷり観られたときのうれしさといったら。アートはけっして不要不急ではなく、やっぱり必要なんだと実感したと言えばいいでしょうか。
今回の記事を編むにあたり、私が茂木さんの話に耳を傾けながら考えたのは、「アートが地域にもたらすものって何だろう」ということでした。いっとき、バブルの頃までは、日本各地に立派な美術館などの「箱物」がつくられましたが、そこに「魂」がないと、つまり、いまを見つめてアートを生み出す人、よりよいかたちで提示できる人がいないと、それはただの「箱」になってしまいます。
茂木さんと夫のヴェルナーさんが築いた「ノマド村」は、立派な「箱物」ではなく、周囲の人たちと土壁を塗るなどしてつくり、手の跡や体温を感じさせる「居場所」でした。ここで暮らしながら、アートを分かち合うって、どういうことなのか。その答えは、「結んで、開いて、旅をする」というタイトルに込めましたので、ぜひ、お読みください。

そのほか今号は、「『手前味噌』は楽しい」「ハーブの香る暮らし」「アイロンがけのおさらい」「こてらみやさんのDIY」など、暮らしのなかで手を動かす楽しみをたくさん提案しています。
ともすれば、暮らしは繰り返すうちに、マンネリ化して澱んでしまったりするものですが、そこに新たな風を吹き込み、まっさらな目で見つめて、自分の手を動かして楽しんでみる。それができたなら、暮らしもひとつのアートになるのではないかと思うのです。
みなさまの大切な暮らしのなかで、この一冊が少しでも心を潤し、お役に立つものでありますように。どうかお身体を大切にお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

昔話研究の第一人者、小澤俊夫 著『昔話の扉をひらこう』いよいよ発売!

2022年01月19日

mukashibanashi220119_1_

この本は、昔話の研究を70年以上続けられる小澤俊夫さんが、
「不安なことの多い今だからこそ、毎日の暮らしのなかで、生の声でお話をしあう時間を大切にしてほしい」と願い、昔話に秘められる大切なことを初めての方にもわかりやすく紡いだ一冊です。
わたしたちの祖先が何世代にもわたって語りついできた昔話は、名もない庶民みんなで作ってきた、かけがえのない伝承文化財です。つましい暮らしのなかわたしたちの民族がどんなことを思い、生きてきたのか、お話の形でしみこんでいて、語りかけてくれるのです。

mukashibanashi220119_2

今回の本を作るにあたって、たくさんの時間を小澤さんと話し合いました。手にとってくださった方に、すぐにお話に親しんでもらえるよう、「小さなお話集」も収録しています。
打ち合わせの時に小澤さんが、「このお話、おもしろいんだよ」と、小さな昔話を語ってくださることもあったのですが、そのあたたかい声と素朴で味わい深いお話は、忙しさでバタバタしていたわたしの心をすーっと癒して、やわらかい気持ちにしてくれました。昔話の不思議な力を感じた体験でした。

91歳の小澤俊夫さんが、これまでどんなふうに歩まれてきたか、そこで見つけたメッセージも編んでいます。2人の息子さんとの鼎談(長男 小澤淳さん、次男 小沢健二さん)も収録。
大切なことをぎゅっと詰めて、森ときつねの表紙カバーで包みました。装画は秋山花さん、ブックデザインはレスパースの若山嘉代子さんです。
どうぞ、お手にとってご覧いただけるとうれしいです。(担当:佐藤)

◎詳しくは暮しの手帖社オンラインストアをご覧ください。
◎小澤俊夫さんのあたたかい声は、ラジオ「昔話へのご招待」(FM FUKUOKA)で聴くことができます。

暮しの手帖別冊『お金の手帖』が発売になりました

2021年11月26日

e_2105_01

お金と暮らしは切っても切り離せないもの。
とても身近な存在なのに、どうしてお金との付き合いは、
こんなに難しいのでしょうか?

「将来が心配で、お金を使うのがこわい」
「お金についてわからないこと、迷うことが多すぎる」
「お金のことを語るのは卑しいという気持ちがあり、家族と話し合えない」
事前に行ったお金についてのアンケートでは、こんな声が並びました。

e_2105_03

そこで私たちは、この本を
お金についての不安な気持ちに寄り添うものにしよう、と決めました。
「なんのためにいくら貯めたら安心なのか、よくわからない」
「家計簿をつけるべきですか? 続ける自信がありません」
「税金が高過ぎる。吸い取られている感じで、つらいです」
みなさんから届いた正直な声を、家計や経済の専門家に投げかけ、
そのやりとりから一冊を作りました。
気になるところだけを拾い読みできる、
Q&A形式にもこだわりました。

e_2105_04

家計の整え方だけでなく、日本経済が抱える課題についても、
かわいいイラストとやさしい文章で、わかりやすく解説しています。
今の日本の状況がわかれば、家計の中で必要な備えが、
自然に浮かび上がってくるからです。

e_2105_02

前編は「経済を通じて社会を知ろう」と題し、
年金、少子化、貧困、働き方、税金など、今の日本を知るための
重要なトピックスを揃えました。

後編は「家計の不安を取りのぞこう」と題し、
基本的な家計の整え方から、住宅費用、教育費、老後資金、
保険、投資に至るまで、充実の内容。
特別ふろくとして、ズボラさんでも記入できる
家計の「年間決算シート」「定年後の収入見える化シート」もついています。

また「新しい窓を開ける」というインタビュー集では、
従来のお金の価値にとらわれない
ヤマザキマリさん、松村圭一郎さん、植本一子さん、伊藤洋志さんが、
家計・経済についての新しい視点を語ります。

読むうちに、「今も未来も、きっと大丈夫」。
そんなふうに気持ちが変わっていくはずですよ。(担当:田島)


暮しの手帖社 今日の編集部