森のアトリエ雑記
第18回 レゴまみれ
2026年08月26日

みなさんお元気でしょうか。僕はといえば、相変わらず舞台や映画をつくる日々です。
そんな忙しい中でも、少しは趣味というか、遊んでいる(ように見える)時間だってあります。とて、外で遊ぶには暑すぎる。ということで、森のアトリエ、インドア遊びのひとつ、今回はレゴブロックのお話。レゴ。フィギュアがかわいい、デンマークの、踏むと痛い、あのプラスチックのおもちゃです。
森のアトリエは3階建てなのですが、その3階に山ほどあるんです。レゴが。簞笥みたいなプラケースに、がっさり。でかいジップロックみたいな衣類圧縮袋にギュウ詰めのレゴも、土嚢(どのう)のように積み上がっております。
あまりにもたくさんあるので、整理を始めました。無印良品だのニトリだので透明な収納ケースを買ってきて、色で分けて、種類で分けて。ピシッと引き出しにおさまったカラフルなブロックたちによる、美しい壁面。どこに何があるか全部わかる! 実に気持ちがいいです。
舞台や映像の美術セットを、レゴで考えることがあります。アトリエのミニチュアをつくったこともあります。自分のテレビ番組のタイトルロゴを立体でつくったこともありました。こんなふうに、レゴは遊びのようで、仕事。仕事のようで、遊び。僕にとって、身近な存在なのです。
トイザらスなんかに行くと、カラフルなレゴセットの箱が並んでいますね。完成品の写真に、赤くて四角いLEGOのロゴ。人間の物欲を直接攻撃してくる憎いやつです。レゴといえば、言わずと知れたブロックのおもちゃですが、その対象年齢は子どもに限りません。組み立てるのがとても難しい、大人向けのセットもたくさん発売されています。これまで、ずいぶんいろんなセットを楽しんできましたが、僕が買った最大のものは、『スター・ウォーズ』シリーズのスター・デストロイヤーという宇宙船。いくつかのスケールで販売されたらしいんですが、僕がつくったのは、枕サイズの、巨大なチーズケーキって感じ。時間かかったなあ。完成してわかる、あの達成感。あの邪魔さ。
レゴブロックが、あの独特の凹凸によるジョイントの仕組みで特許をとったのは、1958年だそうです。そんなに歴史のあるおもちゃなんですね。そしてなんと、その特許が、もう切れているんだそうです。だから、同じ仕組みの、同じ素材の、同じ形や大きさの、そんなレゴっぽいけどレゴじゃないブロックがたくさん発売されているんです。しかも、かなりの市場規模です。インターネットで「レゴ互換」と検索すると、けっこう出てきます。
試しにひとつ買ってみました。宇宙飛行士のキットです。デザイン、設計、とてもよくできていました。このレゴブロックそっくりなピースひとつひとつを、どうやってつくったんだろうか。本物のレゴから型取りして金型にしたんだろうか。でも、やはりレゴっぽいけどレゴではないんです。組み心地(外し心地)が違うのです。というわけで、こいつは僕のレゴ収納には加わりません。
やはり、レゴはレゴ。オリジナルには、オリジナルの品質があるものです。例えば、パーツどうしを組み合わせるためのちいさな突起。この上に「LEGO」のロゴが書いてあります。ちょっとだけ出っぱったエンボスの文字です。厚みにして0.14ミリ。パーツの組み合わせによっては、この突起が当たる面が発生し、ブロックとブロックとの間に、わずかな隙間ができてしまいます。これを回避するために作られたのが、突起の中が凹んでいるパーツです。複雑な組み合わせでデザインされているレゴのセットは、この0.14ミリの存在を、きちんと計算してつくられているんです。「本物には本物の輝きがある」みたいな言葉がありますが、それは雰囲気だけの話ではないのです。ブランドを長く育ててきたオリジナルだからこその、細かな配慮。そういった物理的な良さがあるのです。

さて、コント作家小林賢太郎が、自分のコントの特許についてどう思っているかというと……、あんまり興味がないです。もちろん、出版社さんとか、制作チームとか、人間の皆さんが僕の著作物を守ってくれていることには、本当に感謝しています。
でも、僕個人の見解としては、誰かが僕のコントを勝手に模倣して上演したとしても、とくになんとも思いません。いや、逆に嬉しいかもしれません。だって、真似したくなるくらい魅力を感じてくれたってことですからね。
静かな森のアトリエに響く、ザクザク、パチパチ、というレゴの音。徐々に形になっていく、プラスチックのオブジェ。今、レゴで1/6スケールの人体を作っています。人間の体が持つ曲面を、いかに的確に表現できるか。なかなか研究しがいのあるモチーフです。締め切りはもうけずに、仕事の合間にやってます。そのうち完成したら、僕の舞台か映画のどこかに登場するかもしれません。
つづく
絵と文 小林賢太郎
小林賢太郎(こばやしけんたろう)
1973年生まれ。横浜市出身。多摩美術大学卒。脚本家・演出家。コントや演劇の舞台作品、映像作品、出版など。2016年からアトリエを森の中に構えて創作活動をしている。
