ものをいつくしむ

2024年06月11日

ものをいつくしむ
(30号「椅子の張り替えをやってよう」)

5年ほど前でしょうか。社屋の引っ越しの際、「捨てるもの」に分類されたダイニングチェアを1脚もらいました。座面の汚れが気になりながらも時が経ってしまい、ふと、自分で好きな布に張り替えられたらいいな……という思いから、今回の企画が生まれました。
「椅子張りの店 anocono」を営む職人の須田直樹さんに指導を依頼すると、快く引き受けていただき、「ものが古くなったら捨てるのではなく、直して使う文化がもっと浸透してほしい」という思いを話してくださいました。お店には、親子代々使われてきた椅子の張り替えの依頼も多く、それぞれの家族の思い出とともに時が刻まれていることを実感するそうです。

今回は、椅子の座面の張り替えを、漫画家で金継ぎ師の堀道広さんに体験していただきました。堀さんは、割れた陶磁器を漆で修復する金継ぎ師として、ワークショップを主催されています。壊れたものを修繕してよみがえらせているという共通点があるお二人。撮影では初対面なのに息がピッタリ。どなたにもわかりやすいよう、写真を多く掲載し、丁寧に解説しました。堀さんの漫画ルポもありますよ!

私も試作で3脚ほど張り替えました。はじめはタッカーを打つのもおっかなびっくりだったのが、だんだんに慣れてきて、3脚目ではすっかり自信を持ったほどです。装いが新しくなった椅子は、可愛らしくて、なんだかうれしそうに見えました。
椅子を張り替えたいな……というとき、ぜひご活用ください。(担当:佐藤)


暮しの手帖社 今日の編集部