『小さなしあわせ』は、『すてきなあなたに』です。

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挿画は初代編集長・花森安治によるもの

『とと姉ちゃん』では、常子がごく普通の暮らしの一コマを綴った「小さなしあわせ」という記事と本が登場しました。これは、大橋鎭子が40年以上にわたって『暮しの手帖』に綴り続けたエッセイ「すてきなあなたに」が元になっています。1969年にはじまり、47年を経た現在も続く人気連載。単行本は、累計135万部を超え、社を代表するベストセラーとなっているのです。

あなたがすてきだから、
すてきなあなただから、
でなければつい見落してしまいそうな、
ささやかな、
それでいて心にしみてくる、
いくつかのことがわかっていただける、
そんな頁です
(連載がスタートした2世紀1号目次より)

「すてきなあなたに」で綴られているのは、小さな心配り、おいしいお菓子や料理、旅先で見かけた美しいもの、偶然耳にした心温まるお話など、ほんのちょっとしたこと。さりげない小さなエピソードも、暮らしを大切に思う大橋の心を通して綴られると、温かみを帯びて、すてきになるのでした。読む人の隣に座って話しかけているような、そんなちょっとお知らせするような雰囲気です。
 「いままでに、いろいろな方にお目にかかりました。そして、教えていただいたことが、かずかずあります。いろんなところにも出かけました、そのとき知ったことも、たくさんあります。困ってしまって、なんとか自分で工夫したことも、ありました。失敗に失敗をかさねては、お友だちの智恵を借りて、なんとか切り抜けたこともありました。
 結局、なんにもわからなかったわたくしが、今日まで歩いてこられたのは、こうして身につけたもののおかげでした。どんな小さなことでも、わたくしにとっては、とても大切なことだったのです」
 これは、「すてきなあなたに」が1冊の単行本になったときの、あとがきの一節です。大橋は、いろいろな人と出会って、心に深く沁み込んでいったこと、自分ひとりが知っていてはもったいない、ぜひ読者の方にもお知らせしたいと思ったことを、少しずつメモしていきました。そのメモに加え、作家、海外在住のジャーナリスト、洋画家、歌手、評論家、彫刻家といったさまざまな職業の方々や友人、知人から題材をいただくことにしました。ひとりで書いたのでは考えや経験が偏ってしまうと思ったからでした。
1994年、「人々との出会いや日々の暮らしを美しい文体で綴ったエッセイ『すてきなあなたに』は、読者に静かな共感と深い感動を呼び起こした」として大橋は、東京都文化賞を受賞。その後も連載をかさね、大橋は、261冊の『暮しの手帖』に「すてきなあなたに」を綴りました。
現在も「すてきなあなたに」は、すてきな執筆者の方々によって支えられ、多くの読者に愛され続けています。(担当:村上)

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箱入りで上製、表紙はクロス箔押し、全頁2色刷の本。どの頁にも花森の挿画が入る。(本仕様は現在1巻と6巻のみ)

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単行本『[ポケット版]すてきなあなたに』01~10
2015年、持ち運びしやすい軽装版として、「ポケット版」を刊行


暮しの手帖社 今日の編集部