子どものあそびに魅せられ、描き続けた人

2019年04月12日

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●子どものあそびに魅せられ、描き続けた人
(99号「かこさとしさんと子どものあそび」)

「棒が一本あったとさ 葉っぱかな 葉っぱじゃないよ かえるだよ~」

みなさん、この絵描き歌をご存知ですか? 
歌を口ずさみながら描いていくと、かわいい「コックさん」が完成するこの絵描き歌、懐かしく感じられる方も多いのではないでしょうか。
子どものあそびは不思議です。同じあそびでも、口伝えで広がる中で、少しずつ変化していく……。
そんな子どものあそびの創造性に注目し、50年余りの歳月をかけて、絵描きあそびや石けり、鬼ごっこなどの「伝承あそび」を集めていたのは、「だるまちゃん」シリーズや『からすのパンやさん』などで知られる、絵本作家のかこさとしさんです。
集めたあそびの数は、なんと、およそ29万点!
昨年、惜しくも92年の生涯を閉じたかこさんですが、子どもたちのあそびを収集し続けた背景、そして、絵本を通じてどのようなことを伝えたいと考えていらっしゃったのか、その根底にある思いを知りたいというところから、この企画はスタートしました。
取材を通して浮かび上がってきたのは、子どもたちと同じ目線に立ってあそび、そのあそびを通して子どもを知ろうとする姿です。
「大人になっても、子どもの心を持ち続けた人」だと、娘の鈴木万里さんはいいます。
鈴木さんによると、晩年のかこさんは「草花あそび」をまとめておきたい、とよく口にしていたそうです。
「身近にある道端の草花だったり、アリやちょうちょうだったり、それが小さな子どもにとってはあそび相手であり、五感を鍛えてくれるもの」だから。
そんな思いを少しでもお伝えしたく、この企画の最後の頁では、かこさんがこれまでに描いた「草花あそび」の一部をご紹介しています。
この頁の制作中、息子と一緒に、ささ舟を作って川に浮かべてみました。そのときの子どものきらきらした表情といったら……! 
春のあたたかな陽気のなか、気になった草花あそびをみなさまにも試していただけたなら、うれしいです。(担当:井田)

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暮しの手帖社 今日の編集部