みどりのはらっぱでの出来事は……

2020年11月27日

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みどりのはらっぱでの出来事は……
(9号特別付録 絵本「しろいみつばち」)

「とても なかのよい
のばなと みつばちが
いつものように
おはなしを していました」

物語は、いつの季節とも特定できないある日のはらっぱからはじまります。
じっと咲く赤いのばなの悩みを聞いたみつばちは、のばなが喜んでくれる答えを探しに他の花畑へ飛び立って行きます。

作者のきくちちきさんは初期のお話の構想を、硬質な線が立つ色鉛筆のタッチで描いていました。
それを目にした大のみつばち好きの私は、とても驚いたのです。自然界で生きているみつばちの生態とはかけ離れたところで、物語の主人公としてこんなみつばちを描く方がいるんだと。
そんな構想の出会いから半年以上の時を経て、『暮しの手帖』の中で繰り広げる絵本の世界を大切にと、きくちさんはとても熱心に、ていねいに話し合いを重ねながら、今回の絵本の形を生み出しました。
本誌と自然に溶け込むように、お話の時間軸は右から左へと進行、縦書きの文字に作り変えることに。そして、色鉛筆でも十分に魅力的な絵でしたが、きくちさんの希望で水彩絵の具ですべての場面を描き下ろすことになりました。
夏の終わりに届いた原画を目にした時、「なんて薄い和紙の上に、様々な生きものたちの輪郭や表情が描き込まれているのだろう!」と、びっくりしました。
はらっぱで起こる出来事を、あの色鉛筆の世界から、水色、緑、黄色、赤と鮮やかな水彩画の色彩と、それとは対照的な墨の濃淡の場面構成で、優しく、はかなく表現されていたのです。
お話自体に大きな変化は加えなかったものの、描き方によって心象に響くはらっぱの空気や光、音は一段と輝きを増していました。
私は読むたびになぜ、タイトルが「しろいみつばち」なの? 優しさってなんだろう? と考えるようになりました。
結末はここではお伝えしませんが、みなさんはどんな風に読まれるでしょうか? 感想をたくさん伺ってみたいです。

今号でしか手にとっていただくこができない絵本。
ぜひ、多くの方々に繰り返し見て、読んでいただけたら嬉しいなと思っています。(担当 上野)

●銀座蔦屋書店さんのトークイベントにご参加ください!
『暮しの手帖』5世紀9号発売記念として、
「しろいみつばち」の著者・きくちちきさん(絵本作家)、絵本ナビ編集長の磯崎園子さん、そして本誌編集長・北川によるオンライン・トークイベントが銀座蔦屋書店主催で開催されます。
温かい夕べの会にしたいと思います。

日時:2020年12月1日(火) 20:30〜22:00
テーマ:『きくちちきさんからの贈り物-絵本「しろいみつばち」』

お申し込み方法は、下記のリンクにお進みください。
https://store.tsite.jp/ginza/event/magazine/17177-1551441116.html

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暮しの手帖社 今日の編集部