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台所の窓を開けて、社会とつながる

2021年06月09日

台所の窓を開けて、社会とつながる
(12号「枝元なほみの食べる、生きる、考える」)

作りやすく、おいしいレシピで、多くのファンに支持される料理家・枝元なほみさん。温かな笑顔と、ユーモア溢れる柔らかなお話しぶりも魅力的で、お目にかかるたび、いつも明るいパワーを分けてくださいます。
枝元さんは、近年、従来の料理家としての仕事のみならず、生産者と消費者をつなぐ農業支援や、生活に困窮する方々を支える活動にも力を入れてきました。「読者や視聴者に料理のレシピを届けるのも大切。でも、もっと普遍的な方法でも社会とつながりたくて」。台所の中にとどまらない活動に込める思いを、そう語ります。
「枝元なほみの食べる、生きる、考える」は、そんな枝元さんがナビゲーターを務める新連載。毎号、枝元さんが気になる人とともに、暮らしにつながるさまざまな課題について語り合う対談企画です。
第1回のゲストにお迎えしたのは、枝元さんが東日本大震災のあと、大きな影響を受けたという環境運動家の辻信一さん。辻さんは、いまや誰もが知る「スローライフ」という言葉と考え方を、およそ20年前の日本に持ち込み、紹介した人です。「もっと速く」「もっとたくさん」「もっと効率的に」──私たちの社会を支配する
「もっともっと」の価値観の起源をひも解きながら、これからの経済や暮らしのあり方について話し合いました。(担当:島崎)

目にもうるわしいお菓子はいかがでしょう

2021年06月08日

目にもうるわしいお菓子はいかがでしょう
(12号「お菓子と包みの物語」)

この一年、宅配便を使う機会が増えたと思うのですが、
お菓子を取り寄せて楽しんだり、贈ったりした方も
多かったのではないでしょうか。
お菓子をいただいたときや選ぶときには、中身だけでなく、
包みにも工夫があると、ぐっとくるものですよね。
お菓子の包みには隅々まで意匠がこらされているものも多く、開ける前から楽しめます。

今号では、そんな包みも素晴らしい
とっておきのお菓子にまつわる「物語」を、
目利きのお二人に寄せていただきました。

和菓子を選んでくださったのは、料理家の長尾智子さん。
旅先で出合ったという箱根〈ちもと〉の湯もちは、
緑の包み紙に赤い掛け紐が粋です。
中身はふんわりと柔らかな餅菓子で、
撮影の後にいただいてみたところ、
今までに味わったことのない不思議な食感と味わいに驚きました。
箱根にこんな和菓子があったとは……。
次に訪れる際にはぜひ買い求めたい、と思ったものです。

洋菓子の選者は、本誌連載「また旅。」でおなじみの編集者、岡本仁さんです。
美術にも明るい岡本さんが挙げてくださったのは、
西荻窪〈こけし屋〉のレーズンパイ。
ラム酒漬けのレーズンとりんごの蜜煮が入ったうすいパイは、
お酒をたしなむ方への贈りものにもよさそうです。
画家の鈴木信太郎の絵があしらわれた、シックな深緑色の包装紙は、
じっと眺めていたくなる魅力があります。
10枚入りは、帽子をかぶった女性の絵が
ちょうどよい位置にくるように包んでくれますよ。

いずれも、目も舌も楽しませてくれる選り抜きのお菓子たちです。
お二人の物語とともに、どうぞお楽しみください。
贈りもののご参考にも、ぜひ。(担当:佐々木)

楽しく、手軽に、たんぱく質をとるコツを身につけましょう

2021年06月07日

楽しく、手軽に、たんぱく質をとるコツを身につけましょう
(12号「40歳からの、たんぱく質のとり方」)

年齢を重ねても、丈夫な足腰で元気に暮らすためには「筋肉が大事」と、いま盛んに言われています。
では、どうすれば筋肉を維持できるのでしょう?
「日々の食事で、たんぱく質を多く含む食品を、きちんととることが大事なんですよ」
と話すのは、栄養士で料理研究家の今泉久美さん。
といっても、毎日ステーキを食べる、とかではありません。
今回の特集では、1日で何をどれだけ食べたらいいのか、ざっくりとしためやすやコツを教えていただきました。
意外と簡単におぼえることができて、くり返すうちに、なんだかゲームのように楽しめてきます。
たとえば買い物のときに、
「最近、豚肉ばかりを使っていたから、鶏肉や牛肉を買おう」とか、
「今日は魚介類が足りていないし、最近、エビを食べていないから、エビを使った主菜にしよう」というふうに、
とりたい食材がおのずと決まって、献立に迷うことがなくなりますよ。

今回は今泉さんが実際によく作るという、
肉、魚介類、玉子、乳製品、大豆製品をきちんととれて、手軽にできる主菜や主食を12品と、
たんぱく質が足りないときにちょこちょこっと補うアイデアを教えていただきました。

今泉さんは、
「毎日の食事は、立派じゃなくていいの。家にあるもので10分くらいで作るんですよ」とおっしゃいます。
そうした飾らない食生活を多くの方に知ってほしいと、自らの食事を毎日SNSでも発信されています。
そこには「こんなふうにたんぱく質をとるんだ」とか、
「朝からしっかり食べるんだな」「サバ缶が主役、という日があってもいいんだ」と、発見がいっぱい。
今泉さんの日々の食事も、ぜひ参考にしてみてくださいね。(担当:平田)

●料理研究家・今泉久美 オフィシャルブログ https://ameblo.jp/imaizumi-kumi/
●Instagram https://www.instagram.com/kumi_imaizumi0115/

偶然に身を任せて、自分だけのパッチワークを

2021年06月04日

偶然に身を任せて、自分だけのパッチワークを
(12号「白いパッチワークで」)

ページをめくると、風に揺れるカーテンが目にとびこんできます。
白い布だけを使った、真っ白いパッチワークのさわやかなカーテンです。
これは、布作家の磯部祥子さんが手掛けたもので、
白だけなのに、有機的であたたかみのある、不思議な魅力を感じます。

磯部さんのパッチワークの作り方は、少し変わっています。
小さな布を縫い合わせていく方法ではなく、
大きな布を「裁っては縫う」をくり返して、
どんどん小さくしていく方法です。
最初はむずかしく感じるかもしれませんが、
すぐに「あ、そういうことなんだ」と
納得できることと思います。

手を動かすにつれ、どんどん模様が複雑になっていきます。
途中で手をとめても、もっと細かいパッチワークにしてもいい。
小さくなりすぎてしまったら、布をつぎ足してもいい。
「失敗」ということはありませんから、
好きなように進めてみてくださいね。

できあがったパッチワークは、
そのまま目隠しやカーテンにしてもいいですし、
今回はコースターやティッシュカバーなどの
手軽な小物の作り方も紹介しています。
プレゼントにしても喜ばれることまちがいないでしょう。

掲載したカーテンは、磯部さんが過去に手掛けた作品です。
磯部さんは、大きな大きな1枚布から作ったそうですが、
小さなものをつぎ足して作ってみてもよさそうです。

初夏のインテリアにぴったりな、
自分だけの白いパッチワークを作ってみませんか。(担当:小林)

バトンを渡していくために

2021年06月03日

バトンを渡していくために
(12号「多摩川が教えてくれること」)

「この人のこと、知ってますか?」

ある日、写真家の平野太呂さんに教えていただいたのが、
自然環境コンサルタントであり、NPO法人「おさかなポストの会」の
創設者でもある、山崎充哲(みつあき)さんのことでした。

山崎さんは、多摩川の生態系を守るために、
外来種の魚など、川の生き物を保護する活動を行うほか、
「いい子を育てる、いい川であってほしい」との願いから、
多摩川の生き物を学校に持ち込んで、授業を行ってきた方です。

平野さんにとって多摩川は、小さい頃から釣りをしたり、
追いかけっこをしたりして、親しんできた場所でした。
でも、山崎さんの本を読んでみると、そこには、
多摩川の魅力だけでなく、水質汚染や外来種の問題など、
知らないことばかりが書かれている。
長年にわたって、多摩川を守る活動に心血を注いできた山崎さんに、
会ってみたいと感じたのだと話してくれました。

取材の依頼をした時、山崎さんは病床に伏せていました。
それでも活動は絶やさず、講演会や学校での授業を続けていて、
私たちも短い時間でしたが、お話を伺うことができました。

命を繋いでいく大切さを、切々と語ってくださった山崎さん。
5月6日に、残念ながら永眠されましたが、
その活動のバトンは、娘の愛柚香(あゆか)さんへと受け継がれています。

この記事が、知っているようで知らない身近な自然に目を向け、
関心を持つきっかけになってくれたらと願っています。(担当:井田)

片桐はいりさんの「鼻歌」レパートリー

2021年06月02日

片桐はいりさんの「鼻歌」レパートリー
(12号「わたしの大好きな音楽 オールタイムベスト10」)

いろいろな分野でご活躍の方に、
「あなたの大好きな音楽を10曲教えてください」と投げかけ、
それぞれの曲に抱く思いを語っていただくこの連載。
これまで、フジコ・ヘミングさん、群ようこさん、藤井隆さん、
松重豊さん、八代亜紀さんなどなど、
バラエティに富んだ方々が誌面を飾ってくださいました。
今号では、強烈な存在感とやわらかい雰囲気が同居するという、
唯一無二の個性を持つ俳優、片桐はいりさんが登場します。
「音楽はそれほど詳しくないけど、
鼻歌のレパートリーなら10曲出せると思いますよ」
とのお返事をいただいたとき、
「えっ、鼻歌で10曲もあるんですか!?」と
のけぞってしまいました。
「片桐さん、私生活も鼻歌まじりで、
ゴキゲンに暮らしているんだなあ……」と
想像していましたが、取材は
「鼻歌どころではない時期もあったんです」
という片桐さんの意外な一言から始まりました。
だからこそ、久しぶりに鼻歌を歌っている自分に気づいたとき、
とっても驚いて、とっても嬉しかったのだそう。
「最近嬉しくて鼻歌を歌ったときは?」と尋ねてみると、
「コロナ禍でずっと会えていない友人が、
おいしいものを玄関先まで届けてくれたこと。
最高級に気分のいいときに出るシナトラの替え歌
「♪とってもいいんじゃない♪」が思わず口をついて出ました(笑)」
片桐さんには
「こんな気分のときは薬師丸ひろこ、
こんなときはモータウン」といったような
自分なりの鼻歌プレイリストがあるそう。
みなさんも、自分自身の鼻歌レパートリーを思い出しながら、
読んでみてくださいね。(担当:田島)

旬の野菜をたっぷりと

2021年06月01日

旬の野菜をたっぷりと
(12号「初夏の和えもの」)

「和えもの」といえば、いんげんやほうれん草のごま和えなど、定番の小鉢料理を思い浮かべる方が多いでしょうか。
けれど、野菜や乾物を使った和食料理を得意とする前沢リカさんが作るのは、もっと新鮮で、ダイナミック、まるでサラダのように、野菜をたっぷりといただける和えものなのです。
本号では、新にんじんや新ごぼう、うど、新れんこんなど、時季を逃さず食べたい野菜をふんだんに使った7品をご紹介します。味つけは、白みそと米みその配合が決め手のみそ衣、カラ炒りした白ごまの風味豊かなごま酢、さっぱりとしたあと口が食欲をそそる梅肉、ピリリとアクセントを効かせた辛子しょう油の4種。
ポイントは、食材から出る水分をよく拭き取り、水っぽくならないように注意すること。それさえ守れば、簡単にできるのが嬉しいところです。蒸し蒸しとするこの季節、みずみずしい野菜をもりもりと食べて、元気に夏本番を迎えたいものですね。(担当:島崎)

なつかしいあの町へ

2021年05月31日

なつかしいあの町へ
(12号「牧野伊三夫のスケッチ旅 すがおの飛騨高山」)

時折、昔住んでいた場所や、旅行で訪れた土地での思い出がふと蘇り、
無性にそこへ行きたくなることがあります。

みなさんにも、故郷ではないけれど、
ときどき心に浮かぶ場所があるでしょうか。

この特集は、画家の牧野伊三夫さんが、
ご自分にとってのなつかしい町、岐阜県高山市を久しぶりに訪ね、
絵を交えて綴ってくださいました。

牧野さんが高山に通い始めたのは、約10年前。
きっかけは、家具メーカー「飛騨産業」の広報誌『飛騨』を作ることでしたが、
通ううちに、高山の歴史や、人びとのまっすぐな気質に、
心惹かれるようになったと言います。

印象的だったのは、取材でなじみの店を訪れた時、
まるで昔からの友人に会うように、牧野さんが柔らかな表情を浮かべ、
「お久しぶりですね」「お元気でしたか」と声をかけていたことです。
そして、お店の方々も、時に冗談を交えながら朗らかに言葉を交わします。
初めて訪れた私にも同じように接してくださり、
話しているうちに、いつの間にか心がほぐれていきました。
あぁ、高山の人々のこういった飾らない、あたたかな人柄に
牧野さんは惹かれ、通い続けているのだと実感したひとときでした。

牧野さんのまなざしを通して、ぜひ、観光旅行とはひと味違う、
「すがおの飛騨高山」の旅をお楽しみください。(担当:井田)

所要時間5分から! 気楽にできる “小掃除”を

2021年05月28日

所要時間5分から! 気楽にできる “小掃除”を
(12号「いまこそ、小掃除」)

昨年末の大掃除から、あっという間に半年が過ぎました。
家で過ごす時間が増え、
以前よりあちこちの汚れが目につきやすくなったと感じる方も
多いのではないでしょうか。
私もキッチンに立つたび、「そろそろ換気扇の掃除を……」と
気になりながら、なかなか重い腰が上がらなかった一人です。

「いまの時季は、“小掃除”をするのにぴったり」と、
ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんは言います。
暖かいから水を使う掃除が苦にならないこと、
油汚れが落ちやすく、掃除後の乾きも早いことなどがその理由です。
また、このタイミングで“小掃除”をしておくと、
カビ予防や、年末の大掃除の軽減などのメリットもあるのです。

今回ご紹介するのは、
重曹、クエン酸、過炭酸ナトリウム、アルコール、石けんの5つの洗剤で、
キッチンと浴室を掃除する方法です。
「重曹やクエン酸は使ったことがあるけれど、あまり汚れが落ちなかった」
そんな経験のある方にこそ、試していただきたいと思います。
ポイントは、洗剤を「効果的な温度、濃度」で使用すること。
これを守るだけで、汚れ落ちがぐんと良くなります。

換気扇をはじめ、排水口や冷蔵庫の自動製氷機、浴室の鏡や風呂釜など、
場所別に “小掃除”の手順をご紹介しています。
5分、10分で取りかかれるものもありますので、
すき間時間を利用して、気楽に“小掃除”をしていただけたらと思います。(担当:田村)

おうちカットの時間

2021年05月27日

おうちカットの時間
(12号「気持ち晴れ晴れ ヘアカット」)

昨年、初めて母の髪を切りました。
襟足が伸びて気になっていたので、少し整える程度ですが、
ハサミの入れ方で印象が変わるので責任重大です。
失敗しないかな? と心配しながらも
ハサミを持つとワクワクした気持ちがふくらんできます。
お風呂場で椅子に座り、ゴミ袋をかぶってスタンバイする母と
大笑いしながら、たのしいひと時を過ごしました。
仕上がりも意外に気に入ってくれて、よろこんでもらえました。

この特集は、そんな経験をもとに発想し、
自宅で少しだけ髪を切って整える方法を、
美容師の塩田勝樹(かづき)さんに教えていただきました。
失敗しにくいコツは、
「髪を小分けにして、少しずつ、少しずつ、切ること」です。
「少しくらい曲がっても、切りすぎたとしても、
切ってあげたり、切ってもらったりする関係がすてきだと思います。
その時間を大切に、たのしんでもらえたらうれしいです」
との塩田さんのメッセージが胸に残りました。

晴れた日には、お庭やベランダでのカットも気持ちよさそうですね。
髪が整うと、心も元気になります。
ぜひ、ご家族やご友人とチャレンジしてみて下さい。(担当:佐藤)

初夏を楽しむ! のどごしつるり、初夏の麺

2021年05月26日

初夏を楽しむ! のどごしつるり、初夏の麺
(12号「冷やし麺、はじめました。」)

そろそろ、冷たい麺料理が食べたくなりませんか?
「冷やし中華、はじめました」という短冊を中華料理店の店頭で目にすると、
「ああ、夏が来たんだな」と思い、お腹が鳴ります。

「昨年の自粛期間には、いろんな麺料理を作りました。
家にある材料を使って、少しのコツと工夫で、
ひと味ちがう冷やし麺ができますよ」と、料理家の堤さんは言います。
家族で食卓を囲むことが多くなったからこそ生まれた、
豊富なメニューを教えてくださいました。

ご紹介するのは、
堤さんの「ご家庭の味」がベースとなった冷やし中華をはじめ、
トマトやきゅりなどの夏野菜や、
ひき肉や豚小間切れ肉など、おなじみの食材を使ったレシピです。
ナムプラーやコチュジャンなどをアクセントにして、
ベトナム風、韓国風などを味わえるのも楽しいですよ。

休日の昼食にはもちろん、具材にボリュームもあって、夕食にもぴったり!
おいしくて、楽しい気分になる冷たい麺料理を
ぜひ、お楽しみください。(担当:山崎)

孤独を糧に生きた人

2021年04月08日

孤独を糧に生きた人
(11号「銅版画家・南 桂子 夜中にとびたつ小鳥のように」)

こんにちは、編集長の北川です。
年に数回は足を運ぶ、好きな美術館がいくつかありますが、日本橋蛎殻町にある「ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション」もそのひとつです。
ここは、世界的な銅版画家である、故浜口陽三さんの個人美術館。黒いベルベットのような背景に、ぽっと浮かび上がる真っ赤な「さくらんぼ」ほか、その作品を観れば、「ああ、知っている」と思う方も多いことでしょう。
浜口さんの作品に惹かれて通ううちに、同じ展示室に飾られた数点の作品が、妙に心にひっかかるようになりました。少女、小鳥、木々、お城、蝶……。精緻な線で描かれた世界は、ひと口で言えば「メルヘン」なのですが、静けさ、孤独感、寂寥感がみなぎっていて、ちょっと「こわい」くらいです。
解説を読むと、これらは浜口さんの妻、故南桂子さんの作品とあります。1950年代からパリで暮らし、80年代にはサンフランシスコへ移住して、晩年近くまで海外を中心に活躍したふたり。夫婦であっても、そして同じ銅版画でも、まったく違っている作品。
いったい、南桂子さんとはどんな人だったのだろう? この時代に日本を離れて40年以上、作家としてどんな人生を歩んだのだろう? 
興味を抱き、学芸員の方にお話を伺ったのが、今回の記事を編むきっかけでした。

取材をはじめたのは、昨年の4月上旬、東京に緊急事態宣言が出される直前のこと。まず拝見したのは、南さんが遺した夥しい数のアクセサリーですが、どれも変わっていて、少しの毒を感じさせ、そして美しい。これらを選んだ南さんという人はきっと、自分というものを知っていて、人と同じように無難に生きることを好まなかったに違いない。そう想像しました。
さらに、詩人の谷川俊太郎さんほか、交流のあった4名の方々にお話をお伺いすると、南さんの人となりが少しずつ浮き彫りになっていく……。それはまるで、いくつもの版を重ね刷りして、亡き人の像を結ぶかのごとく作業でした。
いま、南さんの作品を観ると、この状況下で誰もが抱える「孤独」を静かに分かち合えるような、不思議な穏やかさが胸をあたためるようです。もしかしたらそれは、孤独を糧にした人だからこそたどり着けた、ほんとうの心の平安なのかもしれません。
記事でご紹介した5点の作品と表紙の作品は、下記の展覧会にて、前期・後期に分けて展示されます。原画のすばらしさを、ぜひ味わっていただけたらと思います。(担当:北川)

◎南桂子生誕110年記念「蝶の行方」展
会期:2021年4月10日(土)〜8月9日(月・振休)
※前期(4月10日〜6月6日)、後期(6月12日〜8月9日)で作品の入れ替えをします。
場所:ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション(東京都中央区日本橋蛎殻町1-35-7)
https://www.yamasa.com/musee/


暮しの手帖社 今日の編集部