「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

本屋さん_サラダ記念日
『新装版 サラダ記念日』 俵 万智 著 
河出書房新社 1,000円+税  装釘 菊地信義

 この代表的な一首で知られる本書『サラダ記念日』(1987年)とは、およそ20年ぶりの再会でした。初版から30年目の節目として出された新装版を書店で見つけるなり「きゃー!」。わが10代のきらきらっとした甘酸っぱい記憶が一気に蘇りました。

 収められた430余首、どの歌も、20代女性の楽しい気分、みずみずしい感受性が溢れています。題材はなんてことない日常です。

 (わたしにとっては、少し年上のお姉さん)俵万智さんの短歌は、ユーミンの『恋人がサンタクロース』(80年)の歌詞に登場する、恋人を待つ「となりのおしゃれなおねえさん」のよう。口語が並ぶ短歌からは、はじまりそうな恋、うまくいかなくなってきた恋を、まだろくに恋愛もしていなかった少女にすら、その短い言葉から想像することができました。そして思いました。短歌って、かっこいい!

 その感動はもちろんわたしだけではなく、社会現象を巻き起こします。結果、280万部のベストセラーに。そんなわけで、ある頃には自分の書棚に『サラダ記念日』があることがミーハーに感じられ、なんだか気恥ずかしくなったことさえありました。

 しかし、時間というものは、そんなまわりの騒音(価値観)をとっぱらい、素直にそのものの本質を感じとる冷静さを与えてくれます。今あらためて触れる『サラダ記念日』、震えるほどに素晴らしいのです。(村上)


暮しの手帖社 今日の編集部