愛する台所道具に宿る幸せ

『ツレヅレハナコの食いしん坊な台所』
『ツレヅレハナコの食いしん坊な台所』 ツレヅレハナコ 著
洋泉社 1,500円+税 装釘 森太樹

 料理企画の取材中、料理家の先生が使っている道具に興味がわきます。年季の入ったセイロや、見たこともない木ベラ。「それ、使いやすいですか?」と聞きたくなる衝動を抑え、取材を続けます。ああ、思う存分、話が聞きたい!
そんなわたしの欲求を満たしてくれるのがこの本です。著者のツレヅレハナコさんは元料理雑誌の編集者というだけあって食いしん坊で、読んでいるとお腹が鳴るようなおいしそうな文章がお得意。そんな彼女が愛用している台所道具と、それで作る料理がふんだんに語られます。学生時代に一人暮らしの台所で何十回もインスタント麺を作った小さな土鍋。モロッコの市場で買い、かついで帰ってきたクスクス作り専用の鍋。外はカリッと、中はトロトロのたこ焼きが作れる、ガスたこ焼き器。そのどれもが、ブランドや値段の高い・安いとは関係ない、ツレハナさんが「使っていると楽しい道具」。いつかわたしも、自分にとってのそんな道具たちに巡り合えますように。(平田)


暮しの手帖社 今日の編集部