バトンを渡していくために

2021年06月03日

バトンを渡していくために
(12号「多摩川が教えてくれること」)

「この人のこと、知ってますか?」

ある日、写真家の平野太呂さんに教えていただいたのが、
自然環境コンサルタントであり、NPO法人「おさかなポストの会」の
創設者でもある、山崎充哲(みつあき)さんのことでした。

山崎さんは、多摩川の生態系を守るために、
外来種の魚など、川の生き物を保護する活動を行うほか、
「いい子を育てる、いい川であってほしい」との願いから、
多摩川の生き物を学校に持ち込んで、授業を行ってきた方です。

平野さんにとって多摩川は、小さい頃から釣りをしたり、
追いかけっこをしたりして、親しんできた場所でした。
でも、山崎さんの本を読んでみると、そこには、
多摩川の魅力だけでなく、水質汚染や外来種の問題など、
知らないことばかりが書かれている。
長年にわたって、多摩川を守る活動に心血を注いできた山崎さんに、
会ってみたいと感じたのだと話してくれました。

取材の依頼をした時、山崎さんは病床に伏せていました。
それでも活動は絶やさず、講演会や学校での授業を続けていて、
私たちも短い時間でしたが、お話を伺うことができました。

命を繋いでいく大切さを、切々と語ってくださった山崎さん。
5月6日に、残念ながら永眠されましたが、
その活動のバトンは、娘の愛柚香(あゆか)さんへと受け継がれています。

この記事が、知っているようで知らない身近な自然に目を向け、
関心を持つきっかけになってくれたらと願っています。(担当:井田)


暮しの手帖社 今日の編集部