暮しの手帖社 | 4 のんの、あの一直線の目

4 のんの、あの一直線の目

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

4 のんの、あの一直線の目

澤田 よし、じゃあ今回のソーイングチャレンジも見ていきましょうね。
〔スライドを見ながら〕(*本誌p.153~158をご参照ください)
 新宿のオカダヤさんで生地を選ぶところからスタートです。この朝は、けっこう早い時間にうかがって、店内のいろいろな生地を見て、ターゲットをさがしてまわりましたよね。
のん そうですね。最初の楽しい時間です。
澤田 matohuの堀畑さんのいいアドバイスがありました。「好きな色や柄が、自分に似合うとは限らない」
のん 重要ですね!
澤田 姿見の前に立って、生地を自分の肩にかけてみましょうって。これまではこういう選び方はしなかったんですか?
のん しないですね。「好き」→「買う」、みたいな感じですね。
澤田 けっこうたくさんの生地を見て、「これかわいい!」「あれも!」って楽しんでいらっしゃいましたが、このメキシカンな生地を見つけたとき、のんさんの目の輝きが全く変わりました。「わあ、これ!」って叫んでた。
のん 満場一致で、これに。
澤田 「満場一致」というのは、のんさんのあの一直線の目を見たからです(笑)。
のん でも、この生地けっこう扱いづらくて、アイロンも低温でやらないといけないし、ちょっと時間がかかりましたね。
澤田 背中も“柄合わせ”があって。
のん そう、“柄合わせ”って、あんまりしたことがなくて、もうmatohuさんに頼りきりで……がんばっていただきました。
澤田 がんばっていただきましたって(笑)……君ががんばれ、ですよね。
のん ありゃ。本当に勉強させていただきながら、やりましたね。
澤田 早朝からずっと……時間かかりました。相当夜遅くまで。夜遅くになっていっても、のんさんだけはずっと変わらずキラキラしていて……ほら、ぼくらわりと歳とってるでしょ、みんな顔に隠せない疲れが現れてくるのね(笑)。それぞれのほうれい線のあたりがだんだんあやしくなってきて……朝よりみんな10歳くらい歳をとってる感じで、興味深かったです。

◆アイロンが重要だ

のん はさみ! この写真みたいに裁ちばさみに輪ゴムを巻いていると、つねに閉じた状態にできる、っていう小ワザを教えてもらいました。
澤田 はさみを開いたまま万一床とかに落とすと、二枚の刃の角度がずれて、切りにくくなるんです。って、すべてmatohuさまの受け売りで語っているんですけど……。のんさんは最初、かなり手元の方に輪ゴムを巻いてしまって、それじゃ絶対開かないだろっ! ってマヌケな事件がありました(笑)。
のん (笑)
澤田 あと、刃先を触ってはいけないとか。
のん ね! 私今まで、刃先、がんがん触っていましたよ。手の脂で錆びるから、って教わって、びっくりしました。
澤田 はさみってデリケートなんですね。では次の写真。
のん アイロン! アイロンが重要だっていうこともよく分かりました。これまで、裾の三つ折りのところくらいしかアイロンしたことがなくて。
澤田 あんまりアイロン、かけないんですか?
のん はい。でもアイロンをやるとこんなにスムーズにいくのか、っていうことに気づきました。
澤田 なるほど。全工程、ずっとアイロンをかけているって感じでしたね。これはのんさんの発言ですが「縫っている時間より、アイロンをかけている時間のほうが長い」と。これは発見。
のん 発見しました。そのほうがスムーズに、きれいに縫えるんですね。
澤田 作業中、matohuの関口さんからのクイズでこんなのがありました。「ソーイングで一番時間がかかることって、何か分かりますか?」って。答えは、「間違えて、つくり直すこと」。
〔場内「……なるほど」〕
のん 私、毎回そうですね。間違えて、もう一回やり直して……っていうのを5回くらい。
澤田 おお、それは時間かかりそうです。急がば回れ、っていうのはこのことですよね。
のん 本当にそう思います。
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◆それまでは、ダダダダダダダって、勢いで

澤田 次は、ミシン。
のん ミシーン!
澤田 これは楽しそうでした。
のん 「目打ち」を、こう、やりながらやると、下の生地が先に行くのに、こう追いついて、同じ長さで縫える、っていうのを初めて知りました。
澤田 ん? みなさん、この人が何言っているか分かりますか?(笑)〔大勢うなずく〕 あ、分かっていらっしゃる! 先生の解説では「右手で目打ちを持って、先端で布を押さえながら縫い進めていくと、重ねた布がずれにくくなる」とのこと。……分からない人は、ぜひ本誌でご確認くださいね。
のん ミシンを動かすときに目打ちを使いながらやると、きれいに縫える、っていうのを教わったんです。その技を使って、さっきのクマのワンピースをつくりました。
澤田 そうなんだ。それまではどうしてたんですか?
のん それまでは、ダダダダダダダって、勢いで。勘で(笑)。なので、片側、下の布が向こうにずれちゃうんですけど、その下をもうぐいぐい引っぱりながら無理矢理、力技で合わせることにしていました。
澤田 ああ、力技でね(笑)。じゃあ、今回、なかなかのスキルアップだ。
のん もうめちゃくちゃ上がった気がします。
澤田 ミシン、好きですか?
のん ミシン、好きです。
澤田 どういうところが好きですか。
のん 何ですかね……一瞬で布が合わさっていくのが気持ちいいですね。快感。
澤田 ミシンって、機械=「マシーン」から来てるんですよね。さっき、のんさん「ミシーン」って叫んでいましたが。
のん 日本だけなんですよね、「ミシン」って言うの。かわいい言葉です。
澤田 そして完成カットです。
のん かんせーい! うれしそう。
澤田 疲れを感じさせない写真(笑)。
のん 楽しかった!
澤田 ものすごい集中力でしたね。
のん ありがとうございます。matohuさんが一緒に集中してくださったので、乗っかっていきました。
澤田 関口さんの教え方は「スタッフ養成をしているかのような細かな指導だった」と堀畑さんがおっしゃってましたね。
のん うれしかったですね。本当に丁寧に教えてくださったので。素敵なはおりものができました。メキシカーン!
澤田 チロル!
のん チロリアーン!(笑)
澤田 ところで、プレゼントを持ってきました。実はこんなんもつくったんですよ。型紙。どうしても本誌だと小さな作図になるので、今回読者のことを考えて、実物大の型紙も用意したんです。(*入手希望の方は本誌p159をご参照ください)
のん やったー、もらえる!
澤田 あげる!
〔つづく〕


暮しの手帖社 今日の編集部