暮しの手帖社 | 5 私も透明感を維持しながら成長したい

5 私も透明感を維持しながら成長したい

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

5 私も透明感を維持しながら成長したい

澤田 ソーイング以外では、どんな趣味がありますか?
のん 絵を描いたりとか。
澤田 『創作あーちすと』では本当に楽しそうに描いてらっしゃいますね。
のん 好きなんですよ。あとは、ギター弾いたりとか。
澤田 矢野顕子さんとの対談のとき、ギターで歌もつくっているとかってお話しされていましたが。
のん そうなんですよ。最近なんですけどね。
澤田 どんな歌なんですか? いや、歌えとは言いませんけど。
のん ……パンクロックの感じですかね。
澤田 え、パンクかあ! 意外。かっこいいなあ。
のん ロックですね。でもあまり知識がないので。知ってるコードとかも少なくて、だから粗削りな感じが、パンクなんです。〔場内爆笑〕
澤田 あ~、粗削り……自分で言うんだ(笑)。あと、脚本を書いてみたいって欲望も聞いていますが。
のん そうなんですよ。趣味で文章書いてます。
澤田 すごい。本当に“創作あーちすと”なんだな。
のん (きりっと)そうです。
澤田 (笑)のんさん、面白いなあ。質問コーナー、続けます。質問項目、いろいろ持ってきたんです。えーと、≪何をしているときが一番充実していますか?≫
のん 仕事をしているときですね。
澤田 わ、かっこいい。そんなことぼく、思ったことない。
のん ありゃ、そうですか。私は、自分自身が何かを表現する……『この世界の片隅に』のすずさんとかもそうですけど……あと今日のようにオモテに出たり……あ、中ですけど(笑)、建物の中ですけれど、表舞台に出たりとか、そういうアウトプットをするお仕事が好きなんですね。だからけっこう楽しめているのかもしれないですね。
澤田 表現者だ。
のん (きりっと)表現者ですね(笑)。
澤田 素晴らしい。

◆笑わせるの、好きですね

澤田 ≪絶対自信のあることって何ですか?≫
のん 絶対自信のあること……あっ、集中力!
澤田 それはもうぼくは目の前で目撃しました。あの日ぼくはすごくいいものを見たなって思いましたね。
のん ものづくりしているときに集中できます。
澤田 昔からですか?
のん 昔からかもしれませんね。
澤田 うらやましいな。ぼくは「集中集中」ってよく唱えていますが、それって集中してない証拠だよね。
のん (笑)私は楽しいと、どこまでも集中していけますね。
澤田 次。≪自分のことを関西人やな、と思うことはありますか?≫
のん うーん、笑える方向にもっていきたがるときがありますね。
澤田 やっぱり人を笑わせるの好き?
のん 笑わせるの、好きですね。でもあんまりそういうイメージを持たれないんです。ちょっと何かギャグとか言っても、なかなか伝わらないんですよね(笑)。何かこう気づかわれたりとかして。「ノンプロブレムです!」とかって言うと……相手が「……あっ、はあ」みたいな。「のん、だから!」「のんゆえに!」「ノンプロブレムです」と説明するとか(笑)。よくあります。
澤田 のんさんはねらってギャグを言わなくても、そのままで面白いんですよ。そもそもコメディエンヌみたいなところはあると思うんですけどね。
のん そうですね。コメディで有名になったので。
澤田 『この世界の片隅に』のすずさんのキャラも、そのままのんさん、みたいな感じがすごいありますよね。
のん オトボケキャラですね。
澤田 本人が真っ直ぐそう言うの、可笑しいなあ(笑)。でもね、コメディエンヌなんだけど、対談を読んでたら、憧れの人は「吉永小百合さん」っていう。それはどういうことですか?
のん 吉永さんの“揺るぎない”ところにすごく憧れていて。歳を重ねても、あんな風に透明感のある素敵な女優さんになりたいなと思っていて。なので、私も透明感を維持しながら成長したいっていう気持ちです。
澤田 していますよ、今のところ。維持されていると思いますよ。
のん 吉永小百合さんのようなコメディエンヌになりたい、みたいな無茶なことを思っています(笑)。
澤田 すごい。そもそも吉永小百合さん、コメディエンヌじゃないですもんね(笑)。のんさん見てると、でも「なれる」と思ってしまいますね。
のん がんばります!

◆白米6合とか食べたりしてました

澤田 次。「人前で話すのは得意ですか?」。こういうトークショーとか、大丈夫?
のん いや、もともと、元来、しゃべるのが苦手なので。
澤田 いや、けっこうしゃべってますよ。もし何にもしゃべらなかったらどうしようって、イベント前、心配してたんですけど。
のん 前はかなり「うーーーーん…………」って、長考することが多かったですね。
澤田 のん名人、長考にはいりました、みたいな? 今は大丈夫ですね。
のん 今はまあ。前は正しい答えを導きださなきゃ! みたいなところがあったんですけど、……今は正しくなくてもいっか! みたいな。〔場内爆笑〕
澤田 それはダメでしょ。……ほかに「これ苦手」っていうものは?
のん えーと、媚びたりとか、できないですね。媚びれない。
澤田 媚びれない、へんな言い方ですね(笑)。人に媚びるの苦手?
のん 苦手です。やり方が分からない。どうやったらいいんだろう?
澤田 今度教えますよ(笑)。媚びることにかけては右に出る者がいないサワダ編集長(笑)。
のん わあ、私も媚びたーい!
澤田 なんだそりゃ(笑)。
のん 何でもやり方が分かればできるような気がするんです。
澤田 では今度『暮しの手帖』で「媚びる」特集しましょうか(笑)。
次の質問です。≪明日世界が終わるとしたら、何を食べたいですか?≫
のん 白米ですね。大好きですね。中学生のときは、朝ご飯に白米6合とか食べたりしてました。
お客さま 「えーーー!!?」〔ざわざわ「……6合?」の声〕
のん そのときはもうぽちゃぽちゃだったんです。食べるの大好きだったんですよ。白米だけを、ふりかけもなしに食べるのが大好きでぇ(くすくすと笑う)。
澤田 のんさん、ひとりで笑ってはる……。
のん 白米、本当に美味しい。
澤田 「『暮しの手帖』で、次はこれをやらせろ」っていうのはありますか?
のん えーと、刺しゅうをやってみたいですね。
澤田 やったことないんですか?
のん 挑戦したことはあったんですけど、くにゃっとよれてしまって。途中であきらめてしまいました。
澤田 のんの挑戦シリーズ第二弾「刺しゅうの巻」、いいですね。『暮しの手帖』では、毎回何か、手を使って自分でつくるというページを入れたいって思ってるんですよ。
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◆つくりませんか、はおりもの?

澤田 木工なんていかが? あまりしないんですか?
のん あんまりしないですね。釘を使ったりとか?
澤田 トンカントンカンとか、のこぎりギコギコとか。
のん しないな。でも好きでしたよ、のこぎり使うの。小学生のときとか、図画工作で使いますよね。
澤田 やりましょう。
のん はい(笑)。
澤田 ぼくらの雑誌って、机の上で企画を考えないで、街に出てたとえば『この世界の片隅に』に出会って、いい映画だな、のんさんの声いいなって思って、プロデューサーに連絡して話とか聞くと、「もんぺ、つくってたよ」なんていうエピソードを聞いたりして、え? じゃ、のんさん、ソーイングできるんだ! 何かチャレンジしてもらえないか連絡してみよう……って、そういう乗り、流れを大切にしているんです。
のん 大事ですね。
澤田 で、「つくりませんか、はおりもの?」って言ってみたんです。そしたら、すぐに……
のん やります、って答えました。
澤田 企画の始まりって、つねに人との出会いだと思います。
のん ですね。
澤田 さあ、ぼちぼち時間かな。あとはみなさん『暮しの手帖』をじっくり読んでいただいて……って、聞き忘れましたが、みなさんはもうすでに読んで、ここにいらしてるんですよね? 読んできた、見てきた方は手を挙げていただいていいですか?
〔大勢挙手〕
のん ありがとうございます!
澤田 あれれ、挙げてない人は何なんでしょう~?
のん これからの人ですね。
澤田 これから読む人ですよね。好評発売中です(笑)。
のん お願いしまーす。
澤田 のんさん、こんな風にお客さんと近くでしゃべることって、ありますか?
のん ないですね。貴重かもしれないですね。やっぱりその、あんまりしゃべることを求められないので。〔場内笑〕
澤田 そうですか? すごく面白かったですよ。いつまでも、この親戚の楽しい子としゃべっていたいんですけど、時間ですので、ぼちぼちこれで失礼させていただきます。のんさん、今夜はありがとうございました。
のん ありがとうございました!
〔場内大拍手〕
〔了〕

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【編集長のイベント後記】

 あまりにも愉しい時間でした。
 タレントさんとのトークイベントはいくつもやってきましたが、最初から最後まで、取材に来ていたマスコミも含めてこんなに温かだった会場は記憶にありません。
 それは、人気女優を迎える華々しきショーというより、 “親戚の子”を見守り、応援する集い、そんな幸福な時間でした。
 それが証拠に、会場のオフ写真のみなさんを見ると、あの顔もこの顔もどのカットも実に(保護者のように)にこにこしてるではありませんか。
 そう、みんなが彼女を愛してるんです。
 笑いが絶えなかったのは、今回の再現ルポの(笑)印の多さの通りですが、のんさんのしゃべり、間合いの見事さは唯一無二で、こればかりは再現のしようがありません。
「あんまりしゃべることを求められない」というご本人ですが、いやいやこんな会、どんどん開いてほしいなあ、って心から思いました。
「媚びかたがわからない」と、のんさん。すばらしいです。
 一見、ふにゃ~、ぽわんとしていて、動きもなんだか怪しげな女子。けれど、やりたいことはきっちりとある。それが明快にわかっている人。
 のんの話や表情は、明るい未来を感じさせます。いや“未来そのもの”がぼくらの前で話をしている、そんな気さえしてくる。
 彼女とともに、『暮しの手帖』もまた未来に続く、のであります。
 のんさん、次は刺しゅう、やってみる?

澤田康彦


暮しの手帖社 今日の編集部