暮しの手帖社 | 夜空を見上げたくなる、物語の数々

夜空を見上げたくなる、物語の数々

写真で見る 星と伝説 秋と冬の星
『写真で見る 星と伝説 秋と冬の星』野尻抱影 文 八板康麿 写真
偕成社 1,600円+税 装釘 三上祥子(Vaa)

 太古より、人々は夜空を見上げ、輝く星々を神や動物に見立て、さまざまな物語を紡いできました。ギリシャはもちろん、中国や日本でも。
本書は、秋と冬の星座にまつわる世界各地の伝説と、美しい星空の写真を掲載しています。底本となっているのは、野尻抱影の名著『星と伝説』。秋はペガスス座やペルセウス座、冬はおうし座やりゅうこつ座など、それらの星座にまつわる9編のお話が収められており、たっぷりのカラー挿絵が入っています。
例えば、オリオン座。四角形を描く星のなかに、並ぶ三つ星。おそらく、みなさんもご覧になったことがあるかと思います。
 ギリシャではオリオン座は、太い棍棒を持って野山の獣を狩る勇者の姿とされました。勇者オリオンは、月と狩りの女神アルテーミスと恋仲になるのですが、彼女の兄、日の神アポローンによって悲劇の死を迎え、やがて星になったのだとか。
 ところ変わってアイヌの人たちは、オリオン座の三つ星をイウタニ(米を搗く杵)と呼び、これは働き者の三人の若者が星になったもの。こんなふうに同じ星座でも、それぞれの時代に、それぞれの場所で、違った伝説が生まれたことがわかります。
 ほかにも、多情の大神ゼウスに、夫の浮気を怪しむ妃ヘーラ。娘のアンドロメダを溺愛する、親ばかの母・カシオペヤ。物語のおもしろさもさることながら、「人間くささ」や「戒め」は、時代を超えて、人類の不変のテーマなのかしら、と思ったり。
 解説によると、地球からアンドロメダ銀河までの距離は230万光年。私たちがいま見ているのは、230万年前に放たれた光なのです。そして「アンドロメダ銀河は数十億年後に、われわれがいる銀河と合体すると考えられて」いるそうです。悠遠のかなたに広がる銀河と、それを見るちっぽけな私。
 オリオン座の隣はおうし座で、その下にあるのはエリダヌス座……。当初はのっぺりと見えていた星の写真が、読み進めるほどに、時間と空間の厚みをもって、眼前に迫ってくるように感じられました。
 本書では、それぞれの星の解説や見つけ方、コラムなども充実しています。これからの季節、ますます夜空を見上げたくなる一冊です。(圓田)


暮しの手帖社 今日の編集部