台所や食卓の情景と結びついた料理

2023年09月26日

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台所や食卓の情景と結びついた料理
(26号「ずっと、食べていく 松本未來さん、松本裕美さん」)

食べることは大切だとわかっていても、料理だけがやるべき仕事ではないし、理想通りにいかないこともままある。けれども、人生のそのときどきで、自分なりの知恵と喜びを見いだして、ずっとずっと食べていけたなら。
第一特集「ずっと、食べていく」では、「あなたが家のごはんで大切にしていることは、何ですか?」という問いを胸に6名の方を訪ね、その方の人生の変遷とともに、お話に結びついた料理のレシピを教えていただきました。

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緑豊かな山間にある、大分県山香町で暮らす松本未來さんと松本裕美さんを取材したのは、6月末のことでした。10歳の時に家族5人でこの土地に移り住み、四季折々の畑仕事に参加してきた未來さん。一方、大分の市街地で生まれ育ち、畑仕事とは無縁の生活を送ってきた裕美さん。
異なる道を歩んできた二人が家族となり、農家民泊「糧(かて)の家」を営んで、家族で育てた無農薬の米や野菜を使った料理を提供しています。
「宿泊客の方々にも、自分たちがふだん食べているものと同じ、素朴な『家庭の味』が感じられるものをお出ししています」と裕美さん。今のメニューに行き着くまでの道のりを伺うとともに、「糧の家」の朝ごはんと晩ごはんで提供している松本家の定番メニューの中から、「だんご汁」や「高野豆腐と根菜の煮もの」、「ピーマンの肉詰め」などの作り方を教わりました。
取材中、だんご汁をクツクツ煮ている鍋から湯気が上がり、窓の光が当たっている情景がきれいで、とても印象に残りました。日々のごはん作りを支えているのは、こういった何気ない台所の情景や記憶なのかもしれない。そんなことを感じた瞬間でした。(担当:井田)


暮しの手帖社 今日の編集部