1 洋服づくりで一番楽しい瞬間って、どんなときですか?

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

1 洋服づくりで一番楽しい瞬間って、どんなときですか?

澤田 こんばんは!
お客さま(約100名) こんばんは!
澤田 長らくお待たせいたしました。いつも『暮しの手帖』をお読みいただきありがとうございます。編集長の澤田です。こんなところでそれらしくしゃべっていますけれども、まだ就任して1年ちょっとくらいしか経っていない新米編集長です。そして今夜はエラそうにいろいろしゃべるかもしれませんけれども、あわてて前置きしておきますと、ソーイング能力ゼロです。そのあたりをご理解の上、お話を聞いていただければと思います。
 ぼく自身にとって、のんさんって、今回の撮影で少しだけ時間をともにして、なんか「親戚の子」みたいなイメージになっているんですよね。ひょっとしたら、みなさんにとってもそんな存在なのかも、というような気もします。
 さあ、では紹介しましょう。のんさん、どうぞ!
のん 〔登場〕みなさん、こんにちは。のんです。今日はよろしくお願いいたします。
〔場内拍手。プレス撮影後、着席して〕
澤田 お水いる?
のん 大丈夫です。
澤田 遠慮せんといてね……と、こんな感じでアットホームに行きたいと思います。なぜかね、ぼくは、親しい人、身近に感じる人とかに会うと関西弁になりがちなんですよ。イトコの子が来た、ゆっくりしてきや……みたいな。のんさん、関西ですよね?
のん はい、兵庫県から来ました!
澤田 ようこそいらっしゃいました!(笑) でも全然関西弁出ないんですね。
のん 敬語だと出ないんです。
澤田 そうなんですか。してはる、とか言うたらいいやん……。
 さあさて、このテーブルの上、本がどさっと載っていますけど、まずはこの最新刊『創作あーちすと NON』……買いました。

のん ありがとうございます。
澤田 この「創作あーちすと」という肩書はどうやって決めたんですか。
のん 絵を描いたり、洋服をつくったりとか、そういう活動をたくさんしてみたいなと思って。で「創作アーティスト」なんですけど、あんまりかたい感じになりたくなくて、むしろ「うさんくさい」っていう感じでやりたいなって。ゆるーくやろうと。
澤田 なるほど。
のん あんまり、そうじゃない感じの肩書。で、ひらがなで「あーちすと」って。
澤田 カタカナの「アーティスト」じゃないわけね。それにしても、この本ののんさん、大暴れですよね。
のん そうですねー。自由奔放にやりました。
澤田 ああ、のんってこういう人なんだあ、ってよ~く分かりましたよ。
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◆『この世界の片隅に』、ずうっと映画館にかかっていたらいいな

澤田 今夜は『のんの愛する洋服づくり』ってタイトルで、お客さんからも「こんなものをつくってみたい」「こういうの最近つくったよ」っていうコメントをいただいてるんです。すごいんですよ、いっぱいあって。今日いらした人たちは、みんなものづくりに興味がある女性なんです。コメント、いくつか紹介しますね……≪料理が好きなのでエプロンをつくってみたいです≫
のん なるほどぉ、いいですね!
澤田 それから≪ぬかカイロつくりたい≫
のん ぬかカイロン?
澤田 ぬかカイロ! ≪レンジチンの優れもの≫って書いてありますよ。
のん 初めて聞きました……カイロン……。
澤田 カイロ!
のん あ、へえ(笑)……ぬかを温めて……? 保温性があるんですか?
澤田 あります。しっとりしていいんですよ。ぼくも持っていますよ、二つ。
のん あ、ありがとうございます。
澤田 え!? あげませんよ。〔場内笑〕……まだカイロの話、続けますか?
のん あ、いや。
澤田 ≪妹が5月に出産予定で、赤ちゃん用のスタイをつくりたい≫。もうすぐですね。おめでとうございます。≪たっぷり入るトートバッグ≫
のん ああトートバッグ……重要ですね。
澤田 そんな特集もやりたいですね。
≪編み物が大好きで、毎日編んでいます。今編んでいるのは、ふわふわの毛糸でさっと着られるプルオーバー。3月中に完成させたいと思っているのですが≫……さて、できたんでしょうか?……≪のんさんが大好きで、出演作品は欠かさず観ています。『この世界の片隅に』では映画館を出てからも涙が止まりませんでした≫。おお分かります……(お客さまに)この映画、ご覧になった方、挙手をお願いします。〔半分以上の人が手を挙げる〕……いっぱい!
のん わ、うれしい!
澤田 ぼくは4回観ましたよ。実はね、のんさん、ここだけの話なんですが……ぼくは世界でも相当早いうちにこの映画のよさを発見していた人物なんですよ。
のん おお! けっこういるんですよ、そういう人(笑)。
澤田 むう……。ともかく、大ヒットですね。現時点で(2017.4/10)、200万人を動員したようです。今もまだ100館前後で上映しているそうですね。もう5カ月。こんな映画、めったにないです。
のん そうですよね。ロングランで。「1年公開させる!」って豪語してました。
澤田 のんさんが?
のん あ、私じゃなくて!(笑) 宣伝の方がおっしゃってたのです。
澤田 ずうっと映画館にかかっていたらいいな。まだの方はぜひ、観た方もまた観に行きましょうね。観るたびにディテールの発見がある映画です。

◆わんぱくな女の子でした

澤田 そもそものんさんは少女時代、どんな子だったんですか?
のん わんぱくな女の子でしたね。
澤田 あーちすとじゃないんですか?
のん じゃなかったかな。外で、田んぼに入って遊んだりとか、まだ青い柿を取ってきて、喜んでたら怒られたりとか……そういう感じの子でした。
澤田 野山で育った。
のん そうですね。山に囲まれたいなかの方が実家なので、自然とともに暮らしてました。
澤田 絵を描くこととか、何かをつくることとかは?
のん 絵を描くのは、幼稚園のときから大好きでしたね。あと、お裁縫とかも。手縫いでできるものとかに興味はあって、「これ何に使うんだろう?」みたいな小物入れとか。使いみちのないものとかをつくっていました。
澤田 じゃあその頃からソーイングには興味あったんだ。
のん そうですね。
澤田 洋服づくりで一番楽しい瞬間って、どんなときですか?
のん 一番楽しい瞬間は……「今までで一番きれいに縫えた!」っていうとき。完成の瞬間ですね。
〔つづく〕


暮しの手帖社 今日の編集部