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・「花森安治の仕事」巡回展、富山県の高岡市美術館で開幕

2017年06月23日

花森安治

東京の世田谷美術館、愛知の碧南市藤井達吉現代美術館で好評を博した「花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼」の巡回展が、6月16日、富山県にある高岡市美術館にて開幕しました。

高岡市美術館は「公共建築百選」にも選ばれた美しい建物で、建築家・内井昭蔵氏が設計を手がけたものです(偶然ですが、巡回展一館目の世田谷美術館も内井氏による設計です)。外壁には地元産の砕石「紅桜(べにざくら)」を使い、回廊の屋根やドアの引き手などには高岡伝統の鋳物技術が活かされています。
ミュージアムショップは、吹き抜けで自然光が入るつくりで、花森の関連書籍やグッズの販売もたいへん充実しています。
また館内のティーラウンジ「アーク」では、期間限定メニューとして、『暮しの手帖』1世紀24号(1954年)の記事「クールさんの1週間」などのレシピを参考に作られた、レモンスカッシュやミルクセーキをお楽しみいただけます。

当時の『暮しの手帖』を存分に感じられる展示空間は、天井の高さを活かした会場となっています。暮らしをおびやかすものに対峙した、花森の温かくも鋭いまなざしや、職人(アルチザン)として「死ぬ瞬間まで〈編集者〉でありたい」と願った細やかな手仕事を、ぜひ間近でご覧ください。(担当:会田)

花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼
会期:6月16日(金)~7月30日(日)
会場:高岡市美術館(富山県)
講演会やイベントなど、詳細は、下記の高岡市美術館公式サイトにてご確認ください。
http://www.e-tam.info/

会場の様子(特別に許可をいただき撮影しています)

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花森による『暮しの手帖』1世紀26~100号(1954~1969年)

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装釘を手がけた書籍の原画

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1世紀96号(特集・戦争中の暮しの記録、1968年)と、読者からの投稿画稿

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画面右奥。花森が編集部員に取材について厳しく指導する肉声が流れる(録音テープより)

答えのない「もごもご話」。

本屋さん_親になるまでの時間
『親になるまでの時間 前編 ゆるやかな家族になれるかな?』
浜田寿美男 著 ジャパンマシニスト社 1,600円+税  装釘 納谷衣美

 「分かりにくい」ということに惹かれます。答えを一つに絞れない複雑な事柄にこそ、人生の真理や面白みが潜んでいる気がするからです。私は未経験ですが、「子どもを育てる」ことは、まさにそんな事柄なのではないでしょうか。
 子育てについての答えではなく、考える材料を提示するという方針のもとで1993年に創刊した『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』という季刊誌があります。雑誌の形で刊行してきたこれまでのスタイルから、一つのテーマを深掘りする単行本スタイルにリニューアルした第一弾がこの本。一冊まるごと発達心理学・法心理学者の浜田寿美男さんの言葉で綴られており、7月にはこの後編が刊行されます。
 意表を突かれるのが、浜田さんがまず子どもの「発達」「心理」を語ることに疑問を呈していること。どちらの言葉も、子どもを単体で、または子どものある部分だけを取り出して見る危険性をはらんでいると語ります。なにか事が起こったときに、その子の性格・性質のせいだけにしていないか。そしてその性格・性質は教育によって変えられる、と思っていないか――。「人間も自然のひとつ、そして自然はみな多様なもの」「『発達』は個人を単位に考えてすむものではなくて、つねに周囲の人やものの『世界』とセットで成り立つ」という浜田さんの考えが全体を貫き、ご本人が恐縮交じりに言うところの「あいまいではっきりしない」「もごもご話」で綴られる本書を読んだあとは、街で出会う子ども一人ひとりの、個性的な輪郭が浮き彫りになって見えてくるようになりました。驚くべき変化。(担当:田島)

体温のある言葉と作品世界

本屋さん_人みな眠りて
『人みな眠りて』 カート・ヴォネガット 著/大森 望 訳
河出書房新社 2,000円+税  装釘 川名 潤

今回から、本誌で連載している「本屋さんに出かけて」を、このブログでも始めることになりました。私たち編集部員が実際に読んだ本のなかから、毎号8冊をご紹介している頁ですが、誌面に掲載しきれないすてきな本が、まだまだたくさんあるのです。
さて、今回ご紹介するのは、カート・ヴォネガットの『人みな眠りて』です。
カート・ヴォネガットは、『タイタンの妖女』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』などの作品で知られる、現代アメリカ文学を代表する作家のひとりです。この本は、ヴォネガット没後10年の今年刊行された、未発表の短編を集めた一冊。彼の未発表作品集は、没後いくつか出ていますが、この本は、キャリア初期に書かれた作品を集めたもの。当時の家庭向け高級雑誌に投稿していた、1950年代の作品群です。シンプルなテーマと若々しいタッチで、人間味あふれるキャラクターたちと、彼らにまつわる小さなドラマが描かれています。彼の同時期のよい作品をきちんとまとめる出版は、今後はもう見込めないそうで、「最後の短編集」と謳われています。
この本は、ヴォネガットらしい、やさしさとシニカルなおかしみが全編にあふれています。ユーモアたっぷりに、人間のすばらしいところとダメなところを照らし出しているのです。とくに、名声や見栄、そしてお金の問題から人が何を学ぶのかというようなテーマは秀逸。でも、さすが青年期の作品で、前に挙げた代表作とは少し違って、明快でわかりやすくて楽しげな筆致。そして、当時人気だった、意外な結末で話を締めくくるスタイルも特色です。温かみのあるメッセージに勇気づけられ、多彩で巧妙な「オチ」を楽しめる一冊なのです。(担当:宇津木)

・巡回展開幕のお知らせ 富山県・高岡市美術館 「花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼」

2017年06月15日

世田谷美術館(東京都)、碧南市藤井達吉現代美術館(愛知県)にて好評を博した展覧会「花森安治の仕事」の巡回展が、富山県の高岡市美術館にて、6月16日に開幕いたします。『暮しの手帖』を創刊した花森安治の、生涯にわたる手仕事や貴重な資料、約740点がご覧いただけます。どうぞお誘いあわせのうえ、足をお運びください。

期間:2017年6月16日(金)~7月30日(日)
場所:高岡市美術館
〒933-0056 富山県高岡市中川1-1-30

展覧会詳細は下記のリンクよりご覧ください。
高岡市美術館公式サイト http://www.e-tam.info/

暮しの手帖社 花森安治特設サイトでは花森が手がけた仕事をご紹介しています。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/hanamorisan/

土井善晴さん『汁飯香』連載、今号は──

2017年06月09日

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料理するとき、「失敗しませんように」と無意識に唱えているという人、いらっしゃるでしょうか。かくいう私がそう。
しかし土井さんは「料理に失敗なんてない!」と笑います。
「味が濃くても、うすくても、それはそれなり。大した問題ではないんですよ。
そんな土井さんですが、こと調理中の“清潔への心がけ”に関しては「これこそ大問題」ときっぱり。
清潔を心がけることが、料理の味を決定的に左右する――そんなお話から、今回のテーマが生まれました。
ちょっと敷居が高いテーマに聞こえるかもしれませんが、布巾やまな板を使い分けることや、食材の鮮度を意識することは、誰にでもできること。その意識の積み重ねは、きっと料理への自信を育くんでくれる。取材中、そう心に刻んだ回でした。
今号のタイトルは、すばり、「清潔は大問題なんです」。
(担当:田島)

矢橋六郎をご存じですか? (88号「今日の買い物 番外編 モザイク画に導かれて」)

2017年06月08日

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「ある壁画について調べているうちに、矢橋六郎という作家に興味がわいてきました」
ある日、「今日の買い物」の執筆者である岡本仁さんから、こんなメールをいただきました。メールに添付されていたのは、色とりどりの小さな石を組み合わせてつくられた、美しい壁画の写真。
青や緑、淡いクリーム色など、小さな欠片が織りなすその色鮮やかな壁画に、私は一瞬にして心を奪われてしまいました。
今号の「今日の買い物」では、番外編として、都内や名古屋、岐阜の大垣に現存する、この矢橋六郎の作品を巡り、紹介しています。
それらの作品は、駅や市役所、市民会館など、たくさんの人が自由に出入りすることができる公共の場にあるものばかり。自分自身も、これまで幾度となく矢橋六郎の作品の前を通り過ぎていたはずです。
歩きなれた街でも、ほんの少し目線を変えて好奇心をもって歩けば、きっと新たな出合いがある。
岡本さんの写真と文章を通して、そう実感しました。
(担当:井田)

緑のいとおしさ(88号「苔と花のテラリウム」)

2017年06月07日

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まもなく雨の季節。街の樹木はすくすくと育ち、「あれ? この木はこんなに大きかったっけ?」なんて感じることもしばしば。
園芸店には、さまざまな草花が並び、身近で緑を愉しむにはとてもいい時季ですよ。
「庭がない?」「ベランダが狭い?」
そう嘆くなかれ。そんなあなたにおすすめするのが、「テラリウム」です。
瓶と草花があれば、自分だけの緑の世界がつくれます。
容器の中で植物を育てるテラリウムは、ここ数年、人気を集めています。書店でも目に付くところに、関連書籍が置かれているので、ご存じの方も多いかもしれません。
編集部でも実際に育ててみましたが、日々の手入れはもちろん、あれこれ世話を焼いていると、いつしか緑そのものがいとおしい存在になっていました。
そして、街を歩いていても、普段は目に入らない苔や草花に目が向くようになり、いつもの景色が違ったものに見えてくるから不思議です。
テラリウムづくりがきっかけで、“緑初心者”の私でさえも、「さて、今度はどんな瓶で苔や草花を植えようか」、と緑を慈しむ気持ちがむくむくと芽生えてくるのでした。
(担当:矢野)

庶民の味方、瀬尾さん8種のレシピ(88号「やきそばはたのしい」)

2017年06月06日

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企画の発端は「息子がよろこんで食べる数少ないメニューなんです。いろいろ作っても、やきそばの食べっぷりには敵わない」という同僚の言葉でした。
笑えるような、切ないような。
「けれど水っぽくなってしまうときがあって……」
うんうん、水っぽいやきそば、私も幾度となく作ってきました。
庶民の味方、料理研究家の瀬尾幸子さんは、誌面のなかでそのお悩みの解決法をズバリと提示、そしてソースやきそばを筆頭に、計8種類のやきそばレシピも考案してくれました。
やきそば用の蒸し麺は味にクセがなく、しかもあっという間に調理できるという利点を生かした、作りやすいスピードメニューばかり。ホイホイとフライパンをあやつりながら瀬尾さんが発した
「やきそばってたのしいね!」
の気持ちを、皆さんにも実感していただけますように。
(担当:田島)

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いかがお暮らしですか?(88号「高山さんの『それから』」)

2017年06月05日

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2016年5月に、東京は吉祥寺から、神戸の六甲へと居を移した料理家の高山なおみさん。
引越しの顛末やスタートしたひとり暮らしの様子について誌面でレポート(83号、84号)してから、はや、1年が過ぎようとしています。
高山さんはこの間、近年取り組んでいる絵本創作に注力してきました。すでに3冊の自伝的作品が生み出されています。
最近の高山さんがどう暮らしているのか、神戸でどう根を張っているのか。近況が知りたくて、編集部は先日久しぶりに、高山さんのお宅にお邪魔しました。
笑顔で出迎えてくれた高山さんのお元気なこと。そして、私たちのために用意していてくれたお料理の、相変わらずおいしいこと。
自分のために作るひとりご飯のレシピや、友人たちに大人気だというおもてなし料理のレシピをご紹介いただきながら、大きな決断をした昨年について振り返り、近頃の心境についてお話しいただきました。
(担当:島崎)

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旬の素材に助けてもらう――神田裕行さんに教わったこと

2017年06月02日

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金曜日の夕方って、なにか気持ちがゆったりと、大きくなります。
(この1週間も、なんとかのりきった! 積み残したあれやこれやは、まぁ、週末にくつろいだ頭で考えればいいじゃない!)すると、むくむくと食欲が湧いてきて、なにを作ろうかとわくわく。(逆に元気がないときは、なんでもいいや……となってしまうから、食事への興味は、元気のバロメーターですよね)

「料理を作るとき、最初に意識するのは旬の食材です。
旬のものを使えば、特別なことをしなくても素材のおいしさに助けられます」
というのは、ミシュラン三つ星を10年連続で獲得する料理人、神田裕行さんの言葉です。
“――特別なことをしなくても”
料理に自信がないわたしにとって、これはとてもうれしい秘訣でした。
今夜は、旬の「竹の子」と「そら豆」に助けてもらうことにします。

写真は、単行本『神田裕行のおそうざい十二カ月』のために試作した「竹の子とそら豆の炊き込みご飯」。旬の食材の存在感を大切にするために、あえて細かく刻んだ油揚げが、ダシのうま味をたっぷり吸って、隠し味になっています。
(担当:長谷川)

単行本『神田裕行のおそうざい十二カ月』の目次は下記のリンクよりご覧いただけます。

http://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1178.html

行かないでいいよ!(88号「不登校だって大丈夫」)

2017年06月02日

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とつぜんですが、皆さんは子どもの頃、学校はお好きでしたか。私は正直、とても苦痛でした。
ルールがたくさんあること。時間割をはじめ、なにもかもが決められていること。怖い先生がいること。点数を競わされること……。
私が内緒で学校を休み休みしていることが知れたとき、母はあっけなく「そんなにいやなら、行かないでいいよ」と言いました。内心は動揺していたかもしれません。けれど、その言葉は私をとても楽にしました。中学校3年生のときのことです。
「学校に行かなければ」「でも行けない」
本特集は、そんな気持ちのはざまで苦しんでいる子どもたちが少しでも楽になるように、そして、そんな子どもたちについて多くの人に知ってもらえたらと考えて、編んだものです。
子どもが学校に行きたくないと言い出したとき、周囲の大人はどのようにその気持ちを受け止めるべきか。子どもの学びの形とは、本来どのようなものであるべきか。
かつてご自身のお子さんが不登校を経験した保護者の方々、「不登校新聞」の編集者・小熊広宣さん、教育学を専門とする中央大学教授・池田賢市さんとともに考えます。
学校に行けなければ人生が終わりだなんて、子どもが思い詰めることのないように。点数や偏差値ばかりを気にして、子どもが汲々とすることのないように。そんな思いを込めました。
(担当:島崎)

この企画のおかげで!(88号「ひと皿で満足の切り身魚料理」)

2017年05月31日

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撮影直後のテーブルのワンカットです

みなさん、魚料理は好きですか?
毎日の食卓にどれくらいのぼるでしょうか?
実はわたし、編集部で一番、魚料理が苦手でした。
理由は、魚の生ぐさみが嫌い。
下ごしらえが面倒そう。
煮るか、焼くか、の乏しいレパートリーしかない。
魚の主食はボリュームに欠け、その他に副菜を作る必要があって大変。
などなど、キリがありませんでした。
でも、健康のことを考えると、もっと魚を食べたい。
そこで意識的に、いろいろな魚料理のレシピを試してみました。

そんななか出合ったのが、堤人美先生のレシピです。これが簡単で、おいしい!
さっそく先生に連絡、「魚が好きな人も苦手な人も、もっとおいしく魚を食べられる企画を考えているんです」と相談すると、
「お魚、大好きですよ!夕食のメインは、肉と魚の日が半々です」とおっしゃるではありませんか。心強い!
今回の先生へのリクエストは「魚のなかでも、切り身を使った料理を教えてください」というものです。苦手意識を持っている人にとって、魚をさばくのはハードルが高いですものね。
堤先生と何度もやりとりを重ね、“ひと皿でも満足するような切り身魚料理”を考えていただきました。それはこんなメニューです。

 ・切り身を使って、手間なくスピーディーに完成する
 ・野菜などと併せて、ひと品で食べごたえがある
 ・和洋中華にエスニックと、いつもと違う新鮮なおいしさ
 ・下処理をしたり、香りのよい食材を合わせることで、魚のくさみを抑える

今回は、塩サバ、生鮭、メカジキ、カツオを使ったレシピをご紹介していますが、代用できる魚も載っているので、その日手に入る旬の魚で作ることができます。
この企画のおかげで、魚売り場をのぞくのが、すっかり楽しみになりました。(担当:平田)

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暮しの手帖社 今日の編集部