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いとしいハギレで小物づくり(88号「ハギレを手縫いで」)

2017年05月29日

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洋服やかばんを作ったときのハギレ、みなさんはどうしていますか?
いつか何かに使えたら、と棚の奥にしまっている方も多いのではないでしょうか。ハギレをつなぎあわせて、すてきな小物を作れたら……。
そんな編集部の要望にこたえてくださったのは、えみおわすの水田順子さんと阿部直樹さん。ハギレそのものの形をいかしてランダムに縫いあわせたり、三角や四角をつなぎあわせるなど、たのしいアイデアを考案してくださいました。
不器用さでは誰にも負けない! と胸を張れる(?)私にとっても、ハギレを手縫いで縫いあわせ、小物を仕立てる時間は、なんとも言えない楽しい時間でした。
使う布や糸の色によってさまざまな表情になるので、手元にあるハギレを自由につなぎあわせて、ぜひ作ってみていただけたらと思います。(担当:井田)

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暮しの手帖社の倉庫や編集部員の自宅にあったハギレで試作した、ななめがけバッグです。

単行本『神田裕行のおそうざい十二ヵ月』ができるまで

2017年05月26日

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「本を作らせていただけませんか。これまで教えていただいたレシピを、もれなく、たくさんの方にご紹介したくて……」と、神田裕行さんにお願いにあがったのは、昨年の暮れのことでした。
神田さんは、ミシュラン三つ星を10年連続で獲得する日本料理の名店「かんだ」のご主人で、『暮しの手帖』で6年にわたって「おそうざい十二カ月」を指導してくださった、その人です。

神田さんは、にこにこと微笑んで、こうお答えになりました。
「よろこんで。
でもね、 “もれなく”なんて、欲張るのはやめませんか?」
欲張る……? しばし思考が停止した私をよそに、神田さんはこう続けます。
「だって、得意料理なんて、五品もあれば充分でしょう?
僕のお母ちゃんだって、そうでしたよ。
みんな、日々、レシピを増やそうとして、『ナントカのナントカ風』みたいな新しい料理に挑戦します。でもね、ふつうの料理を五品、ほんとうにおいしくつくれたら、『料理じょうず』って、胸を張ってええと思うんです。
だったら、みんなが味を想像できるような、ほっとする味わいの料理を厳選して、それを全部、三度は作ってみてもらいませんか。そして、『わが家の味』にしてもらいたいんです。」

驚きました。実は、神田さんのレシピ集はまだ世になくて、この本が初。できるだけたくさん、レシピを載せたいと考えてもよいのに……。「家庭で料理する人」のために、と真剣に考えてくださったことが、とても嬉しかったのです。
それから、「ほんとうに役立つ」レシピ集はどんなもの? 料理に自信がない人の、つまずきのポイントはどこだろう? 料理するたのしさを伝えるには? と、思考錯誤を重ね、神田さんならではの「毎日食べても飽きないおそうざい作りの秘訣」、「思い出のこもった料理レシピ」、「エッセイ」などを大幅に加筆していただいて、『神田裕行のおそうざい十二カ月』ができました。

本誌では、そんな神田さんの想いと、暮しの手帖社の本作りの様子が垣間見える記事をご紹介しています。
今はまだ自信がないけれど、「料理じょうずになりたいなあ」、と願う(私のような)すべての方に、ぜひお読みいただけたら、とてもうれしいです。
(担当:長谷川)

単行本の詳細は下記よりご覧いただけます。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/books/b_1178.html

家のオーブンでもフライパンでも(88号「休日のピッツァ」)

2017年05月25日

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編集部の新年会、実家の父上が漁師の長谷川さんが、金目鯛をさばいて腕を振るってくれるのが恒例になりつつあるのですが、彼女に甘えてばかりもいられないと料理本をめくり、「これを作ろう!」と盛り上がったのが、有元葉子さんのピッツァ・マルゲリータでした。
これがとっても簡単で、パリッと軽やかな生地がとてもおいしくて……。有元さんにあらためて色々なピッツァを教えていただこうと、企画が立ちあがったのでした。
実際にお話をうかがうと、イタリアのテレビ番組を見て研究なさったという、イーストを使ったやわらかーい生地が「今一番のおすすめ」とのこと。
そこで、やわらかーいふわふわの生地と、フライパンでも焼けるパリッと軽い生地の2種類を教えていただくことになりました。
定番のマルゲリータから魚介たっぷり贅沢ピッツァ、甘いデザートピッツァまで、トッピングもシンプルで絶妙。本当においしいピッツァを、ご家庭で楽しんでいただけるとうれしいです。
(担当:小林)

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編集部、だれもいない!──編集長、最新号のご挨拶

2017年05月24日

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ぼくの住まいは、北新宿。会社の近くです。歩いて5分。
家族は京都で、ぼくは単身赴任。
となると、物理的に家は仕事場=事務所みたいになってきています。
会社のパソコンと家のパソコンはまったく同じiMac、21.5インチだったり。
帰ってまた仕事を始めるときに、ありゃりゃと思ったりすることもしばしばです。あのファイルがない! とか。そうか、会社のほうだったなー、とか。
ともかくなんだか仕事ばかりしているのです。
特に原稿書きの仕事が多い(この文章もそうだ)。
1年半前の入社以来、極力編集部にいることにしていましたが、みんなが次々と相談ごとにやってくるので、楽しいけど、純個人作業である執筆には不向きであるということに気づきました。
原稿というのは、できれば一気呵成に書いたほうがいいと信じる者ですが、それがまったくはかどらないのです。
ハンコだけでも一日何度押していることでしょう。
試作だって気になりますよね。「コロッケ、試食お願いしまーす」って。それでなくても気が散る性格なのに。
ですので、最近は午前中を「自宅原稿書き」「講演用の原稿作成」等に使うということがけっこうあります。
昨日も、朝から3時間ほどかかって、とても面白い(気がする)原稿をしあげました。昔なら、原稿用紙をとんとんとそろえて、ふー、てなところです。
そのあとは急いでシャワーを浴びて出社です(原稿を書いたあとはくさくなっている気がなぜかするのです)。
編集長決裁の案件も多いはず。みんなが待ってくれているだろうなあ、すまんすまん、なんて思いながら、急ぎ足で4分、古いビルの3階の編集部まで駆け上がります。
ドアを開ける。
しーん──
だ、だれもいない! 昼の1時過ぎにだれも!? 今日は月曜日なのに。16人が消えた?
一瞬、ドッキリ? サプライズ? とも思いましたが、ぼくの誕生日は10月ですし、うちの編集部員はそんなにヒマではありません。
かろうじて発見したアルバイトさんに聞くと、「みなさんお昼ごはんです」と教えてくれました。
たまたまのからっぽ、だったんですね。
次の号の準備や撮影で忙しく、お弁当率も低いのでした。
ホワイトボード《行動予定表》の写真をおさえました。
どうですか、ずらりと「おひる」「おひる」「おひる」(1名「腰痛のためお休み」)。
面白いなあ。ぼなぺてぃ!
急いでやってきて、ちょっとだけソンした気がする編集長でした。

さあさて、というわけで、最新号発売です。
スタッフのみんな、お疲れさま。88号もたっぷりの試作、検証をやったね!
ピッツァも、9種のやきそばも、切り身魚も、確かにおいしかった!
ハギレで作る小物、すばらしく美しいね!
等々、読者のみなさん、じっくりと184ページ、ご堪能ください。
ご感想もお寄せくださいね。

澤田康彦(本誌編集長)

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5 私も透明感を維持しながら成長したい

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

5 私も透明感を維持しながら成長したい

澤田 ソーイング以外では、どんな趣味がありますか?
のん 絵を描いたりとか。
澤田 『創作あーちすと』では本当に楽しそうに描いてらっしゃいますね。
のん 好きなんですよ。あとは、ギター弾いたりとか。
澤田 矢野顕子さんとの対談のとき、ギターで歌もつくっているとかってお話しされていましたが。
のん そうなんですよ。最近なんですけどね。
澤田 どんな歌なんですか? いや、歌えとは言いませんけど。
のん ……パンクロックの感じですかね。
澤田 え、パンクかあ! 意外。かっこいいなあ。
のん ロックですね。でもあまり知識がないので。知ってるコードとかも少なくて、だから粗削りな感じが、パンクなんです。〔場内爆笑〕
澤田 あ~、粗削り……自分で言うんだ(笑)。あと、脚本を書いてみたいって欲望も聞いていますが。
のん そうなんですよ。趣味で文章書いてます。
澤田 すごい。本当に“創作あーちすと”なんだな。
のん (きりっと)そうです。
澤田 (笑)のんさん、面白いなあ。質問コーナー、続けます。質問項目、いろいろ持ってきたんです。えーと、≪何をしているときが一番充実していますか?≫
のん 仕事をしているときですね。
澤田 わ、かっこいい。そんなことぼく、思ったことない。
のん ありゃ、そうですか。私は、自分自身が何かを表現する……『この世界の片隅に』のすずさんとかもそうですけど……あと今日のようにオモテに出たり……あ、中ですけど(笑)、建物の中ですけれど、表舞台に出たりとか、そういうアウトプットをするお仕事が好きなんですね。だからけっこう楽しめているのかもしれないですね。
澤田 表現者だ。

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4 のんの、あの一直線の目

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

4 のんの、あの一直線の目

澤田 よし、じゃあ今回のソーイングチャレンジも見ていきましょうね。
〔スライドを見ながら〕(*本誌p.153~158をご参照ください)
 新宿のオカダヤさんで生地を選ぶところからスタートです。この朝は、けっこう早い時間にうかがって、店内のいろいろな生地を見て、ターゲットをさがしてまわりましたよね。
のん そうですね。最初の楽しい時間です。
澤田 matohuの堀畑さんのいいアドバイスがありました。「好きな色や柄が、自分に似合うとは限らない」
のん 重要ですね!
澤田 姿見の前に立って、生地を自分の肩にかけてみましょうって。これまではこういう選び方はしなかったんですか?
のん しないですね。「好き」→「買う」、みたいな感じですね。
澤田 けっこうたくさんの生地を見て、「これかわいい!」「あれも!」って楽しんでいらっしゃいましたが、このメキシカンな生地を見つけたとき、のんさんの目の輝きが全く変わりました。「わあ、これ!」って叫んでた。
のん 満場一致で、これに。
澤田 「満場一致」というのは、のんさんのあの一直線の目を見たからです(笑)。
のん でも、この生地けっこう扱いづらくて、アイロンも低温でやらないといけないし、ちょっと時間がかかりましたね。
澤田 背中も“柄合わせ”があって。
のん そう、“柄合わせ”って、あんまりしたことがなくて、もうmatohuさんに頼りきりで……がんばっていただきました。
澤田 がんばっていただきましたって(笑)……君ががんばれ、ですよね。
のん ありゃ。本当に勉強させていただきながら、やりましたね。

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3 91歳の手と、23歳の手と

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

3 91歳の手と、23歳の手と

澤田 ところで、『暮しの手帖』はまもなく創刊70周年を迎えますが、今まで1ページ目、表紙をめくったところに女優が写っているものってなかったんですよ。
のん 初!?
澤田 そう。で、最近のを調べてみたら、40号、2009年6-7月号の5ページ目に登場するのが……これです〔と、雑誌を取り出す〕……ジェーン・バーキンさん。
のん の、次っ?
澤田 に、のんさん。しかも巻頭です。と、それだけが言いたくて持ってきたんです。
のん 光栄です。ありがとうございます。
澤田 では今回の『暮しの手帖』の巻頭特集についてお話ししていきたいと思います。
〔二つ目のハンガーラック登場〕
 これは今回撮影で使った洋服です。matohuのデザイナー、堀畑裕之さん、関口真希子さんがデザインしてくださり、私たちでつくったものです。長い丈のものもあるし、短いものもあります。大小もある。
のん かわいい。
澤田 そして、今日のんさんが着ているものが、まさに現物。自作の一着です。
のん はい。がんばりました!
澤田 これも、店長が「あの生地を選ばれたんですね!」って(笑)。
のん すごく扱いにくい生地だったので、時間がかかって。matohuさんといっしょにつくりました。
澤田 メキシカンな柄だね! ってみんなで言ってたんですけど。
のん そう、メキシカーン!
澤田 でも説明見たら「チロル」ってありました(笑)。ヨーロッパやん。なので、本当はチロリアン!
のん チロルに住んでるメキシコの人ってイメージです(笑)。
澤田 「直線裁ちのはおりもの」をつくる、という企画だったんですけど、このプラン、最初どう思われましたか?
のん 素敵! と思いました。直線だけでつくれるというのは魅力的ですよね。やっぱりカーブがあるとへんに曲がっちゃうので。そもそも私は、直線を、曲げずに縫うのもむずかしいから。
澤田 はおりものっていいですよね。春のスプリングコートとか、トップコートって言葉も響きもいいし。
のん まさにそうですね。快適で。
澤田 小さな子もお母さんも、老若男女で着られるっていう仕様です。『暮しの手帖』ではいつもそういうものを紹介していきたいと思っているんですよ。「男の人もつくりなさい!」って、まだやったことないぼくが言うのもどうかと思うんですけど、すごく願うんですよ。女性誌とは全然思っていないんです。

◆パン屋さんだあ~っ!

澤田 のんさんは、ファッション撮影とかは得意ですか? 楽しい?
のん 楽しいです。好きです。
澤田 ぼくにとっても、久々のロケ撮影でした。あまり予算のない『暮しの手帖』で、珍しくロケバスを用意して。うれしかったですね。みんなが早朝約束した時間に集まって、プロたちがそれぞれの仕事をきびきびとこなして……。
のん いいですよねえ。
澤田 いいですよねえ!
のん あ、私、この撮影の帰りにパン屋さんで、パンを買いました。
澤田 あ! すみません、お弁当出さないで(焦)。
のん や、そういうことではなくって(笑)、なんか日頃、初めてのお店に入ることがあまりないんですよ。でもこの日は街に出て、『暮しの手帖』の撮影が楽しくて、とても気分よくなって、帰りに歩いていたら、「パン屋さんだあ~っ!」って(笑)。
澤田 麻布十番でしたね。
のん そう。かわいいパン屋さんで、思わず買いました。美味しかった。
澤田 のんさんは、『暮しの手帖』って、直線裁ちを創刊号からやっているって知ってました?
〔スライドで、創刊号のファッション写真を見ながら〕
のん あ、かわいい。「直線裁ちのデザイン」だ。
澤田 モデルは大橋鎭子。
のん わ、とと姉ちゃんですね!
澤田 そうです。創刊が1948年。創刊から自分の手で服をつくっていこうっていう精神のままにここまで来て、今回も、のんさんの手で服をつくっていただいて、またこんなふうに20年30年後も続いていくんだろうなあ、続いていってほしいなあ……と思いますね。
 今回の87号が出たときに、「ひきだし」っていう定例ページを書いていただいている渡辺尚子さんというライターさんからメールが来たんです。それがとてもうれしい文章だったので、その中の一部を紹介させてもらいますね。

「『暮しの手帖』の87号がとっても良くて、それを伝えたくてメールしました。
花森さんのことばの隣に、のんさんの真剣なまなざしのあの写真があることに、まず、力をもらいました。花森さんのことばは、今日も生きているな、と感じました。
そのあとは、のんさんのあの扉写真の手に惹きつけられてしまいました。
女優がものをつくる演技をしているときの手ではなくて、あれは、ものつくりが、ものをつくっているときの指先。
この人は、ものつくりなんだ! と、ハッとしました。
私がうれしかったのはもうひとつ、カンタの望月さんと、のんさんが、同じ号に載ったことです。
64ページの、望月さんがカンタに針を刺そうとしている手と、のんさんの、布にはさみを入れようとしている手は、どちらもまごうことなき、ものつくりの手だと思います。
ものつくりの魂は、作品のなかに宿っているのではなくて、こんなふうに、手から手へ手から手へ手から手へ……と気が遠くなるほど繰り返されながら受け渡されて続いていく、その生活のなかに息づいているのだ、と91歳の手と、23歳の手を見ていて、感じました。
そのことに、大きな勇気をもらいました」

〔場内大拍手〕
のん やったー! ありがとうございます。
澤田 ぼく自身が、『暮しの手帖』ってこういうことなんだな、と教えていただいたようなメッセージでした。
のん 本当に望月さんのカンタ刺繍が素晴らしくて。全部手縫いですよね。
澤田 そうです。
のん 身近にあるものをモチーフにするんですよね。葉っぱとか。これはどのように縫っているんだろう?
澤田 それは望月さんに聞いていただきたい!
のん あ、はい(笑)。
澤田 偶然なんですよね、91歳と23歳が同じ号で、同じ1冊の中で手を使って、ものをつくっているって。でも必然なのかな、『暮しの手帖』においては、とも思いました。
のん 91歳というと……もしかすると今のすずさんと同じくらいかも。
澤田 あ、そう!? それも素晴らしいことですね。
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◆何でも毎回失敗しながらです

澤田  ちなみに今号の『暮しの手帖』、ここのページがよかったとかってありますか? この記事がよかった、とか。編集長のエッセイがよかったとか。
のん あ、えーと、今の望月さんのページ、すごく素敵でしたね。ほかには……ごはん!
澤田 ごはん?
のん えーと、そう、パスタ! 貝殻のマカロニの料理。
澤田 コンキリエですね。
のん イワシとグリンピースのオイルパスタ……か。美味しそう! って思いました。
澤田 のんさんは料理はする方ですか?
のん するっちゃするんですけど……いつも同じものばかりつくるんです。知らない食材とか、使いなれていない食材に挑戦することがなくて。
澤田 得意料理は何ですか?
のん ハンバーグとかですかね。自分が好きなので。こねるところから。刻んだ野菜を入れて、練って。煮込みハンバーグが好きですね。でも毎回上手くいかないんですよね(笑)。
澤田 あ、そうなんですか! ソーイングのときもそうおっしゃってましたね。
のん そうですね。何でも毎回失敗しながらです。
澤田 上達のもとはそれですよね。
〔つづく〕

2 バレとりましたか?

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

2 バレとりましたか?

澤田 みなさん、今日はのんさんがつくった洋服を持ってきてもらっているんですよ。
〔ハンガーラック登場〕
お客さま わあ!〔「すてきー」「すごーい」の声、あちこちから〕
澤田 4着。これらはつくったうちの一部ですよね。
のん そうです。
澤田 つくった順に教えてください。
のん はい。ではこれ……トップスでーす。
澤田 自慢ポイントは何ですか?
のん 自慢ポイントは、この袖の広がったライン……始末したんですけど、中に折り込んでないところが、チャームポイントです。あとですね、ここすごくがんばったんです。初めて、テープ……えーと何とかテープを……えーとえーと……
お客さま 「バイアス」テープ!
のん あ、そう(笑)、バイアステープを初めて使って、つくったんです。ちょっとゆがんじゃってるんですけど、自分では気にいってます。
 次はこれ。NaniIRO(なにいろ)さんっていう作家さんのガーゼの布……絵の具を乗せた柄の作品が好きでつくってみたんですけど、このふわふわ袖がポイントです。流行ってる!
澤田 流行ってるんだ?
のん そう、流行ってる! そうだ、あと、ここがきれいになっているんです。「バイアス」テープのところ。〔場内笑&拍手〕
澤田 バイアス、覚えました。
のん 前のよりも技術が上がっているところがポイントです。
澤田 では、三つ目。

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1 洋服づくりで一番楽しい瞬間って、どんなときですか?

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87号刊行記念イベント 2017/4/10/19:00〜  「のんの愛する洋服づくり」
のん×澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
東京堂ホール(神田神保町/東京堂書店)  写真 長野陽一

巻頭特集「直線裁ちでつくる 春の はおりもの」で、ソーイングに挑戦した女優にして“創作あーちすと”の、のんさんとのトークイベントです。
趣味の縫い物のこと、『この世界の片隅に』のこと、最新刊のこと、質問コーナー……等々、「しゃべるのは苦手」というのんさんが、気づけばたっぷりお話ししてくれた貴重で愉しい記録です。
あっというまに満席となったイベントの、のんびりほっこり、笑いでいっぱいの幸福な空気感を、来られなかった皆様にもぜひお伝えしたく、できるだけ進行のままに再現しました。
のんさんの愛らしい、独特の間合いも、ぜひお楽しみください。
全5回でおとどけします。

1 洋服づくりで一番楽しい瞬間って、どんなときですか?

澤田 こんばんは!
お客さま(約100名) こんばんは!
澤田 長らくお待たせいたしました。いつも『暮しの手帖』をお読みいただきありがとうございます。編集長の澤田です。こんなところでそれらしくしゃべっていますけれども、まだ就任して1年ちょっとくらいしか経っていない新米編集長です。そして今夜はエラそうにいろいろしゃべるかもしれませんけれども、あわてて前置きしておきますと、ソーイング能力ゼロです。そのあたりをご理解の上、お話を聞いていただければと思います。
 ぼく自身にとって、のんさんって、今回の撮影で少しだけ時間をともにして、なんか「親戚の子」みたいなイメージになっているんですよね。ひょっとしたら、みなさんにとってもそんな存在なのかも、というような気もします。
 さあ、では紹介しましょう。のんさん、どうぞ!
のん 〔登場〕みなさん、こんにちは。のんです。今日はよろしくお願いいたします。
〔場内拍手。プレス撮影後、着席して〕
澤田 お水いる?
のん 大丈夫です。
澤田 遠慮せんといてね……と、こんな感じでアットホームに行きたいと思います。なぜかね、ぼくは、親しい人、身近に感じる人とかに会うと関西弁になりがちなんですよ。イトコの子が来た、ゆっくりしてきや……みたいな。のんさん、関西ですよね?
のん はい、兵庫県から来ました!
澤田 ようこそいらっしゃいました!(笑) でも全然関西弁出ないんですね。
のん 敬語だと出ないんです。
澤田 そうなんですか。してはる、とか言うたらいいやん……。
 さあさて、このテーブルの上、本がどさっと載っていますけど、まずはこの最新刊『創作あーちすと NON』……買いました。

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【暮しの手帖 創刊70周年記念企画】「戦中・戦後の暮しの記録」を募ります  “聞き書き”もぜひお寄せください

2017年05月17日

87号、164頁の特集記事はもうご覧いただけましたか? 編集部には、毎日少しずつ原稿が届いております。
今回の募集では、体験者ご自身の執筆はもとより、戦後生まれの方には、体験者の話を聞いて文章にする“聞き書き”を呼びかけています。この機会に、ぜひ身近な方から話を聞いてみてください。直接当時の話を聞くことができる年月は、そう長くは残されていないはずです。
戦争がいかに残酷で悲しいものか、戦後どれほどの苦労をしてきたのかは、体験者しか語ることができません。だからこそ、記録として残し、後の人たちに伝えなければと考えています。どうか、ふるってご応募ください。(担当:村上)

※募集要項は、『暮しの手帖』87号(2017.3.25発売)、88号(2017.5.25発売)、89号(2017.7.25発売)をご参照ください。3号連続で「原稿募集」の特集をしています。または、暮しの手帖社の下記ホームページをご覧ください。
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/70th

暮しの手帖87号「川の学校の子どもたち」

2017年04月25日

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自宅から電車、飛行機、車を乗り継いで約4時間。
私たちが向かったのは、徳島の美波町。
ここに、日本中をカヌーで旅した、作家でカヌーイストの野田知佑さんをして、「日本一美しい」と言わしめる川があると言います。
なぜ、そんな場所に『暮しの手帖』編集者が?
野田さんが17年続ける、「川の学校」に取材するためなのです。
川の学校の約束は二つ。
川で遊ぶこと、なにをやってもいいということ。
安全を守るため以外には大人はいない、子どもだけの世界で2泊3日のキャンプを年間5回行います。
川と戯れながら、生きる術を学び、立派な川ガキへと育っていく。
野田さんは言います。
「川には普通の学校にはないものが、みんなあるんだ」
それは、子どもたちの笑顔やくたくたに疲れ果てた表情を見ればわかります。
あぁ、もっとはやく川の学校を知っていれば……。そう思わずにはいられない取材でした。

今回、私たちは、徳島県・日和佐川での「川の学校」を取材しました。
3日間の取材で延べ1000枚ほどの写真を撮影し、掲載できたのは約30枚。でも、このまま秘蔵にしてはもったいない。
ということで、アウトドアブランド「モンベル」に特別協力いただき、ごく一部ではありますが、未掲載の写真を含めて写真展を行うことになりました。
展示場所は下記の2カ所となっております。

・モンベル東京京橋店:4月22日(土)~30日(日)
・モンベル神戸三宮店:5月6日(土)~14日(日)

A1判の大きなサイズでプリントしております。ぜひ足をお運びいただき、子どもたちの笑顔と美しい自然をご覧ください。(担当:矢野)

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暮しの手帖87号「今日の買い物 熊本へ」

2017年04月24日

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 朝日に照らされたうつくしい熊本城にはじまり、ユニークなディスプレイが印象的なアクセサリー店や、人とワインとをつなぐ自然派ワイン店の店主のおはなしなどなど、熊本の魅力的な人やお店をご紹介している今号の「今日の買い物」。
 連載の執筆者である岡本仁さんに熊本について書いていただくのは、実は、今回が2回目。1回目に書いていただいたのは、昨年の3月末でした。岡本さんから原稿をいただき、レイアウトも仕上がり、あとは取材先へ確認をとるだけ……という段階で、熊本地震が起きたのです。
 地震の被害でたいへんな状況にもかかわらず原稿のお返事をくださる取材先もあり、予定通り記事を掲載したいという思いもありましたが、岡本さんと相談をした結果、地震後の熊本に足を運んで再取材をしたうえで、あらためて掲載をしよう、ということになりました。
 今年の2月、二度目の熊本取材が終わり、誌面構成の打ち合わせをしていたときのことです。岡本さんは「地震については、あまり書かないと思います」といいました。地震後、いくども熊本に足を運び、街を歩き、言葉を交わすなかで、熊本で暮らす人々はみな、前を向いていると感じたのだそうです。だから、いまのその空気を伝えたい、と話してくれました。
 後日、岡本さんから届いた原稿には、こんな言葉がありました。
「前に進む熊本は、これまで以上の魅力を持った街に、きっとなるだろう」
 いきいきとした人と場にあふれたいまの熊本を、誌面を通して感じていただけたらと願っています。(担当:井田)


暮しの手帖社 今日の編集部