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家族のために、そして自分のために

2024年02月01日

家族のために、そして自分のために
(28号「家族が認知症になったら」)

「実の親のこととなると、なかなかうまくいかなくて」
これは、認知症のお母さまと暮らしている、ある介護職に就いている方が、ふともらした言葉です。
他人ならばさりげない声かけができるのに、家族にはつい厳しい伝え方になってしまう。家族だからこそ、難しい。介護は特に、そんなふうに感じる場面が多いかもしれません。
この企画では、認知症の親の介護と向き合っている2組のご家族のほか、数多くの現場に携わってきたケアマネジャーとホームヘルパー、そして、当事者や家族が安心して相談できるような取り組みを行っている方々にお話を伺いました。
取材先でたびたび耳にしたのは、「現場の人の力を借りてほしい」「家に閉じこもらないで、外の人を頼ってほしい」という言葉です。
家族のあり方がそれぞれ違うように、介護のかたちもさまざま。ひとつの正解はありませんが、家の外に目を向けると、たくさんの手が差し伸べられているのだということに、取材を通して気づきました。
今、まさに介護と向き合っている方にも、今後のために知っておきたいという方にも、このページが一助となることを願っています。(担当:井田)

自分の暮らしは自分で作る

2024年01月31日

自分の暮らしは自分で作る
(28号「自分ルールでいい」)

みなさんは、いまの暮らし方に満足していますか? 理想の暮らしとはほど遠い、と嘆く方もいらっしゃるかもしれません。では、あなたの「理想の暮らし」って、具体的にどんなものでしょう? 
今回の企画は、生活研究家の阿部絢子さんに掃除法を取材した際のやりとりから生まれました。
「阿部さんはふだん、どのように掃除をしていらっしゃるのですか?」
「ホコリを見かけたら、すぐに手でつまんで、ごみ箱にポイ! だから掃除機は頻繁にかけませんよ」
「掃除機をかける目安はないんですか?」
「そんなの、自分が気になったときよ! 一人ひとりの暮らしは違うでしょ。だから自分で決めたらいいのよ」
その言葉に衝撃を受けました。「掃除機は、何日に一度はかけるべき」などの答えを私は期待していたのです。けれども確かに、阿部さんがおっしゃる通り、家の作りや家族構成によって、それぞれ違うはず。人と違っても、自分が心地よいと感じればそれでいいと、阿部さんはきっぱり言います。
聞けば阿部さんは、パッと買ったマンションに収納が少なくて悩んだ経験から、自分の性格や理想とする暮らしをとことん見つめ直し、こつこつと整えてきたそうです。「掃除が嫌いだから、楽にできる工夫を重ねる」「人と集うことが好きだから、大きな座卓は譲れない」。そんな阿部さんの、これまでの試行錯誤や、家事や生き方の指針についてたっぷり語っていただきました。阿部さんの経験を参考に、あなたにとっての暮らしの「自分ルール」を考えてみませんか?(担当:平田)

落としブタで煮ものが変わる

2024年01月30日

落としブタで煮ものが変わる
(28号「ひと味違う 煮もののコツ」)

一昨年、23号「季節を味わう 和のおかず」の取材で、日本料理店「てのしま」の林亮平さんを訪ねたときのこと。紹介するメニューを相談しているうちに、木製の落としブタのことが話題にのぼりました。「持っていない場合は、アルミホイルで代用してもいいですか?」そんなふうに私が尋ねたのかもしれません。林さんの口調が一気に熱を帯びて、「木製の落としブタには適度な重さがあるから、煮崩れるのを防いだり、煮汁を対流させて味を均一に含ませることができる。木製の落としブタを使う理由があるんですよ」ときっぱり。それまで、なぜ煮ものに落としブタを使うのかを深く考えたこともなかった私は、衝撃を受けました。
そして、落としブタについて、煮ものについて、林さんにもっと詳しく教えてほしいと思ったことが、今回の企画の始まりになりました。

この企画では、落としブタのほかにも、煮ものをおいしく、見た目にも美しく作るためのコツをご紹介しています。カレイ、サワラ、カキ、イワシなどの魚介類、里いも、かぶ、れんこんなどの野菜を使ったいろいろな煮ものが、コツを実践することで驚くほど簡単においしく作れますので、ぜひお試しください。
木製の落としブタをお持ちでない方は、この機会にお求めいただくのはいかがでしょうか。お近くの金物屋さんや百貨店などで、1000円前後で購入できますよ。使ってみると、きっと林さんの言葉の意味を実感していただけると思います。(担当:田村)

大人気企画の第二弾です

2024年01月29日

大人気企画の第二弾です
(28号「新・塩豚のおかず」)

困ったときの救世主となる「塩豚」。今も冷蔵庫に仕込んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

4世紀93号(2018年)にて、「塩豚のおそうざい」としてさまざまなレシピを紹介しました。わたしもそんな塩豚に助けられている一人ですが、編集部内から「もっといろんな塩豚レシピを知りたい」という声があがり、第二弾が立ち上がりました。

今回ご紹介するのは、料理研究家の荻野恭子さんによる、〝荻野流〟塩豚レシピ。塩だけではなく砂糖も合わせてすり込むことで、塩の浸透力を高め、しっとりと発色よく仕上がります。また、荻野さんご自身がだんだんとかたまり肉を買わなくなってきていることから、今回は手に入りやすい「厚切り肉」と庶民の味方「切り落とし肉」を塩豚に。中華、洋食、エスニック料理に展開していきます。

最初にどーんと登場するのは、塩豚のシュウマイです。うま味たっぷりの塩豚ですから、タネに調味料は不要。切り落とし肉をたたいて、玉ねぎのみじん切りと合わせて包むだけ。たたくなんて手間じゃない? などと言わず、一度お試しください。歯ごたえのある豚肉の食感がくせになり、もうひき肉のシュウマイにはもどれなくなるかも……。

同じタネと残りのシュウマイの皮で作る、揚げワンタンもご紹介します。同じ材料と思えない仕上がりで、こちらはおつまみにもおやつにもぴったりのひと品です。

そのほかにも、塩豚と大根の炒めもの、塩麻婆豆腐、ポトフにリエット、カレーまで、塩豚のうま味を最大限に活用した8品をご紹介します。(担当:小林)

手の上の、小さな白鳥

2024年01月26日

手の上の、小さな白鳥
(28号「夢のスワンシュー」)

白鳥の姿をした、スワンのシュークリームをご存じでしょうか。思わず笑みがこぼれる、なんとも愛らしいお菓子です。繊細で、パティシエのなせる技だと思っていましたが、なんと、家庭でも手作りすることができるのです。
今回、菓子研究家のいがらしろみさんに、作り方を教えていただきました。

「コンビニでもシュークリームが買える時代だけれど、手作りのおいしさってありますよね」と、いがらしさん。撮影では、丸い尾がアクセントのスワンたちが次々に誕生し、その可愛いさとおいしさに歓声が上がりました。輪を描くように並べると、なんだか北国の湖が目に浮かんでくるようです。
意外にもむずかしいことはなく、手軽に作れますし、小ぶりなので2つくらいは食べてしまいます。
家庭で作るお菓子には、市販品にはない大らかさ、温もりがあるように感じます。きっとお子さんにも喜ばれることでしょう。
ぜひ、たくさんの方に、楽しんで作っていただけたらうれしいです。(担当:佐藤)

普通の暮らしのありがたさ

2024年01月25日

普通の暮らしのありがたさ
――編集長より、最新号発売のご挨拶

こんにちは、北川です。
早いもので、すでに1月も終盤です。みなさまも、お正月の温もりを胸に、日々の家事や仕事にいそしんでいらっしゃるのかな、と想像します。
私は大晦日の午前より、石川県珠洲市に出かけていました。22号の特集記事「湯宿さか本 坂本菜の花さん 普通をしっかりやっていく」を、ご記憶の方もいらっしゃるでしょうか。珠洲の里山に佇むこのお宿では、年末年始をお客さんたちと賑やかに過ごすのが恒例とのことで、そこに私も混ぜていただいたのです。
各地から集まった人びとと坂本さん一家、総勢20人あまりで、大掃除、餅つき、グループに分かれて蕎麦打ち大会。元旦は、お節を盛りつけていただき、海辺の「須須神社」へ初詣に出かけました。
あの地震が起こったのは、夕食前にみなでくつろいでいたときのことです。立っていられず、ただうずくまって頭をかばうだけ。近くにいた女性は、9歳の少年をしっかり抱き抱えてうずくまっていました。幸い、建物は窓ガラス一枚割れず、けが人も出ず。しかし、翌日に周辺を歩いてみると、半壊した家も多く、アスファルトには大きな地割れが走っていました。
地震当日の夜は、念のために高台にある消防署の駐車場に避難し、初めての車中泊。ここには電気が通っていて、こうこうと光る街灯のそばに車を停めたので、私はその灯りのもとで本を読むことができました。清潔なトイレが使えないストレスや、「いつ帰京できるだろうか」という不安はありましたが、ページにぼんやり浮かぶ言葉を追っている間は、心が静まったものです。

それから数日間の出来事は、最新号巻末の「編集者の手帖」に書きましたので、お読みいただけたら幸いです。人の手で作られた温かな食事をとること、お風呂にゆっくり浸かり、寝床で体を伸ばして眠ること。そんな「普通の暮らし」のありがたさが身に染みましたし、同時に、いまも不自由を強いられている方々のご苦労を思います。
今号では「漆器を使ってみませんか?」という特集記事を組んでおり、ここに掲載した漆器の多くは、輪島に根ざした作り手によるものです。私も幾度か訪れたことのある輪島は、鈍色の民家が建ち並ぶ、慎ましい風景が魅力の街ですが、ご存じのように、今回大きな被害を受けました。
しかしながら、作り手がいて、求める人がいる限り、輪島の漆芸産業は必ずや復興するはずです。被災した方々が一刻も早く、穏やかな暮らしを取り戻せることをお祈りいたします。報道がしだいに下火になっていったとしても、ささやかでも自分ができる支援は何か、考え続けていきたい。そう思います。

ロシアとウクライナの戦いは2年近く続き、昨秋からは、パレスチナのガザ地区で戦争が勃発、子どもをはじめとする民間人の虐殺に対し、日本でも抗議の声が上がっています。一方で、「日本も自国の安全のために、防衛力(抑止力)を高めるべきでは」という意見も聞かれます。他国に攻め込まれないために、威嚇として武器を持っていたほうがいいのでは、といった考えですね。
そんな「いま」の状況を考えたとき、思い浮かんだのは、初代編集長の花森安治が冷戦の時代に書いた「武器をすてよう」でした。この文章は、ちょっと意外なほど呑気な調子で始まり(地球上で暮らすいろんな国の人々のユーモラスな描写)、読者の心を惹きつけておいて、しだいに本題へと切り込んでいくようなつくりとなっています。
訴えていることはごくシンプルで、まさに「武器をすてよう」。いまの時代なら、「お花畑的な思想じゃない?」と笑う人もいるかもしれません。
でも、はたして本当にそうでしょうか。花森は、そんなふうに笑う人も想定して、これを書いたように私には思えるのです。

この文章を今号に載せるにあたり、私たちの大先輩である元編集部員で、花森と20年ほど仕事をした、河津一哉さんに話を伺いました。
花森が「武器をすてよう」を発表したのは、『暮しの手帖』第1世紀97号(1968年)。一冊丸ごと、読者の投稿による「戦争中の暮しの記録」を特集した96号の、翌号でした。96号が大きな反響を呼んだことから、花森はある達成感を抱いて「武器をすてよう」を書いたのではないか、そう河津さんは話します。
しかし、それから数年後、1970年代に入って学生運動が盛んになった頃には、花森は、変わりゆく日本の状況に「苛立ち」を覚えていたように見えたといいます。若い編集部員が戦争にまつわる軽々しい発言をすると、花森はひどく怒り、デモに行きたいというある編集部員には、こんなふうに話したといいます。
「気持ちはわかるが、きみがジャーナリストを志すなら、それよりもまず、ペンの力を磨け。人の心を動かすような文章が書けなければ、ぼくらは押されていってしまうんだぞ」
大きな力に押されていかないために、何を書き残すか。「武器をすてよう」は、やがて改稿のうえ、自撰集『一銭五厘の旗』に収録されました。花森の遺言の一つとも言えるこの文章を、いまこそお読みいただけたら嬉しく思います。

表紙画は、画家の今井麗さんによる「FLOWERS」。ひと足早く、春をお届けいたします。12本の特集記事は、明日より一つずつ、担当者がご紹介しますね。
寒さはこれからが本番です。どうぞご無理のないように、身体を休めながらゆったりとお過ごしください。

『暮しの手帖』編集長 北川史織

新刊『有元葉子 春夏秋冬うちの味』刊行のお知らせ

2024年01月24日

今週から発売の有元葉子さんの単行本をご紹介いたします。この本は、季節ごとの旬の食材を生かした、毎日のおかずのレシピ集です。そして、料理の作り方だけでなく、「食べることは暮らしの根幹」ということを真ん中に据えて編んだ一冊です。

「母から料理を教わったことはないけれど、今のわたしの料理の基礎は母の味です」
著者の有元葉子さんはそう話します。
「子どものころは、台所に立つ母のそばで『小さなお味見係』をしていたんですよ」と。
たとえばちょうど今のような冬の夕方、湯気の立ちのぼる鍋から、小さな里いもを菜箸に刺して渡してくれた思い出などは深く心に残っているそうです。「そんなふうにして、煮具合や味つけの加減など、母の料理が自然に身についていったのでしょう。味の記憶があれば、不思議と自然に作れるものです。そして、そんな『うちの味』があるって幸せなことだなあって思います」と有元さん。

みなさんには「うちの味」はありますか?
合わせ調味料やレトルト食品、出来合いのおかず。便利で助かりますが、そればかりでは、「うちの味」にはなりません。とは言っても、気持ちも時間も、料理に向けられない日があるのも現実です。
そんなときは、と有元さんは話します。
「全部の料理を手作りする必要はありません。ひと品でも作ったものを食卓に上げればいいのです。ときには外食や、買ってきたもので済ませる日があってもいい。でも、たいていの日は『自分で食べるものは自分で作る』という心持ちでいることが大事です」と。
だから、できる範囲で作ればいいのです。そして、旬の素材はそれだけでおいしいもの。料理はシンプルでいいのです。
「料理上手になるには、失敗することも必要です。私だって今も失敗ばっかり。でも、だからこそ『じゃあ、どうすればいい? 次はこうしよう』と考えるでしょう。それが大事なんです」

冒頭のお母様の料理の思い出や、こうした有元さんの「食」への想いなど、エッセイもたっぷり載った読み応えもある一冊です。また、大きなプロセス写真で、見るだけでも料理の手順がわかりやすいのもこの本の特長。ぜひ、この本のレシピをくり返し作って、いろいろとアレンジして、あなたの「うちの味」にしてください。(担当:宇津木)

本の概要はこちらからご覧いただけます。

『有元葉子 春夏秋冬うちの味』
暮しの手帖社オンラインストア限定企画

【特典1】
新刊の発売を記念して、有元葉子さんのサイン本をご用意しました。
先着50名様限定で販売いたします。
この機会に、ぜひお申し込みください。

【特典2】
オンラインストアからお申し込みの方には、送料無料でお送りいたします。
決済時に下記のクーポンコードを入力してください。
※1冊のみ有効。2冊以上もしくは他の商品と同時に購入される場合、クーポンは無効とさせていただきます。

コード:arimotokt75
(有効期限2月末まで)

ご購入は<暮しの手帖社オンラインストア>から。
特典は予告なく終了する場合がございます。あらかじめご了承ください。

良いマッサージのヒントとは

2023年12月14日

良いマッサージのヒントとは
(27号 10分でスッキリほぐします)

いよいよ冬本番ですね。寒さで肩や背中が縮こまり、ガチガチになっていませんか。そんなときに試していただきたいのが、ペアで行うマッサージです。

頭、肩、背中のマッサージや、肩こりなどに有効なツボを教えてくださったのは、目白鍼灸院の柳本真弓院長。「良いマッサージにはコミュニケーションが欠かせない」と柳本さんはおっしゃいます。マッサージをする側は、相手に聞きながら痛いところの有無や気持ちがいい力加減などを確認すること、また、受ける側も率直に希望を伝えると良いのだそうです。そうやってマッサージを進めていくと、不思議なことに、受ける側の感じる心地良さが伝わり、マッサージをする側もリラックスできるのだそう。わたしも家族を相手に試しましたが、お互いになんとも充実した気持ちになりました。

ツボの名前や効能などを覚えなくても、イラストを見ながら一連の流れをやってみるとスッキリほぐれます。約10分とコンパクトな時間設定なので、お風呂上りなどのちょっとした時間にぴったりですよ。年末年始の帰省時に、ふだんは離れて暮らすご家族との親睦を深めるきっかけにしていただけたらうれしいです。(担当:中村)

年末年始におすすめの、和食のご提案です

2023年12月13日

年末年始におすすめの、和食のご提案です
(27号「気負わずに、ハレの日の和食」)

家族や友人など気の置けない人たちと、おいしいものを囲んでゆっくりおしゃべりをするのは、年末年始ならではの楽しみですよね。そのお料理が、シンプルな手順で作れて、気持ちが華やぐようなものなら、なおうれしい……。
そんな思いから、料理家で唎酒師でもある吉田愛さんに、手軽にできる3種の酒肴をはじめ、事前に作っておける牛スジ大根の塩煮込みや、すだちをしぼっていただく和風フライドチキン、〆におすすめのブリしゃぶや炊き込みご飯などを教えていただきました。
どのお料理もとてもおいしいのですが、コトコト煮るだけでできる牛スジ大根の塩煮込みは、澄んだスープが滋味深い味わいで、くり返し作りたくなること間違いなし。
お好みの品を選び、一品くらいずつ出して、のんびり味わう趣向です。年末年始には、誌面でご紹介した順番の通りに作ってみたいなと、今からわくわくしています。肩肘張らずにできるお料理ばかりですので、お試しください。(担当:井田)

地元・浅草の楽しみ

2023年12月12日

地元・浅草の楽しみ
(27号「行事でめぐる浅草暮らし」)

「浅草」と聞いて、何を思い浮かべますか? 浅草寺、雷門、そば屋や和菓子店、花やしきなどがあり、年中賑わう観光地というイメージを持つ方が多いでしょう。そんな浅草に住んでいる写真家のローラン麻奈さんに、日々の暮らしについて綴っていただきました。
「浅草暮らし」というと、いかにも和風な感じがしますが、誌面は本格的な樅の木のクリスマスツリーの写真から始まります。
麻奈さんは、嫁入り道具として、正月のお重と屠蘇器を幼い頃から準備されるような家庭で育ちます。一方、アメリカ好きの父や、フランス人の夫の影響で、様々な国の文化に親しむようになりました。
麻奈さんのご自宅は、戦後、下駄の鼻緒問屋を営んでいたという借家で、和洋折衷の一風変わった造り。洋室にはクリスマスツリーを、和室の床の間には正月の餅花と鏡餅や、雛祭りにはご実家から受け継いだ雛人形を飾ります。
めぐる季節を心待ちにし、行事にちなんだ「食」やしつらえを愉しむ麻奈さんの日常には、和洋の季節のお菓子がふんだんに登場します。食いしん坊の麻奈さんならではの描写も楽しく、読んでいるとお腹がすいてきます。そして、「地元・浅草」を感じられるのでした。(担当:平田)

芸術はすべての人のそばに

2023年12月11日

芸術はすべての人のそばに
(27号「彫刻家はしもとみお 彫るために生きる」)

この20年、動物ばかりを彫り続けてきた、彫刻家のはしもとみおさん。本企画では、そのアトリエ兼住まいにお邪魔し、創作するうえで大切にしていることや、芸術を志したきっかけなどについて伺いました。
「暮らし」を大切にしながらも、一日の中心に創作を据えて生きるはしもとさん。彼女は、「芸術は選ばれた人のためのものではない」「創作は芸術家だけに許されたものではない」とも語ります。
取材中、はしもとさんのそばを片時も離れず、ぴったりと寄り添う愛犬・月(つき)君の姿がありました。1人と1匹暮らし。月君に対する、はしもとさんの態度は愛情深くも、「猫(犬?)可愛がり」とはちょっと違って、むしろ「対等」といった方がぴったり。そこに、はしもとさんの動物全般へのまなざしを垣間見たような気がしました。
誌面では、創作風景やアトリエの写真もたっぷりとご紹介しています。部屋のあちこちにたたずむ動物たちの息づかいを感じていただけたらと思います。(担当:島崎)

お茶の時間を豊かにするケーキ

2023年12月08日

お茶の時間を豊かにするケーキ
(27号「サンデーベイクショップのビクトリアケーキ」)
試作するたび、「スポンジがしっとり、きめ細かい」「レモンカードの甘酸っぱさがよく合う」「バタークリームが入るとリッチな味わいになるね」……と感想が飛び交ったのが、今回ご紹介するビクトリアケーキです。
教わったのは、東京は幡ケ谷でイギリス菓子の店「サンデーベイクショップ」を営む、嶋崎かづこさん。嶋崎さんの作る焼き菓子は、小麦粉の豊かな風味をしっかりと感じられて、繰り返し食べたくなる。そんな味わいが、連日行列ができるほどの評判を呼んでいます。
ビクトリアケーキは、イギリスでは紅茶に合わせる定番のケーキ。手軽に作れて、スポンジに挟むジャムなどを変えながら、一年中楽しめるのもよいところです。粉砂糖をかけた姿は愛らしく、おもてなしのシーンにもおすすめですよ。

嶋崎さんに伺うと、しっとりきめ細かなスポンジケーキに仕上げるコツは、混ぜ方にあるとのこと。材料同士がボールの中でぶつかり合って、しっかりとつながるイメージで、大きくゆったり、よくすり混ぜてみてください。力いっぱいガシガシ混ぜると、焼き上がりがパサッと乾いた感じになってしまうそうです。
スポンジに挟むものは、定番の「イチゴジャムとバタークリーム」、甘酸っぱさがスポンジのおいしさを引き立てる「レモンカード」、生クリームとイチゴの「ショートケーキふう」の3種類をご紹介しています。
失敗知らずのこのレシピ、どなたでもおいしく作れますから、冬休みにお子さんと一緒につくるのも楽しい思い出になると思います。年末年始の集まりや、ふだんのお茶の時間にも、紅茶をたっぷり淹れてどうぞ。
(担当:佐々木)


暮しの手帖社 今日の編集部