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白菜、大根……丸ごと買っても大丈夫!

2017年11月29日

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白菜、大根……丸ごと買っても大丈夫!
(91号「野菜を丸ごと使いきりたい」)

スーパーや八百屋で、いつも迷うことがあります。
それは、野菜を丸ごと買うべきか、はたまた1/2などカットされたものにするべきか……ということ。
もちろん前者のほうが新鮮でおいしいのですが、「今日も白菜、明日も白菜だと飽きるかな」という思いが脳裏をかすめ、あらかじめカットされたものを選ぶことが多くなっていました。
野菜が新鮮なうちに、飽きずに食べきるにはどうしたらいいのだろう。
そんな問いに対して、料理家のウー・ウェンさんはほがらかに笑いながら、
「わが家では、どんな野菜でもあっという間に食べきってしまいますよ! その秘訣は、切り方にあるんです」と話してくださいました。
白菜といえば鍋ばかりのわが家でしたが、ウーさんにレシピを教えていただいてからは、葉と軸に分けて、葉はセンイを断ってざく切りにして豆腐とともに蒸し煮にしたり、軸は細切りにして花椒(ホワジャオ)を効かせた炒めものにしたり、ぐんとレパートリーが増えました。
白菜のほかにも、大根やごぼう、長いもなど冬においしい野菜を通して、ウーさんの多彩な切り方とレシピをご紹介しています。切り方によってさまざまに変化する食感と味わいを、ぜひお楽しみください。(担当:井田)

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私にも、詠めるかも

2017年11月28日

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私にも、詠めるかも
(91号「奥村晃作さんのただごと歌」)

とつぜんですが、皆さん、「短歌」にはどんなイメージがありますか? 「高尚そう」? 「難しそう」? 「あれ、川柳や俳句となにが違うんだっけ」、なんて方も、いらっしゃるでしょうか。
なじみのない人にとっては、ちょっと遠いもののように感じられるかもしれませんが、歌人の奥村晃作さんは、「短歌は誰でも詠めるものですよ」と仰います。「人の心は常に動いています。大きな感動でなくても、小さな心でも、歌にすることはできるんですよ」。
現在81歳。奥村さんは、自分の作品を「ただごと歌」と呼び、身の周りにあるもの、日常に起きることを題材に、平易な言葉で短歌を作り続けています。本号の企画「奥村晃作さんのただごと歌」では、奥村さんに、短歌のおもしろさや奥深さ、ご自身の創作について伺いました。

ひとつ、ふたつ、奥村さんの作品を紹介してみましょうか。「ただごと歌」がどんなものか、お伝えするには、きっとそれが一番です。
まずは、私が大好きな歌を。

犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの

なんだか、とても可愛い歌だと思いませんか。ストレートな描写から、犬のさま(いつもニコニコしてこっちを見てる!)や手のひらに伝わる体温がまざまざと思い起こされますし、それを「凄き生きもの」として、奥村さんがいちもく置いている様子なのも、ほほえましく思えます。

 もう一首。

海に来てわれは驚くなぜかくも大量の水ここに在るのかと

いくつのときに詠んだ歌なのかは、わかりません。でも、もちろん、大人になってから詠んだ歌のはずなんです。なのに、子どもみたいに、まるきり新鮮に海を受け止めている。この歌に接して、私は、「短歌というのはこういうふうに、目を見開いて、世界に感動することからはじまるのかもしれないな」と思いました。

奥村さんのように、まっさらな目で日常を眺め、小さなことも心に留めて、それを伝わる言葉で表現できたなら。きっと、すてきですよね。
ということで、今回の企画では、皆さんからも短歌を募集することにしました。特集をお読みになって、奥村さんの世界を堪能したら、ぜひ、皆さんもご自身の「ただごと歌」を模索してみてください。お題や投稿のルールなど、詳細については誌面でご確認を。個性あふれる作品を、楽しみにお待ちしています。(担当:島崎)

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あなたはフランス料理を作ったことがありますか?

2017年11月27日

あなたはフランス料理を作ったことがありますか?
(91号「こんなフレンチ、知っていますか?」)

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あなたは、フランス料理を作ったことがありますか?
いやいや、それはレストランで食べるものでしょ……と思う気持ち、わかります。
私もまさに!そうでした。
でもそんな方にこそ、ぜひご紹介したいのがこのフレンチです。
教えてくださったのは、料理家の渡辺麻紀さんです。
渡辺さんは、フランス料理研究家・上野万梨子さんに師事後、料理学校の名門ル・コルドン・ブルーに勤務し、フランスとイタリアへ料理留学されました。
料理するのはもちろん、食べるのも大好きで、世界各国のおいしいものの話をして盛り上がると、勢い余って目の前の人をハグしてしまうような、朗らかなお人柄が魅力です。

「クラシックなフレンチといえば、数時間かけて肉や野菜を煮込んでフォン(ダシ)をとり、たっぷりのバターと生クリームを使って濃厚なソースで仕上げるもの。
でも、1970年代にヌーベル・キュイジーヌ(フランス語で、新しい料理の意)が提唱されると、調理時間は短縮され、あっさりと軽やかな味わいになりました。
そしてさらに、最近は、しょう油やみりん、海苔、麹など、和の食材を使って作る新しいフランス料理(言ってみれば、ヌーベル・ヌーベル・キュイジーヌ!)が、北欧やオーストラリア出身のシェフによって生み出され、世界各地で広がりを見せています」

「素材の組み合わせ方が新鮮で、個々の味が引き立ち、それもおいしい。
皿にアシンメトリーに盛りつけられた様子は、美しくて、心も華やぐのよ」

「絵を描くように盛りつけたら、料理って楽しいなあ……って、心の底から感じられると思う。肉じゃがを作れる人ならみんな作れる位、ほんとうに作りやすいレシピを提案して、毎日、家族のために料理してきた人に、作ってほしいな」

編集部一の田舎育ち、フレンチをいただいた経験もそう多くなく、作ったこともなかった私が、試作を重ね、わかりにくい箇所の書き方について、何度も先生にご相談して記事にまとめました。

試作した料理を盛りつけ、編集部のみんなに出して、「きれい!」「おいしい!」と言ってもらえたときの、うれしかったこと!
幾つになっても、「初めて」を経験するドキドキとワクワクは、いいものです。

4品から成るコースが、3時間かからずに、完成します。
この冬、ぜひとも腕を振るってお楽しみください。

※写真を撮影してくださったのは、長嶺輝明さんです。
お料理の美しさ、お皿に映るドラマチックな陰影も、ぜひぜひ堪能していただけたらうれしいです。
(担当・長谷川)

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港港に友のあり──編集長より最新号発売のご挨拶

2017年11月24日

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コンニチハ。
みなさんはどんな秋をお過ごしでしたか?
ぼくの秋は、京都、滋賀、徳島、高松、盛岡、三浦半島……と、公私ともどもけっこうあちこちしましたよ。
狭い日本ですが、タテには長いので、季節の変わり目はその違いが如実に出ます。
先日、京都で迎えた朝、めずらしく娘を小学校まで見送りがてら一緒に歩きました。娘はまだ手をつないでくれますが、友だちを見かけるとぱっと手を離す、小学5年生です。大きくなっちゃったなあ。
……なんて話はともかく、京都の寒い寒い早朝、凍えるような舗道には、イチョウの葉が今を盛りと真っ黄色に色づき、朝の陽光を浴びてきらきら輝いています。
一方で東京はというと、まだこれから。そう、東京の町が黄色く色づく盛りは12月なんですよね。

盛岡は、花森安治展があって9月の末に訪ねました。いつもはどこに行っても、呼び出すのが「その地の友人」というやつですが、盛岡の友は全員東京に出ているので、ああさびしく日帰りかあ……なんてがっかりしていたら、講演会に突然現れたのがIくん。もう10年ぶりくらいかなあ。以前ぼくが遊びで短歌会をやっていたときに知り合った仲間です。
なんだあ、今は盛岡なのかあ!「ちょっと太ったねえ」「サワダさんこそ」「講演後、飲みに行かへん?」「いいっすよー」
と、まことに軽いやりとりで、こういう感じ、ぼくは好きだ。
Iくんは、「12万キロ走った」という軽自動車で市内を案内してくれたあと、〈光原社〉にもつきあってくれ、さらに駅前の〈ぴょんぴょん舎〉へ。焼き肉と冷麺に、なつかしい友人という、うれしい夕べ。結局新幹線の終電近くまで相手をしてくれました。こういう展開、大好きです。
港港、町という町に友のあり、が人生の醍醐味であると、ぼくは信じて生きる者です。
先日はその盛岡の友から「雪でタイヤを履き替えました」なんて報告あり。ああそちらはもう冬なんだね!
友がいると、遠い町が近くなり、想像力、思いを馳せることができます。遥かな町の天気予報も他人事ではなくなるものですね。

さあまた新しい号の発売です。
『暮しの手帖』は、全国誌。港港、町という町の多くの書店に運ばれてゆきます。
その先の、会ったことのない読者のことを思い描きつつ、編集部員たちはいろいろな特集を編んでいるのです。今回は、やりたい企画が多かったので、一気に増頁、特大号としました。ボリュームのある一冊になったと思います。
ぜひお手にとってご覧ください。
週明けからしばらく、編集部員たちがそれぞれの担当頁の報告をさせていただきます。編集長は「面白いことを書くように」とだけ命じております。本欄をどうぞお楽しみに。
よい冬をお迎えください。

編集長・澤田康彦

・編集部中途採用のお知らせ

2017年11月24日

2018年に創刊70周年を迎える『暮しの手帖』では、雑誌・書籍編集者の正社員を募集します。
即戦力として、一緒に仕事に取り組んでいただける編集経験者のご応募をお待ちしております。
待遇・労働条件をお確かめのうえ、まず履歴書(写真貼付)をお送りください。
書類選考のうえ、次の選考に進まれる方には面接の日時をお知らせします。

資格:編集経験2年以上

待遇:当社規程による。待遇・労働条件はこちらをご覧ください

就労開始の時期:2018年4月以降(応相談)

提出書類:
1. 履歴書(写真貼付) 
2. 職務経歴書(書式自由、できるだけ具体的に記入してください)
3. 作文「暮しの手帖社でやりたいこと」(800字以内)
※400字詰原稿用紙の形式で2枚。縦書き。手書き ・ パソコン (ワープロ) 出力、いずれも可。
欄外に必ずお名前をご記入ください。

締切:2018年1月10日(水)(郵送のみ受付、当日消印有効)

選考:書類選考のうえ、結果は郵送にて1月25日(木)までにご連絡いたします。
面接の際、これまでに携わった書籍や雑誌などをご持参ください。
※個人情報は当社にて厳重に管理し、選考以外の目的では使用いたしません。
※なお、送付書類の返却はいたしませんので、あらかじめご了承ください。

応募先:
〒169-0074 東京都新宿区北新宿1-35-20 
株式会社 暮しの手帖社 採用係
電話 03-5338-6011(担当:椎名)
※Eメールでのお問い合わせは受け付けておりません。

・「空」の短歌を募集します。

2017年11月24日

みなさんも五・七・五・七・七に挑戦しませんか?
『暮しの手帖』91号(2017年11月25日発行)では、特集企画「奥村晃作さんの ただごと歌」を掲載しています。
このたび読者のみなさんに、「空」という字がはいった短歌(記事本文参照)、あるいは「自由題」の短歌を募集します。奥村さんと編集部で選考し、力作は2018年5月25日発行の『暮しの手帖』94号、および小社ウェブサイトでご紹介する予定です。

投稿方法
・無地のハガキ、またはEメールでお送りください。
ご投稿は一人何首でも結構ですが、ハガキの場合は一枚に四作品まで。
未発表の自作に限ります。特殊な読み方をする字には読みがなをつけてください。

・お名前(ペンネーム可、ただし本名も明記のこと)、住所、電話番号、
あればメールアドレスをお書き添えください。

・宛先
〒169-0074東京都新宿区北新宿1-35-20
暮しの手帖編集部 「短歌募集」係
Eメール tanka@kurashi-no-techo.co.jp

・締め切り
2018年1月31日(ハガキの場合は当日消印有効)

最新刊『わたしの暮らしのヒント集3』

2017年11月22日

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すてきなあの人、気になるこの人。魅力にあふれ、注目されている方は、何かしらの気づきや心がけている習慣をお持ちです。それが、「暮らしのヒント」です。毎日の暮らしをスムーズなものにし、心豊かに過ごすためのコツともいえる大切なものです。
おかげさまで、別冊『暮らしのヒント集』シリーズは、号を重ねるごとに、たいへん多くの読者の皆様にご購読いただいております。この3冊目も、既刊の2冊と同様に、このたび、長く、より多くの皆様にお読みいただけるように、単行本化しました。

この本にご登場いただいたのは、ヤエカのデザイナー井出恭子さん、料理家の大原千鶴さん、コスチューム・アーティストのひびのこづえさん、建築家の中村好文さん、画家の安野光雅さん、家事評論家の吉沢久子さん……。取材当時30代から90代まで7世代17人の方々にお話をうかがいました。
取材をお願いすると、みなさん最初は「ヒントになるようなことは特に何もしていないですよ」とおっしゃいます。でも、よくよくお話をお聞きすると、いくつもいくつも出てくるのです。ご自分では何気ない、毎日の当たり前のことでも、他人から見ると、「なるほど」とひざを打つ、感じ入ることばかりなのです。今日からすぐできる小さなアイデアから、奥深い生活信条まで。誌面の中から拾い上げて、あなたの暮らしに取り入れていただきたいヒントがたくさんありました。暮らしのようすを切り取ったたくさんの写真とともにご紹介しています。衣食住にわたる多彩で充実した内容の一冊です。

巻頭特集は、「有元葉子さんの『料理じょうず』になるヒント」。毎日、切れ目なく続いていく料理だからこそ、「書いてあるレシピ通り」に作るだけではなく、「自分のものにする」ことが大切。おいしい食卓をつくるには何が大切かを教えていただきました。
「岡尾美代子さんの靴とバッグ」は、人気スタイリストの岡尾さんならではの、ファッションだけではない、センスあふれるものの選び方、ものとの付き合い方をご紹介いただきました。

詳しい内容は、こちらをご覧ください。(担当:宇津木)

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考えることで、豊かに広がる

京都で考えた
『京都で考えた』 吉田篤弘 著 ミシマ社
1,500円+税 装釘 クラフト・エヴィング商會

 著者の吉田篤弘さんは、吉田浩美さんとともに「クラフト・エヴィング商會」としても、執筆やデザインなどをされている方。小誌でもかつて、「それからはスープのことばかり考えて暮らした」という、とてもすてきな小説を連載されていたので、ご存知の方も多いかもしれません。

 「『本当のこと』は面倒な手続きの先にしかなく、手っ取り早く済ませようとしたら、決して『本当のこと』はあらわれない」

 この本のなかで吉田さんは言います。いまは、知らないことや疑問があったら、インターネットでサクッと「答え」を知ることができます。でも、「答え」を知ってしまったら、もうあれこれ考えることはしない。この「あれこれ」がアイデアの元になるのに、その機会を逸してしまうことになると。面倒でも、自分で考える。そうしてしか得られない「本当のこと」を探すのです。そして、吉田さんにとって考える場は、京都です。
 京都って、たしかに多くの来訪者にとって、特別な場所かもしれません。単なる観光地ではない。鴨川が流れ、碁盤の目に整備された古い街。吉田さんは、古本屋や古レコード屋、古道具屋、喫茶店や洋食屋を訪れます。もちろん、直接的に本やレコードを探すためだけではない。そこで目にした古本の背表紙や古いレコードから、思考が始まり、思索のストーリーが繰り広げられる。創作のアイデアができるのです。百万遍や紫野、イノダコーヒー三条支店、大徳寺の松風など、ご自身が実際に訪れた場所を挙げながら、何を考え、その思考がどう広がっていったかをつまびらかにしていきます。そして、それらは、川の水が流れるようにスムーズにつながり、一冊として形をなしていきます。ちなみに、この本の見出しと目次のあり方はとてもユニークで、おもしろいアイデアが機能しています。街角には地名が表示されておらず、目次が地図になっている、といったイメージでしょうか。それもお楽しみにしてください。たしかに、流れるように読めるのです。

 物事をきちんと考えること、深く思考することって、得意な人と不得意な人がいると思います。頭の中を整理して、答えを追い詰めていくような作業は、けっこう骨の折れる仕事だったりします。正直私は、それほど得意ではありません。途中で、とっ散らかってしまうことしばしば。でも、吉田さんは、とても整理された思考を進めていきます。そして、「本当にそうか?」と、当たり前と決めつけられた答えや分かりやすい答えには飛びつかず、考えを進め、広げていきます。
 考えを広げるということは、ひとつの答えに縛られないということ。すなわち、自分の気持ちに自由な幅をもたらしてくれることでしょう。思考や想像の世界って、限りなく広いわけですから。
 この本に書かれているのは、そうして得られる豊かな想像の世界。それは、とても楽しい思考のプロセスです。そして、整然としながらやさしく語り掛けるような、吉田さんの書く作品がすてきな理由が垣間見られるのです。巻末には、うれしいおまけのように本編とつながる掌編小説もあります。(宇津木)

その情熱は伝播する

バッタを倒しにアフリカへ
『バッタを倒しにアフリカへ』 前野 ウルド 浩太郎 著
光文社 920円+税 装釘 アラン・チャン

 著者の前野 ウルド 浩太郎さんは、幼い頃に読んだ『ファーブル昆虫記』に魅せられ、自らも昆虫博士になるべく、虫の道に足を踏み入れた青年です。1980年生まれ、今年で37歳。「青年」と呼ぶにはちょっと年嵩過ぎるかもしれませんが、そう呼びたくなるくらい、若々しい情熱に溢れているのです。
 虫の研究をして博士号をとったはいいけれど、就職先にあぶれ、しかしこの道で生きる夢を捨てられずにいた前野さん。なにがしか、大きな研究成果を出して活路を見出そうと、2011年に単身、アフリカはモーリタニアに向かいます。前野さんが専門とするのはバッタ。かの地ではバッタが大量発生して農作物に深刻な被害をもたらしており、その対策を研究の対象にしようと考えたのです。
 慣れない土地、知らない言語、次々に出合うカルチャーショック。日々のハプニングを、やけくそのような明るさとユーモアで乗り越えてゆく前野さんですが、時には、将来(と目減りしていく研究資金)の不安が頭をもたげ、ホームシックになって心ふさぐこともあります。おまけに、モーリタニアに渡ったその年は、なんと、例を見ないくらいにバッタが不漁(?)の年であり、研究対象にも事欠く事態に陥って……。
 本書を読みながら、私は、2016年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんの言葉を思い出していました。「『役に立つ』という言葉はとても社会をダメにしていると思っています」。これは、事業化を研究の第一目的としていては、学問がやせ細ってしまう、と懸念して仰った言葉です。
 果たして、前野さんはどうでしょう。将来のために成果を上げねばという野心こそあれど、「バッタが好きだ」「バッタについて知りたい」と燃えるその探究心はどこまでも純粋で、むしろ心配になってしまうほど。好きなものを求めて、猛進していく人の姿は、傍目にも面白い! その情熱は読む者にもいつしか伝播し、不思議な感動が湧いてくるのです。(島崎)

次の皆既月食は来年1月31日

月の満ちかけ絵本
『月の満ちかけ絵本』 大枝史郎 文 佐藤みき 絵
あすなろ書房 1,200円+税 装釘 梶原浩介(Noah’s Books, Inc.)

 東日本大震災の影響で計画停電や節電があったころ、暗い街の夜空で、明るくあたりを照らしてくれた満月の頼もしさ、ありがたさが忘れられません。それ以来、毎日使う手帳は月の満ち欠けのしるしがついたものにしています。

 家路をたどる坂道で夜空を見上げると、まいにち月の形と位置が変わっています。満月はあそこに見えたのに、半月は違うな。ぼんやりとそう思ってはいましたが、どうしてなのか、深く考えることもなく過ごしていました。

 私が担当している本誌連載頁、細谷亮太先生の「いつもいいことさがし」のテーマが、91号では「一年を和風月名で」と、旧暦についてのお話だったこともあり、月の満ち欠けについても知りたくなりました。

 児童図書のコーナーにあった本書は、「親子で学べるユニークな『月観察』絵本」と謳っており、ていねいにわかりやすく、月の満ち欠けを説明しています。本文の始めに、太陽と地球と月の関係の図があり、「月の見えない新月から、三日月、半円の月、満月になり、欠けていって、もとの新月にもどるまで約29.5日かかる」ことが説明され、なるほどと思いました。

 次の頁から新月、二日月、三日月、上弦の月……と、月の形が変わるごとに見開きで説明があり、太陽と月と地球の位置によって月の形と昇る方角が移っていくのがわかります。

 月の名前の由来についても説明があり、いままで覚えられなかった、上弦の月と下弦の月のことが、やっとわかりました。上弦の月は、満月までの途中に現れる右側半分の半月で、太陽が沈むと南の空に浮かび、船のように下がカーブした形で夜中に沈む。そのときに弓の弦(つる)が上にある形だから「上弦」の月。下弦の月は、満月から欠けていく半月で、夜中に出てきて、太陽が昇るころには南の空にあって消えていく、左側半分の月。沈むときには弦が下になるから「下弦」の月。一晩中見える月は満月だけなのも図から納得できます。昔の日本人が、満月に限らず、それぞれの月に意味を持たせて親しんできたことも書かれていて、お月様がもっと好きになりました。

 巻末には、「月と宇宙の豆知識」として、潮の満ち引きや日食と月食についての解説もあります。それによると次の皆既月食は2018年1月31日。日本全国で見られるそうです。皆既月食までに、この本を購入して、親子で話してみるのもいいでしょう。もちろん、私のように大人が読んでも充分面白いですよ。(高野)

子どもから生まれる、みずみずしい言葉たち

ことばのしっぽ
『ことばのしっぽ』 読売新聞生活部 監修
中央公論新社 1,400円+税 装釘 中央公論新社デザイン室 

 れ
「ママ 
 ここに
 カンガルーがいるよ」
 これは、3歳の男の子がつぶやいた言葉を母親が書きとめ、読売新聞家庭面の「こどもの詩」というコーナーに投稿したものです。「れ」という平仮名がカンガルーに見えるなんて! 子どもの自由な発想に驚くとともに、その発見を母親に一生懸命伝えるあどけない姿が浮かび、ほほえましく感じます。
 今年で50年を迎えた「こどもの詩」。この本は、これまでに掲載された詩のなかから200編をより抜き、まとめたものです。

かさ
「(お店やさんごっこをしていて)
 これ(かさ)は
 あめのおとが
 よくきこえる きかいです」

ふとん
「おかあさん
 ぼくタイムマシンで
 あしたにいくからね
 じゃあ
 おやすみなさい」

すみっこ
「すみっこにいました
 すみっこでまるくなっていました
 こころがゆっくりなるのです
 これからもすみっこにいたいです
 すみっこはやっぱりおちつきます」

新しいせかい
「ママは 何分がすき
 ゆうかはね 59分がすき
 新しいせかいが
 はじまりそうな気がするの」

 子どもたちが日々の暮らしで発見したこと。楽しい気持ち、寂しい気持ち。いろいろな気持ちがそれぞれの詩に詰まっていて、子どもの目には、世界はこんなふうに映っているんだ……と気づかされます。
 大きくなるにつれ、こんなふうにまっすぐな気持ちを言葉にすることは、難しくなるかもしれません。でもできる限り、このきらきらした感性を持ち続けていられるような世の中にしてあげたい。そして、子どもたちから生まれるみずみずしい言葉をすくいとる、あたたかな眼差しをもっていたい。この本を読んで、切に思いました。(井田)

生きていてくれるだけで「いい子」だよ

はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに
『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』
佐々木正美 著 福音館書店 900円+税 装釘 森枝雄司

 今年、2017年の6月、児童精神科医の佐々木正美先生が永眠されました。

 わたしは幸運にも、先生が行われていた勉強会に伺ったことがあります。涙ながらに悩みを打ち明けるお母さんたちに対して、先生はじっと聞き、優しく語りかけます。その言葉に、お母さんたちが笑顔を取り戻された様子を、今でも鮮明に覚えています。

 『暮しの手帖』でも、子育てに悩んでいる方々の心が軽くなるように、子どもが成長することの喜びを伝えていただきたいと、「母子の手帖」の連載執筆をお願いしたのは7年前。先生は日本各地へ講演に飛び回る忙しさ。その頃からすでに体調がすぐれなかったにもかかわらず、まるで目の前で語りかけてくれるような原稿をご執筆くださったのでした。

 今回ご紹介するのは、この連載をまとめた本です。先生は「親から愛されている実感」「根拠のない自信」などを子どもに持たせてあげることの大切さを何度も説かれました。それはとってもシンプルだけれど、日々の子育てに追われている親御さんたちが見失いがちなものであるように思います。

 先生に、「ゲームに熱中し過ぎる子について書いていただけますか?」とご相談して、いただいた原稿は、わたしの想像を超える内容でしたが、心の底からなるほど、と思いました。その他にも、「いじめ」「ひきこもり」「思春期」「親の離婚」など、具体的な例を通して、子育てに大切なことを教えていただきました。

 いい親にならなければというプレッシャーを感じている方、また、そういったお母さんやお父さんが身近にいる方にぜひ読んでいただきたい一冊です。(平田)


暮しの手帖社 今日の編集部