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体の不調、ありますか?

2017年09月28日

げんきに
体の不調、ありますか?
(90号「げんきに歳を重ねたい」)

自身の体調管理に人一倍、関心がある編集長(澤田さんはこの10月で60歳)が、
「ぜひともやりたい!」と言って始まったこの企画。
当初、私(33歳と9カ月)には、全然ピンと来ませんでした。
私自身は、貧血、肩凝り、偏頭痛、毎日どれかひとつはあてはまるような有様ですが、もうそんな自分の体に慣れきっていて「みんな少なからず、不調があるものでしょ?」くらいに思っていましたし、「特別長生きしたいとも思わないしねー」なんて、強がりも言っていました。

ところが、抗加齢医学が専門のふたりのお医者様や、編集部(30代~60代)の皆に話を聞くうちに、そんな私の態度は「実は老いることを必要以上に怖がっていて、そのくせ自分の不調は見て見ぬふり、考えることから逃げていただけだった!」と気づかされたのです。

「老い」と向き合うには、「どう生きたいか」を、真剣に考えなければならないし、「体の不調」と向き合ったら、自分の意思で自分の行動を変えなければならない。
それは確かに、とても面倒なことです。
だけど、考え始めさえすれば、事態は確実に好転していきます。
気持ちが変わり、行動が変わり、心も体も、驚くほどすっきりします。
この記事を読んで、そのきっかけにしていただけたら、うれしいです。
どの世代の方にも、「生きやすくなる」ヒントがあるだろうと思います。(担当:長谷川)

・『暮しの手帖』90号「かぎ針編みのまるとしかくをつなげて」作品募集中

2017年09月27日

発売中の『暮しの手帖』90号では、特集企画「かぎ針編みのまるとしかくをつなげて」を読まれて創作した作品の写真を募集しています。読者のみなさまに自由に発想していただき、手を動かして作り出す楽しさを分かち合うための企画です。
ご応募のなかから選考して、2018年3月24日発行の93号でご紹介する予定です。
詳しくは、90号(特集記事:52ページ~、応募要項:149ページ)をご覧ください。

●作品の応募方法
作品の写真を、以下の情報とともに郵送、またはEメールでお送りください

作品の写真:
写真は、1枚でも複数枚でも結構です。
メールに添付する場合、容量は合計5MB以下。できるだけはっきりと撮影してください

作品の情報:
制作者のお名前、ご住所、電話番号、作品についての説明、あればメールアドレスをお書き添えください

作品についての説明:
作品のサイズ、作った動機、工夫したポイント、使ってみた感想など
宛先:
〒169-0074
東京都新宿区北新宿1-35-20 暮しの手帖編集部「かぎ針編み作品募集」係
Eメール:kagibari@kurashi-no-techo.co.jp

応募締切:
2017年12月11日(月)。郵送の場合は当日消印有効

発表:
2018年3月24日(土)発行の『暮しの手帖』93号

●注意事項
・作品はオリジナルで、未発表のものに限ります
・お送りいただいた写真は返却できませんので、ご了承ください
・作品そのものは送らないでください
・誌面でご紹介する場合は、編集部からご連絡いたします。取材をお願いする可能性もあります
・ご紹介する方には、掲載誌を差し上げます

◎「Blog手帖通信」に掲載した担当編集者による記事の紹介は下記のリンクよりお読みいただけます。
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/blog/editorsnote/170927

あなたなら、なにを作りますか?──作品募集も!

2017年09月27日

かぎ針編み01

あなたなら、なにを作りますか?──作品募集も!
(90号「かぎ針編みのまるとしかくをつなげて」)

 秋の気配を感じ、編み物をしたくなる今日この頃。
今までは棒針派だったわたしですが、今年はかぎ針に挑戦したい!

 そんな思いで、手芸家の青木恵理子さんに「かんたんにできるかぎ針編みで、おもしろい企画を作りませんか?」とご相談してできたのが、この頁です。

 「複雑なモチーフより、シンプルな“まる”や“しかく”が好きなんです。ひとつひとつはかんたんに編めるけれど、使う糸の質感やつなぎ方によって、いろんなものに変化するのが楽しくて」と青木さん。なるほど、人によって発想するものが違いそうです。だったら、もの作りを生業とする方々に、まるとしかくでできる欲しいものを考えていただき、青木さんに形にしてもらったら、すてきなものができるんじゃないかしら…?!

 さっそく、3人の女性に欲しいものを考えていただきました。
彼女たちの発想は、青木さんの想像を上回るユニークなものばかり。写真はその中のひとつ、モヘアの“まる”をたくさんつないだショールです。空いた時間に、ひとつふたつと気楽に編めるのも魅力。自由な発想で、自分らしいアイテムを編む楽しさを、みなさまにも味わっていただけたら、と願っています。

 そして、この企画を楽しんでいただいた方へ、お願いがあります。
 
 みなさまが考えて作られた、まるとしかくの作品の、写真とコメントを編集部にお寄せください。来年発売の本誌でご紹介したいと思っております。詳細は本誌149頁をご覧ください。

 たくさんのご応募を、お待ちしております!(担当:平田)

かぎ針編み02

かぎ針編み03

晩ごはんをもっと手早く、気楽に作りたい! (90号「これで よゆうの晩ごはん」)

2017年09月26日

よゆうの晩ごはん01

よゆうの晩ごはん02

「あぁ、今日の晩ごはんは何にしよう」
朝ごはんを食べたばかりなのに、晩ごはんの献立のことが頭をよぎり、なんだか憂鬱な気持ちになる……。そんなとき、ありませんか?
恥ずかしながら、私はほぼ毎日、この「晩ごはんどうしよう」問題に頭を悩ませていました。
気持ちによゆうがあるときは食べたいものが自然と思い浮かぶのですが、週も半ばになって疲れてくると、いったい何を食べたいのか、家族に何をつくってあげたいのか、わからなくなってしまうのです。
この企画は、そんなふうに「晩ごはんづくりにちょっと疲れたな」と感じている方にこそ、役立てていただける内容にしたい! そう思い、料理家の上田淳子さんに、かんたんな下ごしらえをしておくだけで手軽にできる料理をご提案いただきました。
上田さんのレシピをもとに、さっそくわが家でも下ごしらえを実践してみることに。すると、時間的なゆとりだけでなく、驚くほど、気持ちにもよゆうが生まれるようになったのです。
特集の冒頭では、絵本作家のヨシタケシンスケさんに「下ごしらえのある暮らし」を描いていただきました。思わずクスッと笑ってしまう愛らしい絵を見ていると、「今日も下ごしらえがんばろうかなぁ」と、なんだか元気が湧いてきます。(担当:井田)

「澄んだ空に 大きなひびきが」  ──編集長より最新号発売のご挨拶

2017年09月25日

90号表紙

「いつの間に もう秋! 昨日は
夏だつた……おだやかな陽気な
陽ざしが 林のなかに ざわめいてゐる
ひとところ 草の葉のゆれるあたりに」
    (「また落葉林で」立原道造)

8月が終わり9月となって、まだ続く夏の名残の陽気のなかで、真っ青な空や、夕焼け雲を見たり、虫の声を聴き、昼の短さや風のつめたさを感じる日々。
どの瞬間にも自動的に上の詩の一節が降りてくるのです。
「いつの間に もう秋!」
若い詩人が、秋の到来に感嘆符までつけて、びっくりしています。
戦前の繊細な詩人と同列で語っては叱られるのですが、本当に夏ははかなく、秋ってやつは、あっというまに忍び込んでくる(春の到来より圧倒的に早い)。
昨日は夏だったのに……とぼくもそう思う者です。毎年、まいとし。
わあ、もう二学期かあ、とびっくりしてきたのです。
わあ、あの子はもう長袖だ! とかね。

そして『暮しの手帖』も、もう秋号! であります。
このひと夏、この新しい秋のためにみんなで企画、準備し、紡いできた1冊をお届けします。
どの特集がみなさまのお気に召すでしょうか? ぜひお手にとってご覧いただければ幸いです。明日からしばらく、編集部員たちがそれぞれの記事のご報告をいたしますので、どうぞお楽しみに。

ところで、立原の上の詩にはこんな一節もあります。

「澄んだ空に 大きなひびきが
鳴りわたる 出発のやうに」

この詩はボードレール「秋の歌」に由来する。

「昨日は夏だった 今はもう秋!
不思議な音が鳴り響く 出発のごとく」(澤田訳)

詩人たちは、どんな音を秋の日に聴いたのでしょうね?
それも毎年、ミステリーのように思うことです。
その音は、ぼくには計り知れないけれど、「出発のやうに」や「COMME UN DEPART(コム・アン・デパール)」って唱えてみて、背筋のしゅっと伸びる、気持ちのいい季節。
90号、出発です。

編集長・澤田康彦

終了・神田裕行さんのレシピをDEAN & DELUCAにて期間限定販売

2017年09月24日

9月25日(月)より、世界中の食材とおそうざいを取り扱うマーケットDEAN & DELUCAで、暮しの手帖社の単行本『神田裕行のおそうざい十二カ月』のレシピをもとにしたデリ・メニューが販売されます。

『神田裕行のおそうざい十二カ月』は、『暮しの手帖』の人気連載「新・おそうざい十二カ月」から、選りすぐりの62品をご紹介した単行本です(2017年5月発売)。

収録されている「トマト牛丼」「イワシの蒲焼き丼」に、著者・神田裕行さん指導のもとでアレンジを加えた「阿波牛とトマトのすき焼き飯」「うるめ鰯とクレソンの蒲焼き飯」が、東京のDEAN & DELUCA 3店舗にて、期間・数量限定で発売されます。

ミシュラン三つ星・神田さんのレシピを味わっていただける、またとない機会です。

近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

また各店には、『神田裕行のおそうざい十二カ月』が置かれています。本をお手にとってご覧いただいたり、お求めいただくこともできます。
ぜひ、ご自身でも、レシピを読んで作っていただけたら幸いです。(長谷川)

発売期間:2017年9月25日(月)~10月1日(日)
取扱店舗:六本木店/有楽町店/品川店
※営業時間は各店へお問い合わせください。

DEAN & DELUCAのサイトは、以下をご参照ください。
http://www.deandeluca.co.jp/contents/detail.php?product_id=3246

大コピペ時代を生きる、みんなの教科書

正しいコピペのすすめ ―模倣、創造、著作権と私たち
『正しいコピペのすすめ ―模倣、創造、著作権と私たち』 宮武久佳 著
岩波ジュニア新書 860円+税

 ピラミッドにモナ・リザ、ビートルズ。みなさん、もちろんご存知ですよね?
 
 でも、実際にエジプトに行ってピラミッドを見たり、ルーブル美術館でモナ・リザを鑑賞したり、ビートルズの生演奏を聴いたという人は、どれくらいいるでしょうか。多くの人は、テレビ映像やインターネット上の写真、音楽CDといった複製、つまり「コピー」によって、そのすばらしさに触れたことと思います。

 本書は、そうした身のまわりにあふれるコピーについて、守られるべき著作権や、それが文化に果たす役割などを説いています。
「著作権」と聞くと、プロの作家やカメラマンが持つもの、と考えてしまいがちです。しかしスマホやパソコンが普及した現代においては、著作権を持つことも、それを侵害することも、いとも簡単なのです。ですから、いまや、みんなが著作権のルールを理解する必要性がでてきたのです。
 
 かくいう私も、恥ずかしながら、著作権について不勉強でした。本書を読みすすめると、驚きの連続。そして、宮武先生のやさしく丁寧な解説がスッと頭に入ってきて、まるで社会科の授業を受けているような気持ちになりました。

 「正しいコピペの作法」を身につけ、ルールを守りながら「模倣」すれば、それがやがて「創造」につながる。大切なのは、じょうずにコピペを用いながら、自分自身を成長させることのようです。
本書は、大コピペ時代を生きる私たちにとって、まさに教科書のような一冊。SNSを楽しんでいる方をはじめ、レポートを書く学生さん、会社で新聞をコピーしているそこのアナタも、ぜひご覧になることをおすすめします。(圓田)

楽しみも、悲しみも。人生は明日へと続いていく。

今日の人生
『今日の人生』 益田ミリ 著
ミシマ社 1,500円+税 装釘 大島依提亜

 著者の益田ミリさんは、30代女性の等身大の日常と心の持ちようを描いた「すーちゃん」シリーズなどで人気の漫画家。作品は「漫画」というひと言では括りがたく、登場人物の率直で鋭い視点や言葉に、同世代の女性をはじめ多くの読者から共感を呼ぶエッセイ的な要素が色濃いものが多いのではないでしょうか。

 この本で描かれているのも、日々の生活のなかの小さな出来事。それぞれのシーンにおける、ほんの小さな気持ちの揺れ動き。「機微」という言葉が思い浮かびます。辞書によると「表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや事情。『人情の機微に触れる』」。そうした見過ごされやすい小さなこと、ふだん言葉にしかねて人と共有する機会のないこと。でも、益田さんは見事にそれらを掬い上げ、ゆるやかなタッチの絵と言葉で提示します。ふとむなしさを感じた日は、素直に、今日はむなしさを味わう日と考えたり、小さな子とおばあさんが歩いているのをみてほのぼのとしながら、無意識に口ずさんだのは、独り身の自分を歌った明るいメロディだったり。

 それらは、毎日うっすらと降り積もっていくような些事かもしれません。でも、そうして積もり重なったものが自分になっていくのではないでしょうか。益田ミリさんの作品には、大きなドラマはあまり起こりません。重厚で深いテーマであっても、日常のなかにある小さな欠けらを手掛かりに語られます。機微に、敏感に着目して描き出されるのです。だから、読むとハッとさせられ、そしてじんわりと心に響いてきます。

 「今日の人生」。何も起こらなかったような日の出来事、自分だけの小さな幸せ、ちょっと悔やまれる失敗、誰かの行いに対して怒ったこと。「人生」って、大部分はそんな小さな「今日」の積み重ねですよね。私たちも同じように、そんな小さなことを毎日経験しているけれど、無意識に通り過ぎたり、すぐに忘れてしまったり。

 今作では、大切な人とのお別れという大きな出来事も描かれます。でも、それはあくまで日常のなかで、楽しいことや怒ったことの続きとして静かに語られているのです。誰もがいつか経験する、この喪失感を、自分のなかでどう対処するのか。繰り返し湧き上がる悲しみと、どう付き合っていくのか。そんな毎日のなかでも、小さな幸せを感じながら、この本は終わります。

 そしてこの本は、内容はもとより、製本の工夫もおもしろい。本自体を楽しみながら読める仕掛けがいくつもあります。(宇津木)

・終了:「花森安治の仕事」展、岩手県立美術館にて開幕

2017年09月08日

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重実生哉(しげざねいくや)さんデザインの、黄色いタイトルパネルが青空に映えます

 2月の世田谷美術館を皮切りに、碧南市藤井達吉現代美術館、高岡市美術館と巡回してきた「花森安治の仕事 デザインする手、編集長の眼」展が、最後の会場である岩手県立美術館にて9月2日に開幕しました。
 岩手県内では、開幕前から展覧会をお知らせするテレビCMが流れ、開幕直前の特集番組も放送されました。そのためもあって、初日から大盛況で、『暮しの手帖』を長くご愛読くださっている方々の温かいお話をうかがうこともできました。
今回の展覧会では、『暮しの手帖』編集部OBの小榑雅章さん、また、現在小誌編集長を務める澤田康彦、それぞれの講演会を開催予定です(詳細は下記にて)。
 会期中は館内のレストラン「パティオ」にて、暮しの手帖社のロングセラー書籍『おそうざいふう外国料理』のレシピを参考にした、特別メニューが提供されています。身が厚く食感の良いアジを使ったマリネや、ジューシーなポークソテーなど、展覧会とあわせて、ぜひお楽しみください。
 会場の岩手県立美術館は、盛岡駅から徒歩20分、タクシーで5分ほどのところにございます。会期は10月15日まで。天井が高く贅沢な展示空間で、花森の残した表紙原画や広告などの手仕事を、どうぞご堪能ください。(担当:会田)

本展覧会は終了いたしました。たくさんのご来場に感謝申し上げます。

◎「花森安治の仕事 デザインする手、編集長の眼」
2017年10月15日(日)まで
岩手県立美術館
盛岡市本宮字松幅12-3
TEL 019-658-1711
詳細は岩手県立美術館のホームページにてご確認ください。
http://www.ima.or.jp/exhibition/temporary/20170902_1015_ex02.html

◎開催記念講演会1
「花森安治の『暮しの手帖』」
講師:小榑雅章氏(『暮しの手帖』元編集部員)
日時:2017年9月10日(日) 14:00~15:30

◎開催記念講演会2
「最新号に息づく花森安治」
講師:澤田康彦(『暮しの手帖』編集長)
日時:2017年9月30日(土) 14:00~15:30

※講演会に参加ご希望の方は、当日直接、館内ホールへお越しください。
参加無料です。

暮しの手帖社ホームページ内・花森安治特設サイト
http://www.kurashi-no-techo.co.jp/hanamorisan/

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広々とした会場内の様子

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「商品テスト」記事のパネル展示

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1世紀(1960年代)バックナンバーの壁面展示

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会場出口には、創刊号の世界に入ることができるフォトスポットが

すべての新米パパに贈りたい

ヨチヨチ父――とまどう日々――
『ヨチヨチ父――とまどう日々――』 ヨシタケシンスケ 著
赤ちゃんとママ社 900円+税 装釘 関 善之

 中川李枝子さんの『子どもはみんな問題児。』や川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』など、子育て中のすべてのママに薦めたい本は何冊かあるけれど、パパに薦めたいと思った初めての本です。
『ヨチヨチ父(ちち)』。タイトルから笑ってしまう。とくに口頭でひとに伝えると、「え?」と100%聞き返されるので、「えっと……、ヨチヨチする、お父さんの“チチ”」とジェスチャー込みで説明しないと伝わらない。

 本書には、2児の父である絵本作家のヨシタケシンスケさんが、育児がひと段落ついた今、「パパ目線の初めての育児」というテーマで描いた “トホホな出来事”が、55編掲載されています。

 わが家にももうすぐ3歳になる怪獣君がいるのですが、その数々のトホホに笑い、ああ、そうよね、うんうん、そっかあ、と共感し、いろいろ思い出してちょっとホロリとしてしまいました。わが夫のことも、少しわかったような気がしたのです。さっそく夫(育児ものはほとんど読まない)にも渡してみると、珍しく声を上げて笑いながら、あっという間に読破して、なんと読み返して、また笑っていました。たいそう納得したようです(具体例をあげたいところなのですが、ヨシタケさんのおなじみのイラスト込みで読んでいただいたほうが絶対に面白いので、敢えてあげません)。
 
 「ぜんぜん共感できないなぁ」なんてパパがいたら、よっぽどよくできたパパでしょうから自信を深めてもらい、「そのとおり!」というパパにとっては、少し気が楽になるのではと思います。同じくママだって、「わたしにあてはまる」と感じるかもしれないし、もしくは、夫に対して少しやさしい気持ちになれるかもしれません。たくさんの育児中のひとたちが笑顔になることを願って、本書をお薦めします。(小林)

ふりそそぐ言葉の粒子たち

ひかり埃のきみ
『ひかり埃のきみ 美術と回文』
福田尚代 著 平凡社 2,800円+税 装釘 細野綾子

 扉の薄紙にのった文字列が、次の頁に透けて見える目次と絶妙に交差して美しい。心静かな日、私がそっと開いてみたくなる特別な本です。
 
 3部構成のその「I」は、福田さんの美術作品からはじまります。頁を半分折り込んだ書物、切りとられた文庫本の背表紙、細かな刺繍がほどこされた書物、消しゴムで彫られた数々の漂着物、原稿用紙に彫刻、粉塵の山……。はじめは些細な行為のはずが、繰り返し時間の経過とともに集積されると、一群れとなってこちら側に語りかけてくる強さがあります。

 故郷の郵便局で仕事をしながら、《はじまりからも終わりからも読むことのできる言葉》回文を、彼女は毎日書きました。「II」では、私家版でまとめていたいくつかの回文集から、再考を重ね選出した、7篇の回文へと続きます。回文は言葉遊びの要素が強いものですが、彼女は言葉を砕いて、徹底的に「素」の状態にするまで分解していきます。社会背景に帰属しがちで、束縛された不自由な言葉の枠から一気に解き放たれ、幼い時、音や視覚で感覚的に言葉に触れていた記憶を呼び覚ましてくれます。

 「III」の「片糸の日々」で、「I」の美術作品と「II」の回文の連関性が紐解かれ、『ひかり埃(ほこり)のきみ』が意外なことから誕生したのだと感銘を受けます。そこにはあえて触れませんが、私も研ぎすました感性で言葉とその純度に響き合えるようになりたいと願いつつ、「片糸の日々」の冒頭を引用して心に刻みたいと思います。

 「幼年時代の視覚に境界などあっただろうか。裏庭へつづく扉をひらくと、ハクモクレンの花に落ちるしずくも、ぬかるみに跳ねる犬も、わたしの濡れた睫毛も、すべてが濃密な空気と溶けあっていた。鳥の声が光にしみ、葉の色にうつる。木漏れ日のひとつひとつが何かをやさしくふりかえりつづける。からだは一枚の花びらとなって庭いっぱいにひろがり、まなざしは地中に沈みかけた陶器のかけらへと吸い込まれてゆく。世界と自分が細かな塵の集積としてひとつになり、霧散する。それらがいっせいに、今この瞬間に起きることとして迫ってくる」(上野)

小さなひかりに目を留めて

本屋さん_『どこにいるの イリオモテヤマネコ』
新版『野草の手紙 ~草たちと虫と、わたし 小さな命の対話から~』
ファン・デグォン 著 清水由希子 訳
自然食通信社 1,700円+税  装釘 橘川幹子

 1985年、独裁政権下の韓国、著者のファン・デグォンさんは、スパイの濡れ衣を着せられ、投獄されました。怒りとやるせなさで荒れ狂うような数年を経て、ファンさんはある日、刑務所内の空き地にわずかばかり生えている、野草たちに目を留めます。

 本書は、ファンさんが刑務所内で野草を観察し、育て、食べ続けた記録です。妹ソナさんに向けた書簡を後日にまとめたもので、そこに綴られる言葉はユーモアと愛情に満ち、ファンさんの真摯で謙虚なこころがよく伝わってきます。ファンさん自身による、愛らしいスケッチがついているのもうれしいところです。

 文中に登場する植物には日本名が記されており、また一部には韓国名も併記されているので、インターネットや図鑑で調べながら読むと「ああ、この草はこんな名前だったのか」「韓国ではこう呼ばれているのだな」などと、さらに楽しめます。名もない草花などと言うけれど、それはただ、私たちが知らないでいるだけなのですね。

 深くて暗い絶望のなか、ファンさんはきっと、草花に小さなひかりを見たのでしょう。ひびわれて壊れかけたファンさんのこころに、いつしか無数の草花が根づき、茂っていった。30歳からの13年と2カ月。その長すぎる受刑生活を思うとき、ファンさんの平和に満ちた文章の重さ、尊さがなおのこと胸にせまってきます。(島崎)


暮しの手帖社 今日の編集部