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・『花森安治選集』第2、第3巻 刊行日変更のお知らせ

2020年06月24日

5月下旬の第1巻を皮切りに、刊行を開始しました『花森安治選集』全3巻は、
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の刊行予定日から、
下記の通り延期させていただくこととなりました。

  第2巻 【変更前】7月中旬 →【変更後】9月下旬
  第3巻 【変更前】9月下旬 →【変更後】11月下旬

楽しみにお待ちくださっている皆さまには、
ご迷惑をおかけしますこと、心よりお詫び申し上げます。
何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

暮しの手帖だよりVol.21 early summer 2020

2020年06月12日

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絵 牧野伊三夫

言葉に力をもらいながら、
これからの暮らしのあり方を考えて。
在宅勤務のなかでつくりあげた、
初夏号をお届けします。

文・北川史織(『暮しの手帖』編集長)

 

編集部にその封筒が届いたのは、4号が出てしばらく経った頃ですから、2月半ばくらいだったでしょうか。中身は、一冊の詩の雑誌と丁寧な直筆のお手紙で、「今度、私たちの雑誌で石垣りんさんの特集を組むので、そこに文章を寄せてくださいませんか」とのご依頼でした。
正直、困ったなと思いました。石垣りんさんの詩は、もちろんいくつかは知っていますが、詩を愛する人たちの雑誌に何を書けるだろうか。
でも、無下にお断りするのも失礼ではないかと思い、その方へメールをお送りしました。自分は適任ではないと思いますが、おすすめの一冊があればそれを読んで考えたいと思います、いかがでしょうか。
そして教えていただいたのは、『空をかついで』(童話屋刊)という、文庫本サイズの愛らしい詩集です。私は何度か読み返し、心に触れる詩は何編もあったものの、やっぱりうまく言葉にできそうになく、お断りしてしまったのでした。

 

*

 

時は流れて東京の桜が満開を過ぎた頃、私たち編集部員は在宅勤務態勢で6号の校正作業をスタートさせました。
私の一日といえば、簡単な朝食をとって身なりを整えたら、机の前に座り、あとはひたすらパソコンや校正紙とにらめっこ。はっと気づけば昼はとうに過ぎていて、大急ぎで何かをつくって食べ、また机に向かう。次に我に返ると、とっぷりと夜は更けている……という有様でした。

遅い晩ごはんを食べながらテレビをつけると、先の見えない日々のなか、つらい思いをしている人びとの姿が映ります。思わず、涙が出てきます。
この試練は、私たちに何をもたらすのだろう。雑誌はこんなとき、何ができるのだろう。必死の制作も自己満足に思え、真っ暗闇にボールを投げるような気分になりました。
そんなときでした、あの詩集を寝る前に開くようになったのは。
一編を読むと、しばらく頭のあたりに留まっていますが、やがてすっと胸にしみ込む瞬間がある。生きること、暮らすことへの切実な思いや発見が、丹念に磨かれて「言葉」のかたちをとり、それはいつか必要とされるまで、ただそこで待っている。
安直な励ましの言葉ではないからでしょう、本当の意味で慰められた思いがしたのです。

そこで思い出したのが、6号の巻頭記事の取材のとき、科学者の中村桂子さんが引用した詩でした。
まど・みちおさんの「空気」。一部をご紹介します。

 

〈ぼくの 胸の中に


いま 入ってきたのは


いままで ママの胸の中にいた空気


そしてぼくが いま吐いた空気は

もう パパの胸の中に 入っていく

同じ家に 住んでおれば


いや 同じ国に住んでおれば


いやいや 同じ地球に住んでおれば


いつかは


同じ空気が 入れかわるのだ


ありとあらゆる 生き物の胸の中を (後略)〉

『まど・みちお全詩集』(理論社刊)より

 

生き物の科学を研究してきた中村さんは、この詩にあるように、「(人が)生き物として生きる以上、中と外をきっちり分けることなんてできない」と話します。
「地球に優しく」なんて言い方は「上から目線」。私たちは、他の生き物とのつながりのなかで生きているのだから、「中から目線」で暮らしを見て、根っこにある幸せを考えなければならないと。

取材は「コロナ禍」が始まる前のことでしたが、いま読むと、その言葉の一つひとつに胸をつかれます。
もちろん、私たちには暮らしへの夢や欲もありますから、ここでいきなり悟って「小さな暮らし」に切り替えるのはむずかしいかもしれません。けれども、いま何を変えていけば、この苦難を将来の糧にできるのか。社会のために、自然環境のために、そして自分のために。
私自身、まだ答えは出せていませんが、闇に目を凝らすようにして考え続ける日々です。

 

**

 

さて、気を取り直して、巻頭に続く記事をご紹介しましょう。

私は数年前に『暮しの手帖のクイックレシピ』という別冊をまとめたことがあり、その際、「切る手間を省けば、時短になるんだな」と実感しました。
忙しいときは、みじん切りやせん切りのある料理を敬遠しがちではありませんか? では逆に、切ることが得意で好きになったら、料理はもっとラクで楽しくなるんじゃないかな。
「庖丁仕事はリズムにのって」は、そんな発想で企画しました。

まずは、指導者の渡辺麻紀さんに、編集部のキッチンでいろんな切り方のレッスンを受けました。姿勢や庖丁の握り方、まな板の扱い方などの基本も。数時間後、担当の平田と佐藤がせん切りする様子は、まさしく「リズムにのって」いる。
ああ、切ることってこんなに楽しかったのか! そんな感動と発見を盛り込んだこの記事、ぜひ、お役立てください。

新連載「有元葉子の旬菜」は、いまや薄れつつある食材の旬やその背景を知り、季節に寄り添う料理をこしらえながら、日々の食を見つめ直すという内容です。
今回登場するのは、新れんこん、新にんにく、新ごぼうと、「新」がつく野菜。たとえば新ごぼうをごく細切りにし、さっと湯通しすると、食感も香りも損なわない。それを刻んだニラ入りのしょう油ダレで和えるサラダは、まさにこの時季だけの味わいです。
野菜は自然の一部であり、キッチンは自然とつながっている。そんな実感が湧いてくる頁です。

「干物をいろんな食べ方で」は、「魚をもっと食べたくても、日持ちしないから買いにくい。ならば、干物を活用してみるのは?」と、担当の田島が発想して生まれました。
ツレヅレハナコさんの「アジの干物のたっぷりディルのせ」、田口成子さんの「アジの干物と葉野菜の炒めもの」などの料理はいずれも、ひと皿で野菜もたっぷりとれるのがうれしいところです。
お酒のおつまみに、お昼ごはんにと、いろいろ活用できますよ。

ところで、みなさんの家には、割れたり欠けたりしたままの器がありませんか? 
もしかしたら、こうお考えでしょうか。「金継ぎはなんとなく知っているけれど、プロに頼むほどの高価な器でもないし、自分でやるのはむずかしそう。でも、愛着があるから捨てられない……」。
そんな方のための記事が、「至極やさしい金継ぎ教室」です。指導の山下裕子さんに相談し、道具も手順も、省けるところはなるべく省いてシンプルに。初心者ばかりの編集部員を生徒にした教室を開き、どんなポイントで迷うのかなど、しっかり取材してつくりあげた記事です。
たとえ思い通りに美しく仕上げられなかったとしても、自分で繕うと、なぜだか愛着が増す。それも金継ぎのいいところですね。


最後にご紹介したいのは、「等身大の介護」。
執筆者の一条道さんは、35歳のときから5年間、母を自宅で介護する傍ら、『かいごマガジン そこここ』を創刊しました。若くして大変な経験をされてきたのだなあ、と思うのですが、一条さんと話すと、気負いやつらさは感じさせず、じつに朗らかなのです。
記事では、自身のやりたいことも大切にしながら試行錯誤して見つけた介護のかたちを綴り、さらに、介護生活を模索中の二組のご家族を取材しています。
「人は一人ひとりが違っているのだから、介護のかたちもさまざまなはず」と一条さん。
タイトルに添えたコピーは、「無理しない、抱え込まない、でもちゃんと向き合う」。介護のプロにも頼りながら、ストレスをため込まずに向き合っていくにはどうしたらいいか、考えるヒントにしていただけたら幸いです。

 

***

 

いまはウイルス感染拡大の影響で、介護の現場を支える方々も、ご家族も、ふだん以上の苦労があると聞きます。どうか、この社会がごくふつうに助け合い、支え合う姿に変わっていけますように。
緊張感のある日々が続きますが、みなさま、お身体をいたわってお過ごしください。

 

下記の見開きページの画像をクリックすると、拡大画面でご覧いただけます。

 

◎リーフレット「暮しの手帖だより」は、一部書店店頭にて配布しています。
印刷される場合は、下記のトンボ付きPDFをダウンロードし、A3で両面カラー印刷されると四つ折りリーフレットが作れます。

・暮しの手帖だよりVol.21 PDFをダウンロード

浴衣のおしゃれで気分転換

2020年06月09日

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浴衣のおしゃれで気分転換
(6号「浴衣を粋に着こなしたい」)

最後に浴衣を着たのはいつですか?
わたしはおよそ15年前。
社会人になり、転勤などで引っ越すたびに、いつしか袖を通さなくなってしまいました。
いざ着てみたいと思っても、着付けがわからず……。お手上げ状態でした。
今回ご紹介するのは、久しぶりに浴衣を着たいと思っている人や、
初めての方に向けた着付けの方法です。
監修の浜美雪さんは、着物文化に詳しい編集者。
「着崩れないポイントを押さえ、足袋と草履などを合わせれば、
浴衣でもきちんとしたおしゃれ着になるんですよ」とおっしゃいます。
また、「せっかくなら呉服屋さんで反物から選び、あつらえるのも楽しいです」とのこと。
そこで呉服屋さんに取材に伺うと、流行に左右されない伝統的な柄の反物が豊富で、いかにも涼しげで粋。
自分のサイズにぴったりの一枚を作れば、着崩れしにくいそうです。
店によっては購入後もメンテナンスに応じてもらえるそうで、
なんだかとても頼もしいですよね。
記事では、着付けのほか、帯の結び方や畳み方なども写真とイラストで解説。
これを読めば、もう迷うことはありません。
まだまだ気楽に出かけられる状態ではありませんが、
この先、安心して外出できる日が来たときに、
ぜひ参考にしていただけたらと思います。(担当:中村)

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写真は、指導者の浜美雪さんから編集部員が帯の巻き方の指導を受ける様子です

編集部の5人が挑戦しました

2020年06月08日

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編集部の5人が挑戦しました
(6号「至極やさしい金継ぎ教室」)

“いつかやってみたいこと”のひとつに、
割れた器を修繕する「金継ぎ」がありました。
でも、なかなか重い腰が上がらなかったのは、
「手間がかかってむずかしそう」
「お金がかかりそう」
という先入観があったから。

金継ぎ師の山下裕子さんに出会って、
なるべくシンプルな方法を考えていただくと、
「あ、これなら私にもできるかも」と気持ちがあがりました。
そして編集部のなかにも、同じく金継ぎに興味津々の人たちが。
そんな金継ぎ初心者5人が、それぞれの器を手に集い、
「暮しの手帖金継ぎ教室」が始まりました。
いつか直そうと思っていた器たちが、ようやく日の目を見たのです。

「金継ぎっていうけど、金で仕上げなくてもいいんだ!」
「私、この作業好きだなあ」
「今日はもう終わり? あっという間!」

和気あいあいと、ときに黙々と作業を続け、
全5回、およそ1カ月半にわたる金継ぎ教室を終え、
それぞれの出来栄えは……?
どうぞ誌面でお確かめください。

金継ぎに適した季節は、湿度の高い梅雨時期です。
おうち時間にぜひお試しください。(担当:小林)

金継ぎ風景
写真は、金継ぎ教室の様子。漆を塗る細かい作業のため、みんな真剣そのもの!

ひと手間で、洗濯が変わります

2020年06月05日

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ひと手間で、洗濯が変わります
(6号「白いシャツを真っ白く」)

洗濯機に洗濯物を入れて、洗剤を入れて、スタートボタンを押す。
来る日も来る日も、何の疑いもなく、そうして洗濯を続けてきました。
汚れが落ちていなかったり、部屋干しの臭いが気になると、
洗剤や洗濯機の性能のせいにしたりして……。
「洗濯機に入れる前の処理が大切なんです」。
正しい洗濯の方法を広める活動をしている茂木康之さんのお話を聞いて、
すべて洗濯機に“おまかせ”にしていた日々を反省しました。
茂木さんが提案しているのは、
衣類を洗濯機に入れる前に、汗や皮脂などの汚れが付いた部分に
プレウォッシュ液(洗剤と水を混ぜた液)を吹き付けてから、
洗濯ブラシで10分ほど叩く方法です。
このひと手間で、洗剤を浸透させ、汚れを浮かすことができるそうです。

今回は、汚れや黄ばみや目立ちやすい「白いシャツ」に絞って、
日常の洗濯から、漂白、シミ取り、干し方、しまい方までをご指導いただきました。
白いシャツをいつまでも真っ白なまま着続けるための手順を、ぜひお試しください。
もちろん私も試してみました。
やってみる前は、「10分叩き続けるのは大変そうだなあ」と心配だったのですが、
アップテンポな音楽をかけて、リズムに合わせて洗濯ブラシでトントコ、トントコ。
ドラマー気分で叩いていたら、あっという間に10分が経っていました。
本来なら、指導していただいた方法を会社で試す(社内に洗濯機もあります)のですが、
このときは、コロナウイルス対策で在宅勤務中。
自宅にいたからこそ思いついたこの方法を、皆さんにもおすすめします!(担当:田村)

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追記:
まったくの偶然なのですが、
今号で取材にご協力くださった生命誌研究者の中村桂子さんのブログに、
「真っ白なシャツから始まって」という素敵なお話が掲載されています。
白いシャツを真っ白なまま着続けるためには、ほんのちょっと手間がかかります。
でも、ほんのちょっと手間をかけたシャツが真っ白に洗い上がると、
何とも言えないうれしい気持ちになるのです。
暮らしってそういうこと、それでいいんだよなあと、
中村さんのブログを拝読して改めて思いました。
https://www.brh.co.jp/salon/blog/article/detail/343

海外での暮らしを綴っていただきました

2020年06月04日

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海外での暮らしを綴っていただきました
(6号「住む国変われば」)

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっているいま、
海外の政策や暮らしを目にしたり、調べたりする方が多いのではないでしょうか。

今号から始まる新連載「住む国変われば」では、
日本に生まれ育ち、長年海外に暮らす方に、日本とは異なる暮らしについて執筆していただきます。
執筆者は毎号変わり、初回はスウェーデン在住のガラス作家・山野アンダーソン陽子さんにお願いしました。

スウェーデンといえば、新型コロナウイルス対策で、
北欧諸国も含むヨーロッパの多くの国が全国的な封鎖措置を取り、厳しい移動規制を敷いるなか、
厳しいロックダウン(都市封鎖)を行わない国として、世界中の注目を集めています。

5月上旬、陽子さんからこんなメールをいただきました。

スウェーデン政府と公衆衛生局は、早い段階から”コロナと共存の道しかない”と判断しました。
ワクチンや特効薬がないので、感染しないに越したことはないけど、
経済活動等の生活をを止めるわけにはいかないので、
国民一人一人が心がけつつ、出来るだけ通常通り生活を送り、
医療崩壊しないようにゆっくり感染していきましょう、というスタンスです。

スウェーデン、大丈夫か?! と思っていたのですが、
日数が経つにつれ、補償がきちんとされる国だから成り立つことや、
人口が少ないのでできる対策だと感じます。
延命もしないので、医療崩壊もしていません。
3000人以上が亡くなっていますが、95%以上が60歳以上の方です。
死生観が違うということもありますし、個人主義だな、合理的だな、と感じることが
いつもより一層増えました。

正直、カルチャーショックはありますが、誰にも正解がわからない状況の中で、
感情的ではなく、きちんとした科学的根拠の元に判断し、
今ある情報をクリアーに提示している。
理にかなった対策や補償もきちんとしているので、他の国と比べるとストレスが少ないと思います

私は今回の「自由と責任は同時にやってくる」がテーマの原稿を読んだこともあり、
スウェーデンがなぜそのような対策を取るのか、腑に落ちるところがあります。

日本で当たり前のことは、海外ではありえなかったり、その逆もある。
海外での暮らしを知ることで、少し視野が開けたように感じます。
みなさんにとっても、自分の住む国のこれからについて、考える機会になればと願います。(担当:平田)

「ひきだし」がリニューアルしました

2020年06月03日

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「ひきだし」がリニューアルしました
(6号「てと、てと。」)

取材・文は渡辺尚子さん、写真は松本のりこさんのコンビで、
2014年から続けてきた連載「ひきだし」が、
このたびタイトルを変えて、新たなスタートを切りました。

暮らしのなかで、食事をするように、息を吸うように、
ものづくりをされている人の、
生活や生き方、思想などをご紹介する
ドキュメンタリーのページです。

新タイトルの「てと、てと。」(手と、手と。)は、
ものづくりのために大切な「手」に着目し、
ひとりの右手と左手、という意味や、
親子や夫婦のふたりの手、
手から手へつながっていくもの、
というような意味を込めて名づけました。

第一回の「手」は、
陶芸家の小方英理子さんの、やさしく、
そして力強い手。
母として、作家として
いつも何かを作っている手に出会いました。(担当:小林)

生きる喜びをくれるから

2020年06月02日

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生きる喜びをくれるから
(新連載「はじめてのお楽しみ」)

もう何年も前のことですが、料理家のホルトハウス房子先生からお電話をいただき、「あなた、お能はお好き?」と聞かれたことがありました。「お好き」と言うほどじゃありませんが、何度か観たことはあり、興味はあります。そうお答えすると、「用事で行けなくなってしまった公演があるから、もしよろしければ」と、チケットを2枚送ってくださいました。
休日に友人と連れたって能楽堂へ出かけると、なんと席は「かぶりつき」のまん真ん中で、まわりは着物すがたのご婦人方ばかり。なんだか恐縮しながらも、絢爛豪華な衣装の細部まで間近でじっくり眺め、およそ6時間、腰が痛くなりつつ堪能したのでした。
以来、ときどきテレビでお能の公演を目にすると、細部まで映るのはいいのですが、なぜだか非常に淡々としたものに感じてしまいます。演者の息づかい、衣擦れの音、観客が息をのむ一瞬……。たぶん、そうしたものが一体となって、「生」で伝わってくるから、夢中になれるんだな。生意気ですが、そう思ったりするのです。

前置きが長くなりましたが、このたび始まった新連載「はじめてのお楽しみ」は、そうしたライブならではのいろんな娯楽文化を、文筆家でイラストレーターの金井真紀さんが体験してまとめる読み物です。
大人になっても、ちゃんと体験したことがない、しかし機会があれば行ってみたい、そんな娯楽ってありませんか?
金井さんは、落語好きで俳句もたしなむ趣味人ですが、それでも体験したことのない娯楽はあるそうで、その一つが「浪曲」。えっ、浪曲とは?? と思わず検索したくらい、恥ずかしながら、私は無知でした。そしてYouTubeで少し聴いてみたものの、どこがいいのか、正直よくわからない。ちょっぴり不安を覚えつつ、金井さんと取材に出かけた先は、私が暮らす浅草にある「火曜亭」でした。
この日の公演は、いまをときめくスター浪曲師の玉川奈々福さんによるもの。平日の夜で、ざんざん降りなのにもかかわらず、会場は立ち見が出るほどの盛況ぶり。あんがい若い人も来てるんだなあ、ときょろきょろしているうちに、奈々福さんが登壇。そしてそして……。続きはぜひ、金井さんの軽妙な文章でお楽しみください。

なぜこの連載を始めたかと言えば、暮らしって家の中でおさまることだけじゃなく、非日常にわくわくと胸を躍らせ、磨き抜かれた芸にうっとりする、そんな「ハレ」の時間もあってこそメリハリがつくんじゃないかな……と思うからなのです。娯楽って、生きる喜びをくれる、大事なものなんじゃないかな、と。
赤の他人と同じ空間に集い、一緒に大笑いしたり涙したりして、感動を反芻しながら家路につく。いまは残念ながら「火曜亭」もお休みですが、あの素敵な一夜が、早く、早く、戻ってきてくれることを願います。(担当:北川)

花森安治選集 全3巻 第1巻『美しく着ることは、美しく暮すこと』を発売しました!

2020年06月01日

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とうとう、長く制作を進めてきた一冊が完成しました。
現在でも天才、奇才、昭和の名編集長と評され、
多くの人に愛されて続けている花森安治の選集を、この1巻からお届けします!

『暮しの手帖』初代編集長の花森は、敗戦後の復興から、
経済大国へと急成長を遂げた昭和の変遷を鋭く見つめ、
家庭のささやかな幸せに向けたまなざしから、国や大企業に臆することなく抗う叫びにいたるまで、ジャナーリストとして伝えた著作を膨大に遺しました。
この選集は、花森のジャーナリズムと思想をつまびらかにする作品群です。

ところで、4年前に放送されていた連続テレビ小説『とと姉ちゃん』をご覧になったことはありますか? 暮しの手帖社の創業期からのエピソードに想を得て作られたドラマです。
ヒロイン・小橋常子(演・高畑充希さん)の雑誌作りを助ける、
天才編集者・花山伊佐次(演・唐沢寿明さん)は、花森安治がモチーフでした。
ふたりは戦後すぐに出会い、少しでもみんなの暮らしを明るくしたいと、
試行錯誤しながらファッション誌を出版します。
この第1巻はちょうどその頃、花森が新進気鋭の服飾評論家として世に登場した、
『暮しの手帖』創刊前後の作品に焦点を当てています。

1946年に出版社「衣裳研究所」を設立し、
まだ物が極端にない中で提案したことは、まず「着るもの」についてでした。
「食」や「住」の材料は庶民には思うように手に入らないけれど、
「衣」だけは、昔からの着物をタンスの中に持っている人も多い、と考えたためでした。

洋裁の知識やミシンがなくても、和服地で簡単に作れる「直線裁ちの服」を考案し、
知恵と工夫次第で、あなたはもっと美しくなれると読者に呼びかけました。
また、「着るもの」を通して「ほんとうのおしゃれ」とは何かを説き、
それまでもんぺ姿を強いられていた女性たちのおしゃれ心に、灯をともしたのです。

洋装の入門書、手引きとして愛された貴重な原稿にはじまり、
次第に洋装が庶民に広がってくる頃になると、
「必要なのは感覚であって、お金ではない。美しく着ることと、お金とは、何のかかわりもないのである。しいて関係をみつけるとすれば、美しく着るということは、なるたけお金を見せびらかさないこと、そういう意味になるだろう。……」
「いまの日本で着ものの世界を見ていると、ことに女の服では、ファッションとかアラ・モードとかニュールックとか、そうした流行だけが問題になっている。まるで「流行」だけしかないように見えるのである。
 流行がいけないというのではない、流行は、いわば着ものという木に咲いた花である。根もあれば幹もあり、枝も葉もあって、はじめて、立派に花が咲くのである。……」
と、ユーモアたっぷりのエッセイでおしゃれの本質を論じました。

昭和から平成、令和と時代を経ても決して色褪せない、今だからこそ見つめ直したい、
花森の「美学」がたっぷりと詰まった一冊となっています。
函入り、上製とした美しい本の仕様は、ぜひ書店でお手に取ってご覧ください。
もちろん本の装画は、花森安治によるものです。(担当:村上)

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庖丁の音、美味しい音

2020年06月01日

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庖丁の音、美味しい音
(6号「庖丁仕事はリズムにのって」)

毎日のごはん作り。
材料を並べて作業に入る前に、想像力をふくらませて、
どんなふうに食べたいかな? と、出来上がりをイメージしてみて下さい。
食感は、シャキッと? ふわふわ? 
美味しいイメージが浮かんだら、さあ、料理に取りかかりましょう。

今回は、料理家の渡辺麻紀先生に、庖丁の持ち方や姿勢から、
野菜の切り方、鶏肉の脂肪の取り方のコツまで、
基本だけれど意外と知らない大切なことを教えていただきました。

取材はまず、庖丁研ぎからスタート。
渡辺先生が「不思議と心が落ち着く」とおっしゃるように、
研いでいるときは無心になり、気持ちがすーっと整ってきます。
なんだか瞑想の時間のようで、習慣にしたいな、と思いました。
(研いだばかりの庖丁は金気が食材に移りやすいので、一晩寝かしてから使うといいですよ)

ご紹介しているレシピは、どれも簡単でおいしいものばかりですが、
なかでも、私のおすすめは、「豚の冷しゃぶ コンカッセソースがけ」。
トマトと玉ねぎ、パセリ、レモン、その美しい色合いの野菜がオリーブオイルでキラキラと輝いたソースを、豚肉にたっぷりかけた一皿です。
撮影の時も、「わぁ、美しい〜! ごちそうだね!」と歓声が上がりました。
手軽に作れるので、この度の在宅勤務の間、お昼ごはんに何度も作っていましたが、
その度に「きれいだなぁ!」と、元気が出るのを感じました。

「キッチンでは、自信を持って、たのしく過ごしてほしい」と渡辺先生。
私は今回の企画で、庖丁が頼もしい相棒のような存在に変わりました。
ぜひ、あなたに合った庖丁使いの姿勢を見つけてみて下さい。(担当:佐藤)

・新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言を受けまして

2020年06月01日

新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言解除後も
当社は引き続きシフト勤務態勢を実施しております。

従いまして、時間帯によりましては、電話に応対できないことがございます。
みなさまにはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解をいただけますようお願い申し上げます。

なお、出版物に関する緊急のお問い合わせにつきましては、
下記メールアドレスか、ファックス番号でも対応させていただきます。

メール:eigyo2@kurashi-no-techo.co.jp
ファックス:03-5259-6004

ご用件とご連絡先(お名前・電話番号・FAX番号・メールアドレス)をご記入いただきましたら、
いずれかの方法にて、こちらから折り返しご連絡さしあげます。
少々お時間を要する場合もございますが、どうぞご了承ください。

生き物は手がかかるからこそ愛おしい

2020年05月29日

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生き物は手がかかるからこそ愛おしい
(6号「わたしの手帖/中村桂子さん 生きることは、時間を紡ぐこと」)

様々な方の「人生の手帖」に書きつけてある言葉をご紹介する、この企画。
今号は、科学者の中村桂子さんにお話を伺いました。

DNA研究の第一人者として長年活躍されてきた中村さん。
科学者というと、どこか遠い存在のようで、お会いする前は緊張していましたが、
取材当日は、チャーミングな笑顔で出迎えてくださいました。
好奇心旺盛で、「この間、こういうことがあってびっくりしたの!」と話題が絶えず、
丘陵を生かして造られた庭を足取り軽く昇り降りする姿は、とても84歳には思えません。

中村さんは50歳の時、「生命誌」という研究分野を生み出し、
一貫して「人間は自然の一部」ということを発信してきました。
何を当たり前のことを、と思うかもしれません。
けれど、中村さんのお話を聞くうちに、
便利な生活に身を置くことで、つい人間本位の考えをしてしまっている自分に気づきました。
「今の社会が求めていることは、手がかからず、思い通りに、早く。
でも、本来生き物はその真反対。
手がかかるからこそ愛おしいし、生きることに“早い”は合わないの」
そんな中村さんの言葉に、耳を傾けてみませんか。(担当:平田)


暮しの手帖社 今日の編集部